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第三章 崩壊の速度
人は毎日死ぬ。
世界では一日に約十五万人が死亡する。その全てが、三分後には捕食者として立ち上がる。この単純な事実が、文明の崩壊速度を決定づけた。
病院が最初に陥落した。当然だった。人が最も多く死ぬ場所なのだから。
四月十日、福岡大学病院。集中治療室で三名の患者が相次いで死亡し、蘇生した。閉鎖された空間で、逃げ場のない看護師と医師たちが襲われた。襲われた者もまた死に、そして蘇った。
わずか二時間で、千二百床の大学病院は「巣」と化した。
同じことが世界中の病院で、老人ホームで、ホスピスで起きた。
四月十二日。日本政府は自衛隊に災害派遣命令を下した。だが、隊員たちは困惑した。排除すべき対象は、ついさっきまで市民だった者たちだ。誰かの親であり、子であり、恋人だった。引き金を引く指が、躊躇った。
その躊躇が、さらに多くの死者を生んだ。




