第二十一章 ホームセンター
薬院の住宅街は、天神よりはましだった。ゾンビの数は少なく、散発的に出会う程度。中村と佐々木が先行し、美咲と翔太が続き、原口が殿を務めた。
出会うゾンビは、一体か二体ずつ。中村と佐々木が音を立てずに処理した。中村は鉈。佐々木は消防用のハリガン・バー。頭部への一撃。もう躊躇いはなかった。
午前九時。六本松のホームセンターに到着した。
正面のシャッターは半分降りていた。中村が隙間から内部を覗いた。
「中にもおる。五、六体。でも、発電機コーナーは奥の方やけん、入口近くの奴らを避けて行ける」
五人は身を低くしてシャッターの下をくぐった。
店内は薄暗かった。天窓からの光だけが、埃の舞う空間を照らしていた。棚は倒れ、商品が散乱していた。
奥から、足を引きずる音。
中村が人差し指を唇に当てた。
発電機コーナーは店の最奥にあった。途中、園芸コーナーで一体のゾンビと鉢合わせた。作業着姿の男。美咲の方に濁った目を向け、腕を伸ばした。佐々木が横から一撃で倒した。崩れ落ちる体が棚にぶつかり、スコップやジョウロが盛大な音を立てて落ちた。
金属音が店内に反響した。
奥から、呻き声が重なった。一つ、二つ、三つ。
「急げ」中村が言った。
翔太が発電機コーナーに走った。棚に並んだ箱の中から、適合するものを探す。
「これ! ヤマハのEF2500i。インバーター式。これなら精密機器にも使える」
「燃料は?」
「隣の棚にポリタンク。ガソリンは――外の駐車場に放置車両があったけん、抜けます」
通路の向こうから、三体のゾンビが現れた。一体は這っていた。下半身がなかった。
中村が前に出た。「積み込め。俺が抑える」
中村は通路の幅を利用した。狭い通路なら、一度に来れるのは一体ずつ。鉈を振るい、一体目を倒した。二体目が棚を押し倒しながら迫った。中村はその棚ごと押し返し、ゾンビを下敷きにした。三体目の、下半身のない這うゾンビが足元に迫っていた。佐々木がハリガン・バーで頭部を押さえつけた。
美咲と翔太が発電機を箱から出し、原口と三人で持ち上げた。
「出口!」中村が叫んだ。
五人は発電機を担いで店を飛び出した。シャッターの隙間を抜ける時、原口のジャケットの裾をゾンビの手が掴んだ。原口は振り払わずにジャケットを脱ぎ捨て、そのまま駆け抜けた。
外に出て、全員で息を整えた。
「駐車場。ガソリン抜くぞ」佐々木が言った。
放置された車のタンクからホースでガソリンを抜く。佐々木は消防士時代の知識で手際よくやった。ポリタンク二つ分。約四十リットル。
「これで何日持つと?」中村が聞いた。
翔太が計算した。「連続稼働で……四、五日。もっと要りますけど、まず福岡タワーが先です」
「よし。行くぞ」




