第十九章 遠征
一月十五日。早朝。
遠征隊は五人で編成された。
中村恵介。元自衛官。隊長。 田中美咲。十七歳。半年前とは別人のように動ける。 木下翔太。篠原の教え子。装置の構造を唯一理解できる。 佐々木勇一。元消防士。三十代。十月に壱岐島から泳いで渡ってきた男。 原口真理。元看護師。四十代。冷静さでは島一番。
篠原は島に残った。送信機を止めるわけにはいかなかったし、回収した装置を改修できるのは篠原だけだった。
「翔太、増幅ユニットの型番は伝えた通り。福岡タワーの送信室は展望フロアの上、機械室にあるはず。重さは二十キロ前後。一人で担げる」
「わかりました」
「それと、途中でディーゼル発電機を確保して。ホームセンターか工事現場。できれば燃料も」
篠原は翔太の肩を掴んだ。
「死ぬなよ」
翔太は笑った。
「先生こそ」
漁船が港を離れた。朝靄の中、博多湾を渡る十五分間、誰も口を開かなかった。
博多港が近づくにつれ、岸壁の輪郭が見えてきた。
半年前、ここから船出した。あの時は二十四人で、走って逃げた。今度は五人で、走って戻る。
中村が双眼鏡を下ろした。
「岸壁に十体前後。少ないな」
「冬やけんですかね」佐々木が言った。
「奴らに季節は関係なか。たまたまこの辺りに少ないだけたい。油断するな」
船を岸壁から少し離れた砂浜に着けた。音を立てないように、一人ずつ降りた。
八ヶ月ぶりの本土の土を踏んだ。
空気が違った。潮の匂いの下に、甘い腐敗臭が薄く漂っていた。八ヶ月経っても消えない、死の残り香。
中村が手信号で指示を出した。声は出さない。
五人は港の倉庫の影を伝って、市街地へ向かった。




