第十八章 送信機の限界
一月。
篠原は送信機を24時間稼働させようとした。だが、現実は残酷だった。
太陽光パネル一枚では、日中六時間が限界。曇りの日は四時間。夜間はゼロ。つまり一日の大半は、島は無防備だった。
「送信しとらん間に誰かが死んだら、蘇る。それはこれまでと変わらん」
篠原は全員を集めて、正直に伝えた。
「送信を24時間続けるには、安定した電源が要る。ディーゼル発電機。それも、できれば二台。燃料も」
「それだけでよかと?」中村が聞いた。
篠原は首を振った。
「もう一つ。今の送信機は出力が弱すぎる。カバーできる範囲は島の周囲数百メートルがせいぜい。もし本当に蘇生を阻害できるなら、もっと広い範囲をカバーしたか。そのためには――高出力の増幅装置が要る」
「どこにあると?」
「福岡タワー」
篠原はノートパソコンに福岡市の地図を表示した。もうインターネットは繋がらなかったが、オフラインで保存していた地図データがあった。
「福岡タワーは地上波デジタル放送の送信拠点やった。Ku帯に近い高周波の増幅装置がある。あれを改修すれば、14.7ギガヘルツの大出力送信が可能になる。理論上は、福岡市全域をカバーできるかもしれん」
中村は地図を見つめた。
「博多港から福岡タワーまで、直線で約四キロ」
「うん」
「四キロ。ゾンビだらけの街の真ん中を、四キロ」
中村は目を閉じた。半年前、博多港まで二キロを走って三人を失った。四キロは、その倍だった。
「行くしかなかろう」
声を上げたのは、美咲だった。
全員が美咲を見た。
「送信を止めたら、また誰かが死んだ時に蘇る。鶴田さんが教えてくれたことを、無駄にしたくなか」
中村は美咲を見た。半年前、地下街の隅で膝を抱えていた少女の面影は、もうなかった。
「……遠征隊を出す」中村は言った。「少数精鋭。五人。足が速くて、判断ができる奴」




