七十一話 会議
祭りをひとしきり堪能し、ほぼ全ての客を見送った後、片付けを終えた俺は仕事に励んでいた。オリヴァーの結婚式のための結婚式場作りだ。
街の雰囲気に合わせる為、日本の神社の結婚式を参考にしようと思っている。が、生憎俺は結婚した事が無い。理久も挙式願望が無かったから調べた事もほぼ無い。美術でやった『近未来都市設計』の時に少しだけさらったくらいだ。
しかも今となっては唯一の手掛かりさえもうろ覚え。依頼するにあたって設備とかは知っておかないといけないのに。俺が想像する結婚式って会食くらいしか無いんだよ……。ルーク王に聞いてみるか……。
ルーク王は、手紙を出した次の日には当日どんな事をしたか書いて送って来てくれた。
俺はそれを見ながら裏紙に箇条書きしていく。
「えーーっと、誓約、指輪、牧師による結婚宣言、結婚証明書署名……」
この辺は多分前世でも有ったかな。ルークは教会で挙げたらしいけど、聖書の朗読とか聖歌とか賛美歌の歌唱は無いんだな。ヴィーネの事だから面倒臭くてやってなかったんだろう。守護者と仲が悪ければそういう話もしないだろうし。
「披露宴……そんなのも有ったな…………」
一枚目で終わりかと思いきや、二枚目も有った。
こっちの方は前世で想像するのと全く違った。新郎新婦の挨拶が終わったら後は普通の立食パーティー。
小さい字で、「挙式でその日は終わらせて後日ガーデンパーティーを開く事もあり」と書いてある。そして、王族の場合は挙式後一週間以内に民衆の前でお披露目パレードをする事もあるようだ。ルーク王は妻が体調を崩した為やらなかったらしい。
うちはそういうパレードとかはやらなくて良いかな。見る方もやる方も、お互いが知り合いっていうのは照れるから。
これを参考にして作る事になるけど……多分日本の神前式とは全然違うことになる。まあ、いっか。
ここ日本じゃ無いし。ここまで日本風に……とか言ってたけど、結局どんなに頑張ってもここは日本にはなれないから。うん、良いんだ。
…………もうちょい調べときゃ良かったな……。
取り敢えず会食が出来る広い部屋と、神前式の会場になる神社。後はフォトスポットみたいな所が有れば良いかな……?
料理についてはまた後日にするとして、最低でもこれだけ有れば足りるだろう。フォトスポットは写真の無いこの世界だとあんまり需要無いと思うから優先順位は低めで良いか。
一棟貸しの宿屋とかも、有れば良いけど人口が少ない今は事を急がせなくても。会食会場の二階とかを宿屋にしてしまえばスペース削減にもなるし、必要になるまでは手を付けないで大丈夫だろう。
おっちゃんに建設予定地の確認行かないと。後は総合建築物管理課に申請出して、総合デザイン課にも依頼書作らなきゃだな。いや、その前に幹部会議で企画通さないとだから……まだまだやる事いっぱい有るな。
招集を掛けた翌日には、幹部会議が開かれた。議題は結婚式についての説明と、結婚式場の建設依頼について。
「結婚式場、か……」
「急ぎではないけど、いずれは作りたいと思っているからその共有。元々エクレシアの平民には結婚式の習慣が無かったけど、建国したし取り入れても良いかなって思って」
「挙式って俺達でも出来んのか?」
「二十万前後で考えてるから、今の手取りなら十分挙げられると思う」
円にしてからお金の計算が超楽になった。多分実際の結婚式ってもっとお金かかる人も居るだろうけど、沢山オプションが有る訳でもないしこれくらいが安パイかなと。
あんまり高くして使われなくなっちゃったりすると困るし。
「俺は賛成だ。娘の結婚式、出てぇ」
「確かにっ……」
「わたしも好きな人が出来た時、挙式出来たら嬉しいかも」
幹部に圧倒的に娘持ちのパパが多かったのと、マリーの挙手によって、結婚式場の建設は即日決定した。
これから土木作業課と総合建築物管理課、総合デザイン課、服飾デザイン課、食事課が中心となって話を進め、完成後の金銭的な部分は、施設運営課が定期的に管理することになる。
俺がこの後結婚式場関連でやるべき事は、定期進捗の報告を受けて、視察に行って、良さそうならゴーサインを出す。それだけだ。
オリヴァーはリヴにプロポーズを受けてもらってから仕事に更に精を出し、ずっと楽しそうにしている。……常にニコニコしているから、少し怖い。
親友が嬉しそうで、俺も嬉しいけれども。もうちょっと顔を引き締めて欲しいものだ。
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(ああ……幸せ……)
オリヴァーは、仕事に精を出しながら傍に控えているリヴに視線を向けて口元を緩めた。
普段はオリヴァーを揶揄ったり弄ったりと好き放題しているマオも人の恋愛をジロジロ見たり弄ったりする事は出来ず、今回ばかりは気不味そうに空気に徹している。
(いつもこのくらい静かだと良いんだけどな……。それにしても、リヴは竜の姿も美しくて好きだけど、人の姿も良いな。美しさが有りつつも愛らしさが兼ね備えられてて)
借りてきた猫の様になっているマオに心の中でそう思いながらリヴを褒め称えるオリヴァー。ベタ褒めすぎて、心配になるレベルだ。
しかし、オリヴァーの手は終始サカサカと動いており、ルナからミスが指摘される事も無い。
幸せを噛み締めながら、オリヴァーは仕事を片付けた。




