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五十九話 検討


「――というわけなんだ。どうかな」

 幹部会にて、俺は開国祭について皆に相談していた。


「もう誰を招待するか、決めたのか?」

「知り合いは一通り招待するつもりだ。決まり次第、おっちゃん達にも共有する。身分と顔がわかる様に資料を作っておくよ」


 大量に印刷、というのが出来ないから各課で回し読みになるけど無いよりマシだろう。



 コピー機、欲しい。まだこの世界には無さそうなんだよな。俺も仕組みが分からないから無限牢獄で出せないし、暫くは手書きで頑張るしかない。


「それはありがたい。フェルの客人に粗相したら大変だからな」


「まあ、来た人達全員に敬語使っておけばそこまで問題にはならないから。それで、迎賓館のスタッフはどんな感じだ?」

「それはわたし達から」


 教育課の責任者であるマリーと食事課の責任者であるアレンが手を挙げる。



「フェリーチェのお母さんや元々エトワール家で働いていたメイドさんが協力してくれて、迎賓館スタッフはいつお客さんをお迎えしても問題無いくらいに成長してるわ」


「調理スタッフはパーティー料理、コース料理問わず一定レベルの物を作れる様になっています。最近では僕の直属の弟子達が見た目に情熱を注ぎ始めています」


 見た目に気を遣えるくらい味は申し分無いということか。エトワール家は一応上位貴族に区分される。そこで働いていたメイドが「いつでも大丈夫だ」と判断したのなら、迎賓館の方は問題無さそうだな。



「ありがとう、道路整備の方は?」


「石畳にヒビや割れは無し。フェルの言う通り、歩行者通路と牛舎・人力車通路を分けたから現時点で無事故だ。寺子屋で教えられてるお陰で幼児の飛び出し事故も無し」



 ほうほう。問題無さそうだ。本当は舗装も石畳じゃなくてコンクリートでやりたい所だけど、生憎現代のコンクリートも古代ローマのコンクリートも作り方が分からない。


「分かった。大通りを中心的に整備を続けて、裏道の舗装もしておいてくれ」

「ああ、あいつらにも伝えておく」

 後はクルーズと港だ。


「客船と国際港の進捗は?」

「大体の設計図は出来上がっていますので、後は建設するだけになっています。国際港が完成する前に客船は完成する予定です。開国祭に貴族を招待する、という事ですので豪華にデザインしたモデルを優先して作っていきます。土属性と強化属性が多く居ますので、合わせて五ヶ月程度を目度に進めます」



「ありがとう。今が四月だから……開国祭は十月か十一月頃にしようか。これからサージスは冬に入るし、造船は雪対策で室内作業に出来るか?」


「はい。漁船を造る為の作業倉庫が有りますのでそちらを使おうと思います」


 作業場が雪で潰れない限りは大丈夫そうだ。とは言え、うちも北陸レベルで降るわけじゃないし、問題無いだろう。



「客室やロビーに置く家具は総合デザイン課と家具職人でデザインを考えてほしいんだけど、いけるか? 特に総合デザイン課には負担を掛けちゃうけど……」


「問題ありません。弟子達の経験にもなりますし、おれは仕事、好きなので」


 ロイがキッパリと言い切った。そこまで言われると頼もしいというより、心配だ。仕事中毒になっていないかが凄く気になる。いくら楽しくても、仕事は過度に寿命を削ってまでやる事ではないから。



「ルナさんやセレン様に貴族が日常使いするデザインを聞いて作ろうと思います」

「ありがとう、ロイ」

「こちらこそ」


 ルナや母さんなら元々貴族だったから何が喜んでもらえるかの参考になる筈だ。迎賓館の本館を和風にしなかったのは土足文化、ベッド文化の社会に合わせての事なのでクルーズと宿屋も洋風にするつもりだ。サージスがもっと大きくなったらサージスの人用に和風の宿屋も建てたい所だけど、あと十年二十年くらい先の話になるだろうから今は考えない。



「他に何か報告したい事あるか?」

 特に無さそうだな。


「じゃあ幹部会はこれで終了。皆、持ち場に戻ってくれ」

「「はい!」」

「「おう!」」



 さっさとやる事リストの更新をしないとな。広報担当は今日の夕方にでも新聞を公開してくれるだろうから、俺もそれに合わせて開国祭に必要な職種を書き出さないと。皆も早めに準備が出来ていた方が楽になるだろうから。


 あ、オブシディアンとルナールにも招待状を出そう。最近忙しくて中々会えてないし。二人の為に、お酒も沢山用意してあげよう。




 開国祭までに俺がやらないといけないことは色々有るが、一番優先すべきはなるべく多くの高位貴族と知り合いになっておく事。貴族は好きじゃないけど国の為にもコネは大事。


 開国の瞬間を華々しく演出したいなら、客は多い方が良い。影響力の有る人間が多ければ多い程、サージスについての噂は勝手に広がっていってくれる。


 まずは来月に行われる月例会で、開国祭について色々と報告したいからそれまでに資料を作っておこう。


――――――――――――――――――――


「サージスからの魔鉱石はどうかしら」



 ヴァレンシア王国、女王の執務室にて。第九代女王、エリス・ヴァレンシアは、宰相が持って来たサージスとの取り引き内訳報告書を見ながらそう言った。


「従来の魔鉱石は二ヶ月毎に交換していますが、サージス産の物でしたら一年に一度でも十分でしょう。これが一番小さい物とは、未だに信じられません」



「最近、王宮が前よりも明るくなったわね」

「ライトの魔法具を作り、一番に交換させていただきました。街灯は今後数年掛けて、国内全ての物をサージス産の物に切り替える予定です」


「ヴァレンシアで産出される光属性はどうするつもり?」

「今までは全てを自国で賄っていましたが、サージスの物で代替が出来る様になりましたので平民向けに、更に安価で販売する事が話に上がっています」


「そう、報告ありがとう。これでヴァレンシアは更に暮らし易い国になりそうね」



 サージス産の魔鉱石は安い。それが魔法具の技術提供をしているからと、金銭的な優遇措置を受けている為、ヴァレンシアに入ってくる光属性の魔鉱石は百キロで白金貨一枚。通常の約半分だ。



 輸入開始から日が浅いのでまだ国内消費用しか作れていないが、エリスは月例会で「魔鉱石を値下げするから輸入品目の一部に値下げが適応出来ないか」と聞いた。

 そこでエテルニオンからは魚介類、クローシアからは服、グランベリアからは鉱石、とかなりの種類、安くなる見込みが出来た。


 本来、エテルニオンからヴァレンシアの道のりを食料が移動する事は難しい。距離が有るせいで氷を大量に用意しなければ直ぐに腐ってしまうからだ。


 しかし、守護者の持つ無限収納は守護者でなくても使う事ができる。エテルニオンがそれを購入したため、今までよりも安価で運べる様になったのが値下げの理由だ。



 クローシアも、無属性魔鉱石を安価で輸入出来る様になったら今までよりも服が作りやすくなるという考えから、値下げに踏み切った。



 グランベリアの鉱石は単純に、レート変更による価格調整だ。


 値下げまでの道のりはどうでも良い。今年中には今までよりも輸入がし易くなるという事が重要なのだ。


「サージスに感謝しなければいけないわね」

「かなり楽になりますからね」




 「今度は何をしてあげようかしら」と報告書に確認印を押すエリスは、次の月例会に想いを馳せた。

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