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四十五話 初めての風邪


「フェリーチェ、建築士から連絡。城の設計図が出来上がったってさ」

「ああ、ありがとう。直ぐ行く」


 三国会談を終え、国内の事に全力を注げるようになったのを見計らったのか、ここ最近は俺のチェックを求められる事が爆発的に増えた。

 一気に来るって事は、それだけ迷惑を掛けてしまったのだと考えられるから、弱音吐かずにやらないとって思うんだけど。けど、少し疲れが溜まってきた。



 栄養バランスがしっかり考えられたアレンの食事を摂り、サンとヒリュウによって半強制的に寝かせられる俺だが、子供の体に仕事の疲れが溜まるとそんな事では回復しない様で。

 本来なら子供なんて疲れても寝れば回復する筈なのに。



 チマチマと休憩を取りながら仕事をしていたのだが、遂に体調を崩してしまった。


 倒れたわけではないのだが、この頃寒くなってきたせいで風邪を引いてしまった。治癒魔法で治せば良いと思ったが、オリヴァーに「自分の限界を知る良い機会」だと言われたので、今は自室でひたすら奉仕されている。


 サンとヒリュウ、そしてアレンに。


 頭は痛いし体は重いし寒くて暑い。そういう状態の俺が少しでも楽になる様にと色々と尽くしてくれた。



 この体になってから風邪を引いたのは今回が初めてだったので少し日数を引き摺ったが、一週間もすれば完治した。完全回復。


 が、復帰早々オリヴァーからの説教で朝から既に疲労困憊、満身創痍だ。



 まだちびっ子なんだから、とか、あれ程セーブしろと言ったのに、とか。全く、耳の痛い話だ。こんなに怒られるのなんて、何年振りだろうか。理久に隠し事がバレた時以来な気がするな。


 昔すぎてもう何を隠していたかも覚えていないが、怒られた事だけは覚えている。今回の説教はそれ以来だと思う。


 ただ、俺の事を心配しての説教だから素直に反省。いや、気を付けてはいたよ? でもここでそれを言うのはアウト。絶対に言ってはいけない。言い訳にしかならないから。



「ごめんなさい……」


 この一言に限る。休憩はもっとこまめに取らないと小学五年生のこの体は壊れる。それを知らなかったわけではない。ただ、少しこの体を甘く見ていただけ。


「サン、ヒリュウ。ちゃんと休ませてあげてね。強制的でも良いよ。二人で掛かったら流石に勝てるでしょ?」

「双方の犠牲を出さずとも、ちゃんと意識して休むよ。俺だって今回みたいに倒れて迷惑掛けたくないから。今まで以上に気を付ける」



 元々倒れる予定じゃなかったし、意識して尚体調崩したわけだから、今後は時間単位でスケジュール組んだ方が良さそうだな。


「まあ、フェリーチェが忙しい中頑張って休もうとしてた事は僕も知ってるから、これ以上はもう言わないよ」

 そうして主に俺周辺を騒がせた風邪騒動は幕を閉じた。



「二人共ありがとな、看病してくれて」

「いえ、私がもう少し早く気付けていれば……」


「俺もです。今回は比較的自然治癒しやすい病だったから大事にならなかったものの、治せないものだったら一大事です」


「そうだな。俺が大病を患ったら体力無くて自分で治癒魔法を掛けられない、俺よりも魔力の量が少ない人は治せない。再生・治癒属性に偏っているオブシディアンが治せる保証も無い。体調には今まで以上に気をつける事にするよ」

「ありがとうございます、フェリーチェ様」



 自分を気遣うと言うと、サンとヒリュウは柔らかく微笑んだ。

 この表情、俺じゃなきゃ惚れてるな。日本で芸能界に居たらリアコ大量製造機として名高かったかもしれない。


――――――――――――――――――――


「フェリーチェ様、大丈夫でしょうか……」

「本人はあれでも休んでた方だから、後はあの二人が何とかしてくれるはずだよ」


 フェリーチェ達が去った後、オリヴァーは不安そうにするルナにそう返した。



「あの環境で暮らしてて、体調崩した事無いからって油断してたんだと思う。ちゃんと反省してそうだからルナは心配しなくても大丈夫」

「そうですか……」


(そうは言ってもって顔……。ルナってフェリーチェに恩義感じてるんだもんね。まあ、僕に失礼になるからって本心言わないだけ良いかな)

「サンから報告受けても良いよ」


「いえ。兄の迷惑になりますし、私はオリヴァー様の部下ですから」

「ふうん。僕の心配はしてくれるの?」

「はい。勿論です」

「なら良いね。どっかの誰かさんと違って」

「ちょっとオリヴァー様。自分も心配くらいしてるっすよ? まるで自分が人の心無いみたいな」



 不貞腐れた様な顔をするのはオリヴァーの直属護衛、マオ・シェンリル。オリヴァーからすると、普段から何を考えているか分からないが、フェリーチェには懐いていそうという印象しかない。


 マオとは普段、殆ど喋らないから。ただ、常に胡散臭い笑顔を浮かべるからと、彼と喋る事へ少しの苦手意識はあった。



 軽くあしらおうとするオリヴァーに「本心ですよ?」と念を押すマオ。気付かないうちに、マオもオリヴァーを気に入っていた。自分の命をかけても良いと思える程に。


 そんなマオに少し気押されたのか、オリヴァーは「わかったよ」、と小さく息を漏らした。

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