第24章 帰る方へ
ニルは椅子の背に置いていた手を下ろしたが、座らなかった。「いえ」と答え、アルバが持っている布へ目を移してから、また顔を見た。留め金の裏に汚れが残っているのかと思い、アルバは指で返した。灯を受けた縁は乾いている。何か言いたい時のニルなら、手元にあるものを指して、そのまま説明を始める。今は鞄も開けず、外套の濡れた肩を気にする様子もなかった。
「傷か」
アルバが尋ねると、ニルの目が左の脇へ下りた。
「痛むんですか」
「今は変わらん」
「なら、よかったです」
その返事では、何を見ていたのか分からなかった。アルバは留め金を布に包み、革帯を卓から退けた。こちらが立つと、ニルは椅子を少し引いた。身を避けるためではなく、アルバの通る幅を空けたらしい。脇を抜ける時にも、顔がこちらへ向いていた。
この数日、そういう間が増えていた。話しかける用事がない時にも、顔を上げるとニルの目に行き当たる。初めは傷の動きを確かめているのだと思った。軍医へ見せたかと聞かれるのは、今も変わらない。だが、ただ器を洗っている時や、上着を掛けたあとにも見られていた。何だと聞けば、違うところへ目を移されることもあれば、考え中だと言われることもある。廊下で並びそうになると、アルバは先へ行くか、立ち止まって通らせるようになっていた。何を考えているのかまでは、聞けていなかった。
アルバは台所の戸口で止まり、窓際を指した。
「布、そこだ。肩を拭け」
「はい」
ニルが布を取る間に、竈の火を起こした。少年は今夜、セリュシアの家に泊まっている。出る前にヴァレットと翌朝も遊ぶ話をし、一晩なら行く、と自分で答えていた。戻る時刻を聞いたあとも、窓際の紐は張ったままだった。卓を拭く時、アルバは結び目を避けて布を動かした。今夜は二人分を置けばよい。
「食うか」
「食べます」
ニルの答えは、居間からすぐに来た。少しして、洗った手を拭きながら台所へ入ってくる。アルバは切りかけの菜をまな板の端へ寄せ、ニルが水の器を取る幅を空けた。肩を拭いた布は向こうの手に畳まれていた。
「これは、乾かす方へ」
「ああ」
返事をすると、ニルは布を掛け、それから竈の横へ戻った。何を作るか聞かれたので、鍋の中を見せる。刻んだ菜を煮て、最後に卵を落とすつもりだった。
「その大きさなら、茎の方はもう少し早く入れた方が」
ニルが言い、まな板へ指を伸ばした。
「入れてる」
「葉は、まだですね」
「今入れる」
アルバが残りを鍋へ移すと、ニルは空になった板を持ち上げた。言われなくても洗うつもりらしい。流しはすぐ隣にあり、二人で並ぶと肩が近い。アルバは木匙を取ってから、竈の反対側へ足を置き直した。ニルの手首も、袖も、何も触れずに済む位置だった。
ニルのことを好きなのは、もう分かっていた。水を廊下へ飛ばして叱られた夜、言い返すうちに笑った顔を、片づけが終わっても見ていたかった。自分の傷に腹を立て、返事を一つ聞くたびに次を尋ねてきた声も、うるさいと思うだけでは済まなかった。今も、板を洗いながら葉と茎の煮え方を話す口元へ、目が寄る。説明を最後まで聞く気がなくても、その声が途切れるのは惜しかった。そういうことに、いちいち別の理由をつける必要はなくなっていた。
だから、流しの横から退いた。あの夜も、ニルを休ませるつもりで近づいた。手首を取った時の腕の硬さは、今も指の内側へ戻ってくる。息が止まったあとで笑い、こちらへ寄ってきた顔を、ただ近づきたいのだと思って受け取っていたら、どうなっていたか。ニルは自分が勘違いしたと謝ったが、掴んだのはアルバだった。今は腕が硬くなっていない。それだけで、自分の欲しい方へ距離を縮めてよいとは思えなかった。
食事を作ることなら、続けられる。ニルは食べると言った。菜をよけて卵を割り、固まるまで火を弱める。洗い終えたニルが皿を二枚出したので、アルバは鍋を動かさず、その場でよそった。持っていけるか聞くと、頷かれた。ニルが盆を運んだあと、パンを切り、鍋の残りには蓋をした。二人分を用意する手順は、考えなくても進んだ。
居間では、ニルがいつもの椅子に座っていた。向かいの席にも皿が置かれている。アルバはパンを中央へ置き、自分の皿を持って、卓の遠い端にある椅子へ移った。腰を下ろす時に左側を曲げないよう、右手で座面の位置を確かめる。傷のためだけなら、向かいでも同じように座れた。ニルの匙が止まったことは、椅子を引いてから分かった。
「そこだと、灯りが遠くありませんか」
「食うだけだ」
「でも、こちらが空いています」
ニルは向かいの椅子を見た。アルバはパンを一切れ取り、皿の横へ置いた。
「ここでいい」
短く返すと、ニルの目が椅子から戻った。すぐに匙を使い始めたので、アルバも食った。菜の茎は柔らかくなり、卵の縁に少し汁が残っている。もう一度声を掛ける用件を探す間に、ニルが皿の端でパンを割った。
向かいに座っていれば、手を伸ばす時にも近かった。紙を広げると一緒に覗き込み、ニルが図を指せば、その指の先から説明を聞けた。今の席からでも、声は届く。パンが要ると言われれば渡せる。そう思っていたのに、ニルは中央の皿へ手を伸ばしかけて、まだ持っている方を食べた。足りているのか、声を掛けにくくさせたのか、見ているだけでは分からなかった。
「僕、何か嫌なことをしました?」
アルバは匙を止めた。ニルは食べかけのパンを皿へ下ろし、こちらを見ていた。さっきまで何を考えているのか分からなかった顔に、今は答えを待つ力が入っている。
「してない」
すぐに言ったが、ニルの指は皿から離れなかった。
「では、どうして」
問いのあとで、空いている椅子へ目が動いた。
「最近、僕がいると、場所を変えるので」
流しの横でも、同じことをした。アルバは自分の皿へ目を下ろした。嫌だからではないと言えば、その逆まで言うことになる。近くにいたいのだと伝えたあとで、ニルがどんな返事をするかを、今の自分は待てるのか。あの夜のように笑って、分かりましたと言われたら、それを喜んでしまわないか。まだ起きていないことばかりが、口を開く前へ並んだ。
「……知らん」
ニルの眉が少し寄った。何を聞いたのか確かめるような間があり、それから、匙を持つ手が皿へ戻った。
「分からないんですか」
「お前が何かしたんじゃない」
アルバは言い直した。そこだけは、違うまま残したくなかった。ニルは頷いたが、さっきの質問を取り消す顔ではなかった。「分かりました」と答えて、一口食べる。そのあと、菜の話も、今日の記録の話も出なかった。
食べ終えた皿をニルが持ち上げた時、アルバも立った。
「置け。俺が洗う」
「僕の分です」
返ってきた声に、いつもの速さが少しあった。ニルは皿を持ったまま待ち、アルバは手を下ろした。
「分かった」
そう言うと、台所へ向かう足が動いた。自分の皿も運んだが、流しの横へは並ばず、残ったパンを包んでから戻った。ニルが洗っている音は近い。席を一つ変えただけで、今夜は話しかける用事まで探すことになった。
ニルは鞄を取って上へ行った。眠る前に明朝の帳面を置く、そのくらいの仕事だと思える時刻だった。アルバが椅子へ戻ると、向かいの席には皿も匙もない。寄せたままの椅子を直しかけ、背へ掌を置いた。ニルは嫌なことをしたかと聞いた。何もしなくてよい幅を空けたつもりで、そこで何かを間違えたのではないかと考えさせていた。椅子を卓へ戻しても、今から座る者はいなかった。
*
翌日の詰所へ回ってきた綴りには、合同調査で照合する範囲を記した紙がついていた。アルバは受領欄へ署名し、机の中央を空けた。独自捜査の停止が解かれたわけではない。ローデンを通して受け取った資料を読み、患者の警備や、これまでの襲撃の記録と照らす。次にどこへ照会するかも、勝手に使いを出すのではなく、合同の窓口へ戻すことになっていた。
グラントが古い予算番号の控えを広げた。ラザルカが取り寄せた支出根拠の続きで、今回の写しには、試験の評価項目が含まれている。
「表の費目は、相変わらず治療ですね」
グラントは先の頁を押さえた。魔力障害回復療法。アルバはその題を読み、別紙の番号を辿った。薬剤の調製費も、測定器材も、ここまでは治療のためと言われれば通る。その次の紙には、兵員の魔力出力増強、とあった。
対象を記した行で、指が止まった。導路の損傷がない兵員についても適用を検討する。さらに下には、事故以前の能力への復帰を上限としない、とある。アルバは頁を前へ戻し、日付と承認の番号を確かめた。別の計画の紙が混じったのではない。黎明計画の試験継続費に、同じ枝番号で繋がっていた。
「戻すだけじゃないな」
アルバが言うと、グラントは覗き込んだ。
「元から使える兵にも、やるつもりですか」
「そう書いてる」
評価項目には、規定時間内の連続放出量、障壁の保持、負荷を繰り返した場合の回復時間が並んでいた。目標とする短時間の出力は、処置前の二倍。日常の小さな魔法を再び使えるようにするためだけの欄ではなかった。
グラントはその数を読み、表の右側へ目を動かした。
「もう、そこまで出てるんですか」
「目標だ。結果はこの紙にない」
アルバは二倍という字の下へ、到達目標、と写した。何人に使ったか、誰がその数を出せたかは分からない。それでも、損傷を治す費用だけを支払っていたという説明は、この別紙と一緒にはできなくなった。
アルバは自分の掌を机へ置いた。必要な時にもう一枚、障壁を張れれば、守れる場所は増える。兵士が魔力事故のあとに復帰できるなら、それも軍にとって本当の利益だった。出力を上げたいと思う理由は、ここに座っていても挙げられる。だが、カイの腕では、本人が動かすのをやめても光が残った。枠と薬がなければ、運ぶこともできなかった。目標の欄へ書かれた量を、身体から切り離して読むことはできない。
「長く使った場合は」
アルバが聞くと、グラントは頁をめくった。
「この写しには、ありません。後ろも器材の数量までです」
「短時間だけ二倍にして、その後どうなるかがない」
「負荷後の観察を行う、とだけですね」
グラントが読み上げた一行の隣には、別の記録を参照するよう番号があった。アルバはその番号を控えた。記録がないと決まったのではない。今ここで読めないことと、誰かが確かめていないことは分けなければならなかった。
机の脇には、カイを移した日の襲撃図があった。屋根から打ち、戸を開け、患者と資料を別々に取ろうとした動きは、これまで何度も読み直している。アルバは図を別紙へ重ねかけ、やめた。
「襲撃者にこれを使ったかは、まだ書くな」
「装備の照合とは、分けておきます」
「ああ。こっちは、計画の目的として残せ」
軍式の道具を持っていたことだけで、今見つかった試験まで受けているとは言えない。グラントは二つの綴りの間を空け、受領した頁の一覧を作り始めた。
アルバは報告に、兵員の出力増強を目的とする評価が含まれる、と書いた。処置の実施範囲と、負荷後の経過について、追加の照合を求める。ニルの研究を取り入れた計画で、兵士の力を増すところまで進めるつもりだった。傷を治す研究だと説明された者に、この別紙まで見せていたのか。問いは浮かんだが、その答えを持つ紙はなかった。承認された目的と、本人が聞いた説明を、同じものとして報告しないよう、用紙をもう一枚取った。
窓の外で馬車が止まり、アルバは羽ペンを置くより先に顔を上げた。荷を運ぶ車で、門番が受取先を尋ねている。帰りに使える車ではなかった。報告の続きを書こうとすると、グラントのペンも止まっていた。
「門が気になりますか」
「別に」
「今日は三度目ですよ。まだ、帰りの車の時刻には早い」
アルバは窓から目を戻した。写した番号を元の頁と比べ、最後の一つまで揃っているのを確かめる。その間も、グラントは笑いを隠していなかった。
「家で飯ですか」
「ここで食う用はない」
「俺はありますよ。今朝、帰りが分からんと言って出たので、家の鍋には入れてもらえません」
グラントは一覧へ頁数を書き、紙を一度持ち上げた。
「隊長は、今日は間に合わせるんですね」
「飯を作る」
答えてから、アルバは昨夜の鍋を思い出した。残りは少なく、足りなければ別に作ればよい。それを今から考えていること自体が、グラントの言った通りだった。
「では、恋人殿のお待ちかねだ」
アルバは顔を上げた。
「……誰のことだ」
「さあ。心当たりがおありで?」
「勝手に恋人扱いするな」
「名前は出してませんよ」
「分かって言ってるだろ」
グラントは肩を小さく動かし、一覧をこちらへ押した。
「受領はここまでです。戻す原本はありません。報告の控えだけ、こちらに残します」
仕事へ戻る声に、アルバも紙を取った。私生活を尋ねるつもりなら、もう少し続けただろう。グラントは報告の宛先を読み直し、封筒を用意した。それ以上、ニルのことは尋ねなかった。
待っているかどうかは知らない。帰れば同じ部屋にいる日が増え、食うかと聞けば返事が来る。それだけのことを、アルバの方はもう当てにしていた。昨夜、ニルが上へ行ったあと、革帯の残りを拭くつもりで布を広げた。汚れを落としている間も、階段へ戻ってくる音を聞こうとしていた。自分が席を離したのに、向こうから来るのは待っていた。
グラントが使いへ封筒を渡すと、アルバは受領を待つ欄へ印を入れた。この報告への指示が戻るまでは、今日の処理が終わらない。次の記録も運ばれ、午後の残りは、その照合で過ぎた。帰りの車が門を出る音を聞いた時には、アルバはまだ机に座っていた。立つ理由を見つけられなかったことへ、少しだけ息を緩め、それから、同じ門の音をもう一度聞こうとした。
*
受領の控えが戻った頃には、詰所の窓は黒くなっていた。翌朝に回す照会事項を残し、綴りを保管係へ渡す。グラントは食事を済ませ、交代の兵へ机を空けていた。「帰りの車は、もう一本ありますよ」と言われ、アルバは頷いた。少し遅い便だが、家へ行く道の途中まで乗れる。時刻を確かめると、まだ余裕があった。
アルバは軍宿舎の方へ歩いた。仮眠室の戸口には、使える寝台の札が掛かっている。夜勤の合間に休む者が一人、奥で靴を脱いでいたが、手前の寝台は空いていた。ここなら横になり、起きてすぐ医務室へ寄れる。長く座っていた左の脇には、立った時に引かれる感じが残った。身体を休める理由なら、誰に聞かれても答えられた。
荷を置く椅子へ手を掛け、寝台の端に腰を下ろした。薄い毛布は畳んであり、敷布にも人の使った皺がない。自分の部屋より少し硬いが、眠れない寝台ではなかった。外では次の当直を呼ぶ声がし、廊下を二人分の足が通った。誰もアルバを呼ばない。上着を脱いで横になれば、今日はそれで終われる。
襟の留め具へ指を掛けたまま、アルバは手を止めた。ここで寝る方が楽なのかと考えた時、先に浮かんだのは傷ではなく、昨夜の空いた椅子だった。家へ戻れば、ニルがいる。顔を見て、また近くへ座りたくなる。何か話しかけられれば、用が終わったあとも聞いていたくなる。そのたびに自分を止めるより、今夜は初めから同じ部屋へ入らなければよい。そういう都合を、傷の休養へ混ぜていた。
ニルは以前よりよくこちらを見る。アルバも、その目に当たるのを待っている。そこから何を受け取ってよいのかが分からなかった。好かれていると決めれば、自分に都合がよすぎる気がした。手首を掴んだ夜には、ニルが何をしようとしているか気づくまで、指を開けなかった。今の視線まで同じものだと決めるつもりはない。それでも、自分が欲しがった時に、相手が無理をして合わせるかもしれないという考えは、まだ離れなかった。
寝台の上で毛布を広げた。手を伸ばしても、そこにあるのは布だけだった。向かいに座らず、狭いところへ並ばずにいれば、ニルは断らなくて済む。そう思って選んだ距離だったのに、昨夜聞かれたのは、自分が何か嫌なことをしたか、という問いだった。していないと答えるところまでは、迷わなかった。そのあとで、どうして、と聞かれると、向こうではなく自分のことを話さなければならなくなった。
それを話せないまま、今夜は帰らない。ニルが何を思うかは、ここで考えても分からない。だが、昨夜の答えへ、帰ってこなかったということだけを足すことになる。仕事で泊まる必要はもうなかった。見張りから異変の報告が来たわけでもない。家の戸を開けずに済ませる理由を、自分の側で作っているだけだった。
アルバは毛布の端を戻した。ニルに、誰かの求めることへ合わせなくてよいと思っている。それなのに、どうして距離が変わったかは教えず、何もしていないとだけ言って納得させようとした。あの返事では、ニルが次に何をやめればよいか考えるのを、止められなかったのかもしれない。自分は布を畳み、どの椅子へ座るか決め、今夜はどこで寝るかまで、相手に見えないところで変えられる。その方が簡単だった。
どう話すかは、まだ決まらない。好きだと言えば済むとも思えなかった。ニルに、今すぐ何かを答えさせたいわけではない。けれど、答えを求めないことと、何も言わずに帰らなくなることは、一緒にはできなかった。アルバは上着の留め具から手を離し、広げた毛布を元へ畳んだ。椅子へ置きかけていた荷を取り、左側を捻らないよう立ち上がる。廊下へ出る前に、寝台の札を空きの方へ戻した。
帰りの車には間に合った。御者へ降りる通りを告げ、後ろの座席へ腰を下ろす。動き始めると、基地の門が幌の隙間から遠ざかった。風は冷たく、手袋を取るために上着の袋へ指を入れる。そこには、今朝、ニルが返した乾いた布もあった。濡れた肩を拭くように渡したものを、夜のうちに乾かし、下りてきた時に流しの脇へ置いていた。アルバは布を押し込まず、袋の中で平らにした。
家の近くで車を降りると、角に立つ兵がこちらを認めた。短く様子を聞き、交代の時刻を確かめてから門へ向かう。窓の一つにはまだ灯りがあった。ニルの部屋なのか、階下の灯が映っているのかは、塀の外からでは分からなかった。アルバは庭へ入り、濡れた石を避けて歩いた。何を言うつもりで帰ったかと聞かれたら、今も答えに詰まるだろう。それでも、仮眠室の寝台は使わなかった。
玄関の前で一度、手の泥を確かめた。軍の机で洗ったあと、汚れる仕事はしていない。アルバは取っ手を持ち、敷居に掛かる戸をいつも通り少し持ち上げた。内側から、竈に残った火の匂いがした。そのまま戸を引き、家へ戻った。




