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第36話 ELC探査員のティーナ

本日は2話投稿します。Interlude36.5が次にあります。

四人でショッピングモールにいる。都市中心部から数キロ離れた、住宅地との際にある大型商用施設だ。


携帯電話を買いにきているのである。

大きな駐車場を横切るその時。気がついた。今は何時だと。クロさんに聞くと11:50。これは、ナイスタイミングだ。タクナとアルマにいいものを見せてやろう。


「まて、二人とも良いもの見たくないか?俺が見せてやろう」


得意げにそう言ってやった。


「良いものってなに?見たい見たい!」


子供のようにはしゃぐアルマ。うんうん、実に可愛らしいぞ。加点五してあげよう。


「お、何見せてくれるんだ?まさかとは思うが蒼の刻とか言うなよ」


「…………。なぜ知っている?」


アルマはさておき、なぜお前がそれを知っているのだ。


「俺は昨日見た」


「私は一昨日見たよ」


なんだよ見たのか。知識マウント取りたかったのに。


「マサトくんこそ、いつ見たのかしら?そんなの気にするタイプじゃないでしょ」


クロさんが酷いことをサラッとぶち込んできた。


「んだよ、二人ともつまらんな〜自慢したかったのに……。俺は昨日、ティーナさんと中央公園で見たんですよ。直近で見たから、凄く綺麗でしたよ。アルマとタクナはどこで見たのよ」


そう言ってみたが、クロさんとアルマがフリーズしている。


「俺は昨日アルマの引越しの時にだな〜。ん?どうした二人とも」


固まった二人。タクナと顔を見合わせる。何がどうしたのだろう。


「誰と、どこで見たですって?」


クロさんが再起動する。


「ティーナさんと、中央公園の噴水で。一番綺麗に」


「きゃーーーー!マサトくんやるぅー、ちょっと見直したかも!」


アルマが壊れてる。再起動したが暴走してる。


「なんだ?どうした?アルマしっかりしろ!」


「しっかりするのはマサトくんでしょ。まぁ、別に悪い人ではないと思うから、反対はしないけどいきなりよね〜」


「ねーねー!ティーナさんって蒼穹探査のあの綺麗な副隊長さんでしょー!マサトくん凄いね。ぼんやりしているって言って悪かったわ」


ぼんやりしてるなんて言われてないよ?てかそんな風に見てたのか貴様。


なんの盛り上がりなの?タクナを見るが、肩をすくめる。タクナも知らんらしい。


気がつくと、空は蒼く光り輝いていた。


ショッピングモールの中を歩いている。携帯屋目指して。


「いや、アルマはさておきクロさんまで。いい歳して何言ってるんですか……何十年前の流行りですか?」


「まぁ、そうなんだけど、こういうのって意外と廃れないものよ?」


「ねーねー、マサトくん養ってもらうの?タクナくん!マサトくんヒモになるって!」


お前は少し黙ってろ。あとタクナは羨ましそうに見るな。お前まで信じてどうする。


要するに、女子の間の都市伝説。いや都市伝説ではないか。とにかく、中央公園の噴水で男女が蒼の刻を〜以下略。


馬鹿馬鹿しい。ティーナはそんな気ゼロだ。可能性があるとしたら、ご飯何杯でも食べられる美味しいネタを仕込んでおいた。そうほくそ笑んでいる。全額賭けてもいい。


「ほら、アルマ。店着いたぞ。なに買えば良いのか教えろ」


ショップに着いたので、恋バナモードのアルマを落ち着かせる。


「えぇーこの話もっと広げようよー。ティーナさん年下好きなのかなぁ。あれだけ優秀な人ならそれもあるのかな?ダメな男の子に母性本能が……あるかもっ!」


お前、さっきからちょいちょい俺をディスってるぞ。


「広がらねぇから。さっさと教えれ」


「はいはい。アルマちゃん。そのお話は帰ってからゆっくりしましょ。今はお買い物するわよ」


流石にクロさんは冷静になっている。あり得ない話と考え直したようだ。タクナも13等級の探査員というものを思い出したのか、アルマの姿を可哀想な子目線でみている。


「クロさんまで……。つまんないの〜」


「いいから選べ、俺とタクナもそれにするから」


こちとら、蒼穹探査のベテランさんに弄られる未来を思うと憂鬱な気分なんだ。さっさと買って帰るぞ。


てか、待てよ?ティーナと今夜、会う約束しているぞ。シロを見せる話になっている。都市にきて三日間、毎日会ってる。もしかすると彼女かな?


アルマには黙っておこう。



正午を知らせる蒼い光が窓から差し込んでいるのに気がつく。ずっと端末に向かっていたが、もうそんな時間になっていたのか。


「ティーナ。朝からなに調べてるの?お昼いきましょ。昨日のマサトくんとのデートどうだったか聞かせてよ」


サリアらしく、はなからデート認定だ。というより、あなたに仕事が入ったからデートみたいになったのに。


「デートなのかしら、私はそれでも良かったけど、マサトくん上司に連れてかれる新人みたいな顔していたかも」


「いいわね。そこらへんを詳しく聞かせてちょうだい」


長い昼休憩になりそう。モニターを落として立ち上がった。


幹部席はいつも空いてる。そんな席はないのだが、いつの間にか棲み分けされている。昔は自分たちも、この区画を利用する事はなかった。今さら、前の席に戻るなんて部下たちに迷惑だ。


「ええーー!?噴水でマサトくんに魔素同期を見せたですって?」


サリアがびっくりしている。


「ええ、彼は見たことないだろうと思って。私、結構あれ好きなのよね。綺麗じゃない?」


「いや、ティーナ。男性と二人きりで公園で同期見るって意味わかってるの?」


ん?何を言って……なるほど。忘れてた。


「ああ、それね。忘れていたわ。でも、マサトくんそんなの関係ないでしょ。見たこともない蒼の刻のジンクスなんて知らないわよ」


「そりゃそうだけど、絶対に知る日がくるわよ〜。どうするのー」


ダメだ、完全に面白がっている。マサトくんの顔を思い出す。素直で可愛らしい男性だ。うん。勘違いから始まる恋も悪くない。と考え苦笑い。


「それはそれで。マサトくん将来性ありそうだし、きっとすぐに頭角を現すわ。タクナくんとコンビで大暴れしそう。KTSさんに向いてる気がするわ。欲しがってたサリアには悪いけど」


「ほらっ!せっかくだから、もらってもらえば?」


サリアは本当に……。


「あのね、サリア。彼は近い未来、優秀な探査員として名を馳せると思うわよ。そんな彼を周りの若い女子たちが、放っておくかしら?少なくともわたしなら放っておかないわね」


「だから今のうちに」


「マサトくんは恋愛とか今はどうでもいいんじゃないかしら。白峰の時に見たでしょ。アルマちゃんだっけ?あんなに綺麗で可愛い子がいつもすぐ側にいるのに、まったく反応してない。たぶん、恋愛に興味ないのよ」


「いや、あれはもう逆に仲良すぎて家族枠に」


食い下がるなぁ、まぁ気持ちはわからなくもない。マサトくんが兎人ならわたしもサリアとくっ付けようと画策しかねない。


「はい。その話は終わり、それより私が午前中いっぱい使って調べた謎魔獣の話聞きたくない?けっこう面白いかもしれないわよ」


「それも気になる。何かわかった?」


テーブルに備え付けられた端末を起動する。目の前に現れるホログラムを操作しながら、午前中にまとめた話を始めた。


「まず、謎魔獣シロちゃんの卵の殻があるのが気になったの。本来、孵化と同時に魔素散乱して消えるはずよね」


「うん。そんなものが何年も残るなんてあり得ないわ。魔獣じゃなくて動物なのかしら?」


それも当然あり得る。しかし、わたしの見解は違う。


「残置物として永遠近く残るケースがあるでしょ。あなたの剣に使われる素材とか、決して無くならない」


「そりゃ、この剣は甲種Ⅰ類二種の……まさかマサトくんの謎魔獣も?」


驚いてる驚いてる。けど、驚くのはここから先だ。


「あなたの剣の素材は二種よね。それでも半永久的に散乱しない。けど、素材元の魔獣の卵の殻はどうかしら。残りそうかしら?」


「いや、卵の殻なんてさすがに残らない。まさか一種だって言うの……そんな話聞いたこと」


そうよね。わたしも聞いたことない。過去の資料も調べたけど、そんなケースはなかった。


「サリア、私はそれが知りたいの。甲種Ⅲ類一種なんて魔獣が存在するか否か。今夜、シロちゃんに会わせてもらう約束してるわ。とっても懐いて可愛い子みたい。楽しみ」


言い終わる前に偏向干渉が入る。


〈ティーナ。今夜のデートはキャンセルして下さい〉


慌てて左耳に手をやる。ELC契約時からずっと続けている癖だ。斎女からの干渉中だと周りに理解してもらうために付けた癖。何か大きな災害でもあったのか。サリアも私を見て息を飲む。


〈カナン様からです。現在の関心事はすべて忘れるようにと。これ以上、知ろうとしないこと。いまわたしに神託がありました〉


思考が停止する。息をするのも忘れた。


〈わかりましたか。もう一度伝えます。デートはキャンセルして下さい〉



リビングで新ガジェットお披露目会をしている。アルマが選んだ最新式スマホ。いや、もう認めよう。明らかに地球産のスマートフォンを凌駕していると。


「こうしてホログラム起動した方が色々捗るんだよ」


真っ黒で硬質なカード。防水どころか、一枚の薄い板にしか見えない。操作どうするの?と聞くと、手をかざすとカード上部に立体ホログラムが浮かぶ。そこに指を入れて三次元で操作している。アルマすげぇな。お前も初見だろ、なんでそんなにスイスイ動かせるんだ。


孫にスマホ操作を教わる爺になった気分。


「た、タクナ、お前行けるか?」


仲間だよな。そう願いを込めてタクナを見ると、探査員登録証をかざしている。何しているのか見ていると、筐体へ溶け込んで行った。唖然としていると、スマホを斜めにかざす。すると、あの忌々しい0が浮かぶ。


まじかよ。タクナも使えてるじゃん。異世界マジ半端ねぇと思ったところで、俺のスマホが鳴る。



発信者:サリア・フライト

所属:蒼穹探査[13等級探査員]

発信地:蒼穹探査株式会社内

相対位置:南南西方向652m

ステータス:正常[心拍値微増]



「うわっ!なんか出た!アルマ助けてっ」


急にホログラムからポップアップメッセージみたいなものが。文字列の背景に蒼穹探査の社章が浮かんでいる。


「サリアさんからだよ。出るなら、通話する気持ちで触れば通話に入るよ。出ないならそう考えて触る。それで大丈夫」


「いや、それ以前になんで登録したばかりの携帯にかかってくるの!?」


まだ開封して10分も経っていない。


「ん?なに言ってるの?購入したときに情報統括局にID登録されてるよ。きっとマサトくんの名前で検索したんじゃないかな。愛?」


こ、個人情報保護とかは?


「それより早く出た方が良いよ。パーソナルタグがフルアクセスになってる。絶対に出て欲しいんだよ!ちょっとドキドキしてるみたいだし、まさかサリアさんがね~マサトくんモテモテだね!」


この馬鹿は何を言ってるんだ。んなわけあるか!パーソナルタグと言われるポップアップに触れる。


『はぁい。私に気のある素振りをみせた翌日にはティーナと一緒に蒼の刻を見ちゃうマサトくんですかー?』


切りたくなったが、通話終了のさせ方がわからん。


「色々言いたいことはありますが、そのマサトだと思います」


『ああ良かった。翌日にはディナーデートの約束まで取り付けちゃう手の早いマサトくんで合ってた』


合ってねぇよ!どこのマサトだ。


「サリアさん、買ったばかりで使い方がわからないんです。通話終了のさせ方を教えてもらえますか?なにを触ればいいんでしょう」


『うそ!ごめんなさい。調子にのりました。切らないで』


蒼穹探査でこの人の部下になるとか、KTSに入るより無理ゲーかもしれない。


「ふぅ。どうされたんですか?サリアさんもシロ見たいなら一緒にどうぞ」


一拍の無音があった。


『ん、その件で連絡したの。ふざけてごめんなさい。実はティーナの都合で今夜の食事がキャンセルになるって連絡なの。本来ならティーナから連絡するんだけど、ちょっと忙しくて私が代わりに』


「わかりました。謝罪なんか無用ですよ。お世話になりっぱなしですし」


『本当にごめんなさいね。こんど埋め合わせさせるからね』


「大丈夫ですよ。何かあったら相談にのって下さい」


二言三言、言葉を交わしサリアから通信を切った。同時に通話終了とタグに文字が。


今夜の夕飯はクロさんにお願いしなきゃ。見回すとアルマが凝視している。なんだ?


「もうフラれたの?」


こいつは……


「フラれとらんわ。そもそもそんな関係じゃない」


「じゃあマサトくんを奪い合って、ティーナさんとサリアさんが喧嘩して、勝ったサリアさんがお断りの連絡してきたとか?」


タクナ。そんなもの弄ってないでこいつ捨ててきてくれ。端末をあれこれ触っているタクナは我関せずだ。


「通話開始の時に、秘匿するように触れば音声に指向性がつくから、他の人に聴かれないで話せるよ?」


異世界スマホの技術力に驚くより、この小娘をどうしてやるか考えることにしよう。

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