第76話 君、いつもよりも心拍数早くなってない?
「私の話はどうでもいいからさ、映画でも見ようよ」
「そうだね」
ずっと彼女のことを詮索しても良くないし。
とりあえず、彼女の学生時代について知れたのは御の字だ。
それに満足しつつ、サブスクで見られる映画を探してみることにした。
テレビの電源を付けて、内蔵されているアプリを開く。
「そういえばさ、ホラー映画とかって見るの?」
ちらっとホラージャンルが目に映ったから尋ねてみた。
「私はたまに見るくらいかな」
「やっぱりそうなんだ」
「やっぱりってなに?」
ホラー系のジャンル、彼女好きそうだから。
今回は彼女の好みに合わせて、ホラー映画を見ることにした。
「この映画とか見たことある?」
そう言って彼女に映画タイトルを見せる。
「それはあるね」
「じゃあこれは?」
「それもある」
「これは?」
「ある」
たまにホラー映画を見る割にはかなり制覇してるじゃん。
「でも洋画のホラー映画はまだそんなにって感じかな」
「『まだ』ってことは、これから見る予定あるの?」
なんでも、彼女の友だちは怖い話が大好きらしい。
その影響でホラー映画を見ることが多いという。
「これとかどう?」
「いいじゃん」
やっと面白そうかつ彼女が見たことのない作品を見つけることができた。
「ていうか、君はホラーとか大丈夫なの?」
「まあたぶん」
再生ボタンを押しながら彼女に応える。
ホラーゲームとかもたまに友だちとするし。
好きではないけど、声を出すほどではないと思う。
「せっかくならさ、リビングの電気消して見ようよ」
「雰囲気出るね」
映画館で見るみたいで良いかも。
ソファから立ち上がり電気を消して、再びソファに戻る。
まだプロローグ的な映像が流れているだけなので、そこまで怖くない。
ぼーっと見ていると、彼女が手を繋いできた。
ささくれがあるから控えて欲しいと思いつつ握り返す。
するとすぐに手が離され、手首をぎゅっと握られた。
「君、いつもよりも心拍数早くなってない?」
こちらの顔を見ないで、彼女は呟いた。
「手首を握られてるからそうなってるだけだと思うけど」
「いや、これは完全にビビってるときの心拍数の速さでしょ」
「そんなに怖がって欲しいの?」
「まあできれば?」と言って彼女は手首を離さない。
指先に触れられるよりはマシだと思い、その状態のまま映画を見始めた。




