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重めの彼女とお話するだけ  作者: 夏野恵


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第73話 私が来いって言ったら来てくれるんでしょ?

「年末の話なんだけどさ、」


そう言うと、彼女の表情が変わった。

さっきまでゆるゆるだった雰囲気が一気に張りつめる。


前会ったときに、年末に彼女の実家に行くか考えておくように言われたのだ。


「積極的に行きたいとまでは思えていないってのが本音だね」

「そっか」


彼女は腕を組む。


やっぱそういう反応になるよね。

予想通りと言えば予想通りだ。


「でもどうしてもって言う感じなら行くかな」

「私が来いって言ったら来てくれるの?」

「うん」


それが自分の気持ちだった。


「なんでそう考えたのか教えてくれる?」

「まずは年末はゆっくりさせてほしいっていうのがあるね」

「向こうでゆっくりできるけど」

「そうかもだけど、初めて行く家だから緊張するし」


少なくとも、今の家のほうがリラックスできるはずだ。

「それで?」と彼女はさらに話を促す。


「8月にウチの実家に行ったのに、年末にも実家に行くのは急な感じがする」

「急かな」

「自分はそう思ってるってだけだから」


彼女にとってはそうじゃないのかもしれない。


それはまあ仕方のないことだと思う。

価値観って人それぞれだし。


「他に理由はあるの?」

「一番大きな理由があって」

「なに?」

「ちょっと恥ずかしいんだけど……」


これが一番の理由って言うのが恥ずかしい。

でも彼女はとても真剣な目でこちらを見ていた。


覚悟を決めて口を開く。


「あの、飛行機がどうしても無理で……」

「……は?」


彼女は目を見開いた。


やっぱそういう反応になるよね。

予想通りと言えば予想通りだ。


彼女の実家はここからかなり離れた北で、飛行機で行くような場所だ。

もし行くってなったら、往復で飛行機に2回乗らないといけない。


それがどうしても耐えられなかった。


「君、飛行機乗ったことないの?」

「あるけどさ、飛行機って普通に怖くない?」

「私は全然だけど」


慣れてる人はみんなそう言うんだよ。

怖い人が悪いって雰囲気を出してくるのがほんとに気に入らない。


「とりあえずこの3つの理由があるんですけど、どうですかね」

「でも君、私が来いって言ったら来てくれるんでしょ?」

「……まあ」


不承不承頷くと、彼女は笑みを浮かべてこう呟いた。


「じゃあ一緒に来てもらおうかな」

「……予定だけ早めに教えてくれれば」

「オッケー」


彼女はそう言ってスマホに視線を戻す。

年末に彼女の実家に行くことが決まった。


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