第72話 おうちデート中なのに外出るって何考えてるの?
「最近ささくれがひどいんだけどどうすればいいとか知ってる?」
「へーどんな感じなの?」
どれほどささくれに苦しんでいるか、彼女に説明することにした。
ここは自分の家、おうちデートってことで彼女が来ている。
少し前に家だからって気が緩みすぎと言われたので、準備はしっかりした。
服装とか髪のセットとか最低限だけど。
「まずはこの手をご覧ください」
「なに、プレゼン始める気?」
たしかにそれっぽい言い回しになったけど意図しているわけではない。
ひとまず、彼女に自分の手を見せることにした。
「あー確かにささくれあるねー」
そんなことを言いながら、彼女は指に触れようとする。
「流石に今はやめて?」
「いや変なことしないって」
「そういう問題じゃなくってね?」
上手い返しを考えているうちに、彼女は指先を触った。
「せっかくの手が残念なことになってるね」
彼女は指フェチらしいく、そういうのには詳しいんじゃないかと思って話をした。ちなみに自分は指フェチじゃないので、彼女の言っていることがよくわからない。
「乾燥してるからささくれってできるらしいから、まずは保湿でしょ」
「それはそうなんだけど、今あるささくれをどうにかしたいんだよ」
予防方法なんて、今は無価値に等しい。
だって今悩んでるんだから。
もしハンドクリーム塗ってささくれが元の皮膚に戻るんだったら塗るけど。
「それなら、清潔なハサミで切るしかないんじゃないかな」
「なるほどね」
それもそうだ。
あるなら切ればいい。
ただ問題点がひとつある。
「いつもフライドポテトを開けるハサミって清潔って言えるかな?」
家にあるハサミは1個だけ。
でもそれは食材を開けるためのものだ。
「ポテトの油で保湿すれば?」
「びっくりするくらい他人事だねー」
押したら引く感じが彼女っぽい。
彼女曰く、困ってる姿がみたいとか。
「そのハサミを使うのはアレだから、百均とかで買えば良いんじゃない?」
「そうだね」
「ちょっと買ってこようかな」と呟いて、腰を上げようとすると—
「いや、今おうちデート中なのに外に出るって何考えてるの?」
手でこちらを制しながら彼女は真顔で口にした。
え、ここまで提案されて待てって言われることある?
「とりあえず今から外に出るのとかナシだから」
今はとりあえず我慢するように、とのことだった。
えーマジか。
めっちゃささくれ気になるんだけど。
手に意識を向けないように腕を組みながら、彼女との会話を続けた。




