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重めの彼女とお話するだけ  作者: 夏野恵


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第70話 ……君がフェスに行ったのが悪いんだからね

「普通にうまいね」

「それはどうも」


こちらに視線を向けないで彼女は腰を下ろす。

飲み物に口をつけてからスクリーンに視線を向けると、採点結果が表示された。


「……全国平均超えられたのマジで奇跡かも」


腕を組みながら、彼女は呟いた。


「え、歌とか苦手なの?」

「マジで苦手」


歌を聴いた感じ、そんな印象湧かなかったけど。


「ほら私、高校までハブられてた言ったじゃん」

「あーなんか言ってたね」


あまり詳しくは聞いていないけど。


「中学で『あの子、歌下手だから悪目立ちしてるよね』って言われてたからさ」


そういう経験を通じて、彼女は歌が苦手になったらしい。

無垢な悪意っていうのは怖いね。


「まあでも、普通に歌は上手かったと思うよ」

「マジ?」


訝しむような視線をこちらに向けてきた。

なんとなく気まずくなって、飲み物に口をつける。


「歌うのがトラウマだからさ、カラオケとかあんまり行きたくないんだよね」

「じゃあなんで今日はカラオケに行こうって?」


わざわざ傷に塩を塗るようなことはしなくてもいいんだけど。


そう尋ねると、彼女は無言になった。

アーティストのインタビュー動画が沈黙を埋める。


「……君がフェスに行ったのが悪いんだからね」


しばらくしてから、彼女は口を開いた。


「私、そういうのほんとに無理なのに、君が楽しかったって言うから」

「なるほど」

「なるほどってなに?」


隙間を埋めるための相槌だから、あまり気にしないでほしい。


「でも苦手なのは普通に苦手だし」


「君とカラオケに行くことは二度とないかな」と彼女。


友だちとなら行く可能性はあるらしい。


「じゃあもう帰る?」

「いや、帰ってもすることないじゃん」


「あと1曲ずつ歌ってから帰ろうよ」と言って、彼女はデンモクを渡してきた。

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