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重めの彼女とお話するだけ  作者: 夏野恵


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第69話 歌ってる途中にスマホ見るとかだけはほんとにやめてね?

「そもそもなんだけどさ、カラオケに来たことってある?」

「当たり前でしょ」


「私のことなんだと思ってるわけ」と言って、彼女は椅子に腰を下ろす。


ここはカラオケボックス。

彼女と一緒に来たのは初めてだ。


「最初に来たのっていつ?」

「大学生になってからとか」


「とか」って濁してるけど、間違いなく大学生なんだろう。

だって彼女、大学に入るまでは友だちとかいなかったらしいし。


「とりあえず、君から歌ってよ」

「フェスに行ったあとだから、そんなに声でないと思うけど」

「あんまりカラオケに行ってないのにトップバッターはキツイって」


それもそうか。

とりあえずいつも歌う曲を予約した。


「君はカラオケにはよく行くんだっけ?」

「そんなに行かないかな」


一時期はほぼ毎日行ってたけど、なんとなく行かなくなった。


「じゃあお手並み拝見ってことで」


スクリーンをじっと見ながら、彼女は飲み物を口に含んだ。



「普通にうまいね」


歌い終わってから、彼女は感想を呟いた。

フェスに行ったせいか、いつもより上手く歌えたかも。


採点結果が出てから、彼女はどの曲を予約するか悩み始めた。


「君ってこの曲とか知ってる?」


そういってデンモクをこちらに見せてきた。


「知らないかも」

「えーじゃあ違うヤツにしよ」


再び彼女はデンモクとにらめっこをする。


「別に知らない曲とかでもいいよ?」

「知らない曲歌ったら変な雰囲気になるかもじゃん」


それを言う時点で、変な雰囲気にならないと思うけどね。


「前に私が友だちの知らない曲歌ったら、微妙な空気になったからさ」

「あー、そういうことね」


あつものに懲りてなますを吹くってヤツだろう。

この場で空気を読んでも仕方ないと思うけど。


「これとか知ってる?」

「あっそれなら知ってるね」


最近人気のある楽曲だ。


「じゃあこれ歌うから」


楽曲の予約が入って、映像が切り替わる。

すぐに聞き覚えのあるイントロが流れ始めた。


「歌ってる途中にスマホ見るとかだけはほんとにやめてね?」


マイクを使わずに少し大きめの声で彼女は口にした。


おっと危ない。

スマホはなるべく触らないようにしよう。


もちろん、と頷いてスクリーンの音程バーに焦点を合わせた。


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