第67話 じゃあさ、そのあとに会おうよ。
「ていうかさ、なんで来週は会えないわけ?」
9月の中旬、レストランでご飯を食べているときに彼女は尋ねられた。
ちらっと彼女の表情を見る。
至って普通そうだが、目が笑っていない。
「前々から言ってたけど、友だちとフェスに行くからだね」
「それは知ってるけど、なんで行くのって話」
おっと今日はそういう日か。
飲み物を口にしてから深呼吸する。
「友だちにおすすめされて、ハマったから行ってみようかなって」
「へー、そっか」と呟いて、彼女は腕を組む。
少し長い沈黙が生まれた。
周囲の雑音がやけに大きく感じられる。
「それって私との約束より大事なの?」
「事前に行くって言ってたからそっちを優先しようかなって」
もちろん彼女との約束が先に決まってたら、フェスに行くのは断っていた。
でも彼女にとってはそんなことはどうでもいいみたい。
「私との約束よりも優先順位高いってことには変わりないでしょ?」
「まあそうかも」
違うと思う、という言葉は飲み込んだ。
否定したら面倒なことになりそうだし。
「君アレだからね? 約束を破られるのって普通に傷つくからね?」
「破ったつもりはないんだけどね」
約束をする前にちゃんと伝えたわけだし。
「そうだけどさ、そうじゃないじゃん」と言って、彼女は飲み物を口にする。
「それで、そのフェスって何時に終わるの?」
「19時とかかな」
「そのあとに会うのは無理なの?」
「できなくはないって感じかな」
無理だと思う、と言える雰囲気じゃなかった。
「じゃあさ、そのあとに会おうよ」
「どこで?」
「フェスの近くとかで良いよ」
「帰りはどうする?」
「普通にタクシー拾えばいいじゃん」
それならまあ、できなくはないかも。
「それでいいんだけどさ、別の日とかじゃダメなの?」
「その日は二度とやってこないんだよ」
彼女がそんな青春っぽいセリフを口にするとは思わなかった。
そういう種類の人間が嫌いなタイプだと思ってたんだけど。
「じゃあ、イベントが終わってから連絡するね」
「よろしく」
彼女は視線を逸らしてグラスに口を付けた。




