第65話 えー私が毒見役するの?
「おはよー」
「おはよ」
リビングに入ると、彼女はすでに朝食兼昼食の用意をしていた。
「作るのめんどいから、普通にコーンフレークとそれプラスアルファでいい?」
「いいよ」
寝起きってあんまり食欲ないし。
すぐに立ち上がって、運べそうなものから運ぶ。
「あっ、冷蔵庫から豆乳とっといてー」
「豆乳?」
なんでいきなり。
「え、コンフレークにかけるでしょ」
「普通牛乳じゃない?」
「あーそっちタイプね」
「でも今、うちには豆乳しかないから」と彼女。
おとなしく豆乳を冷蔵庫から取り出した。
個人的に、豆乳はあまり好きじゃない。
ほら、豆乳ってちょっと癖のある風味がするじゃん。
あれがちょっと苦手っていうか。
自分のできる準備を済ませて腰を下ろす。
「何で豆乳なの?」
「豆乳って普通においしいじゃん」
「そうかな」
目の前にあるパッケージからは、おいしさをアピールしたいようには見えない。
「君、コーンフレークに豆乳かけて食べたことある?」
「ないね」
紙パックの豆乳しか飲んだことがない。
「コーンフレークにかけて食べたら意外とおいしいから」
「とりあえず試してみてよ」と彼女は言って腰を下ろした。
「とりあえず食べてみてよ」
「えー私が毒見役するの?」
「別にいいけど」と彼女は呟き、コーンフレークを皿に入れて豆乳を注いだ。
「うわーキッツ……」
「なにその反応」
食べにくいからやめて、と口にして彼女はコーンフレークを口に入れる。
「普通においしいけど」
「えー……」
「食わず嫌い的な感じでしょ?」
うーん、どちらかと言えば飲まず嫌いかな。
でもコーンフレークをそのままで食べるのも嫌なので、言われた通り豆乳を注ぐ。
小さじ一杯程度の量だけ掬って、恐る恐る口の中に入れるてみる。
風味をちゃんと味わってから、ゆっくり飲み込んだ。
「うん、普通に無理だね」
「『意外といけるかも』って言う流れだと思ったんだけど」
「無理なものは無理だった」
とりあえず、副菜のサラダから手を付けることにしよう。
水を口に含んで口直しをしてから、コーンフレークを隅に避けた。




