第55話 さっきの、どういうつもり?
「さっきの、どういうつもり?」
両親が席を立ち、ふたりだけで話をする時間ができた。
すると彼女は、不満そうな表情でこちらを見てきた。
「さっきって?」
「私が将来の話してるときさ、身体叩いてきたじゃん」
なんでそんなことしたわけ? と彼女。
「普通に『頑張って』って意味だったけど」
「いや、そういう感じじゃなかったじゃん」
「『余計なこと言うな』みたいな叩き方だったって」と言って、彼女は腕を組む。
そんなつもりはなかったけどね。
「まあ、普通にうまくいったから良かったじゃん」
「そうだけどさぁ……」
ああいうのマジでやめて、と彼女は呟いた。
緊張している彼女は、あれにびっくりしたらしい。
それは普通にごめん。
向こうの部屋に視線を向けてから、「ていうかさ」と彼女は声を潜める。
「やっぱり君の親もちゃんとした服装だったじゃん」
「……そうだったね」
小さな声で応える。
玄関を開けた瞬間に、自分の判断ミスを理解した。
親に小言を言われている間、彼女はずっと口元を押さえていた。
空気読んでるみたいだったけど、笑いを堪えてるのバレバレだったからね?
「でもさ、ほら、普通にうまくいったからよかったじゃん」
彼女はそう言いながら、軽くこちらの肩を叩いた。
さっき自分が言ったヤツじゃん。
飲み物を口にしたタイミングで、両親が戻ってきた。
すぐ彼女が姿勢を正したので、それに倣って座り直した。




