第51話 いや、流石に無理でしょ
「君の親、なんか好きな食べ物ってある?」
「あーどうなんだろ」
あったような気がするけど、詳しくは覚えていない。
「なんで?」
「実家に行くときに手土産とか持っていこうかなって」
「別に手ぶらでも大丈夫だと思うけど」
いや、流石に無理でしょ、と彼女。
「手土産なしで行くのはキツイって」
「そんなもん?」
「そんなもんだよ」
実家に行くってそういうことだから、と彼女は呟いた。
「挨拶するだけだよね?」
「挨拶するだけだよ」
「なんかこう、こっちが仰々しい感じで来たら親もびっくりすると思うんだけど」
親には「彼女を連れて行く」とだけ伝えている。
うちの親がそこまで気合を入れているとは思えない。
「じゃあせめて、軽いお菓子とかでも持って行かせて」
「それくらいなら別にいいよ」
両親の好きそうなお菓子を何個か教えた。
「君ってどっち似なの?」
「顔は間違いなく母親似だね」
「性格は?」
「まあ、父親似って言われることが多かったかな」
自分では良く分からないけど、周りはそう言っていた。
「それは会うのが楽しみだね」
「そんなハードル上げられても困るんだけど」
そんな期待されても困る。
「とりあえず、明後日に駅に集合ってことでいい?」
「いいよ」
「じゃあ明後日ね」
「うん」
そこで話を切り上げた。




