第48話 もし君が強面だったら絶対話しかけなかった
「そういえばナンパされたことある?」
「私はないかな」
なんで? と彼女に尋ねられた。
「なんか友だちの彼女がナンパされたって話を聞いてさ」
「マジ?」
私の友だちも最近ナンパされたらしくって、と彼女。
この周辺で増えてるのかな。
「実際にナンパされた人の話でも聞いてみようと思ったんだけど」
「体験談はないね」
されたことないけどさ、と彼女は呟いてから続けた。
「私の友だち、高校生にナンパされたらしいよ」
「へぇ」
かなりチャレンジャーな高校生だね。
「どんな感じで声かけられるの?」
「詳しくは聞いてないけど、『これから予定あります?』って聞かれたんだって」
「ベタだね」
何も予定が無くて外に出る人は、最近少ないと思う。
「それで?」
「『普通に彼氏待ってるんで』って言ったら逃げて行ったって」
「そっか」
「ていうか、この話を聞いて何になるの?」
君、ナンパするつもり? と訝しむ目線を投げられた。
「ナンパしてそうに見える?」
「いや、むしろされる側っぽいかな」
むしろ?
「なんか君、悪いこと考えてそうな子について行きそうっていうか」
「そんな経験ないけどね」
「でもさ、外国人に話しかけられることはあるじゃん」
「一回だけだよ?」
彼女と外出しているときに、背の高い外国人の女性に話しかけられたのだ。
その時はスマホの翻訳機能を使って何とか乗り切った。
あの人はとてもいい人だった。
翻訳機能で映る『ありがとうございます』の文字を見て少し感動した。
「なんだろ、声をかけやすい顔してるんだよねー君って」
話しかけても大丈夫そうな雰囲気があるって言うか、と彼女。
「だからあのとき話しかけてきたの?」
「あのときって初対面のとき?」
そうそう、頷く。
「まあそれもかなり大きかったよねー」
もし君が強面だったら絶対話しかけなかったし、と呟いた。
「ならまあいいじゃん」
「いや、君が逆ナンされるのは良くないんだけど……」
一緒に外出たときは大丈夫でしょ、と彼女に応えた。




