第47話 私は高校生時代に諦めた
「足組むのやめた方が良いよ」
ご飯を食べているとき、隣に座っていた彼女が口を開いた。
「骨盤が歪むっていうじゃん」
「らしいね」
歩くときの姿勢がおかしくなる、という話も聞いたことがある。
「他にも血流が悪くなったりとか、腰痛の原因になったりするらしいし」
「へーそれは結構怖いかも」
まだそこまで違和感を感じていないが、長い年月を積み重ねれば深刻な問題になる可能性もあり得る。
「だから、足を組むのは今すぐにやめるべきだよ」
彼女は背中に触れながら言ってきた。
「それはネタで言ってるの?」
「そんなわけないじゃん」
本当に君の健康を思って言ってるわけ、と腕を組んで応える彼女。
ちらっと彼女の足元を見て続ける。
「現在進行形で足組んでる人に『足組むのやめろ』って言われても、説得力がないっていうか」
そう、彼女は足を組みながら『足を組むのは健康に悪いよ』と言ってきた。
「やめれるんだったらやめた方が良いよ、って話」
私は高校生時代に諦めた、と彼女は呟いた。
開き直るの早すぎない?
「どうやってやめればいいの?」
「私は知らないけど」
効果的なやり方があるんだったら教えて欲しいくらい、と彼女。
「ちなみに高校時代はどうしてたの?」
ひとまず、彼女が高校時代に失敗した方法を聞いてみることにした。
「冬の頃、高校にひざ掛けを持ってきてる人とかいなかった?」
「あー結構いたね」
特に女子が多かった記憶がある。
「そのブランケットを使って足をぐるぐる巻きにしたんだよ」
休み時間に足にブランケットを巻いて、授業中は脱いだら目立つから強制的に直すやり方を選んだらしい。
当時の彼女が本当に足を組むことを何とかしたかったのがうかがえる。
「でも45分の授業が終わることには頭がおかしくなったね」
先生の説明とか全然耳に入ってこなかったし、と彼女。
「だから私は、足組みを矯正することを放棄したってわけ」
「そっか」
まさか彼女がそれほど足組みジャンキーだったとは。
「実際、毎回同じ足で組まなければそこまで深刻なことにはならないらしいんだけどね」
「そうなんだ」
「でも、足を組むよりは組まない方が絶対良いから」
治せるんだったら治した方が良いよ、と彼女は付け加えた。
「じゃあわざわざ治す必要ないじゃん」と言う前に先手を打たれてしまった。
「……やっぱそうだよねー」
そう呟いてから、いつも通り足を組み替えた。




