第43話 君はいつまで反抗期拗らせてたの?
「最近辛い食べ物にハマってるんだよねー」
「そうなんだ」
なんか良いのないの? と彼女に尋ねる。
今は昼ご飯を食べた帰り。
家から近いスーパーに立ち寄った。
「私は調味料で辛さを調整する感じだね」
「てことは、見境なく調味料をかけて辛さを楽しんでるってこと?」
見境なくってほどではないけど、と彼女は軽く否定した。
色んなものに調味料をかけている自覚はあるらしい。
調味料コーナーに足を運んで彼女おすすめの商品を探しているとき、彼女は別の方向に視線を向けた。
視線の先にいるのは、中学生か高校生くらいの男の子と母親らしき女性。
男の子は母親から少し距離を取って歩いていた。
男の子と母親は店の奥に進んでいき、視線の外に消えていった。
その後、彼女は調味料を手に取ってこちらに見せてきた。
「私のおすすめはコレね」
「見るからに辛そうなパッケージだけど」
「見た目ほど辛くはないかな」
それなら、と買い物かごにその商品を入れた。
「他に買いたいのある?」
「今のところはないね」
じゃあ精算しようか、という彼女の言葉を合図にレジに向かった。
セルフレジで精算を済ませて外に出る。
「さっき男の子いたじゃん」
「いたね」
おそらく、調味料コーナーで見た男の子のことだろう。
「反抗期です、って雰囲気めっちゃ出してなかった?」
「あれは間違いなく反抗期だね」
昔の自分を見ているかのようだった。
中高生の頃、家族と外出するときは親から少し離れて歩いていた。
なぜそんなことしていたか覚えていないけど、何となく恥ずかしかったのだろう。
「君って反抗期あった?」
「もちろん」
どんな感じだったの? とさらに踏み込んで尋ねられた。
腕を組んで昔のことを思い出す。
「ああいう年頃って勝手に自分の部屋を掃除して欲しくないじゃん」
「うん」
「だから、勝手に掃除機かけられたら不機嫌になったりしたかな」
何か聞かれても、めちゃくちゃ仏頂面で答えていた気がする。
解像度高いね、と言って彼女は笑みを零した。
「そう言う感じの経験ないの?」
なんとなく、自分だけ話をするのが恥ずかしかったので彼女の聞き返す。
反抗期の経験って普通話したくないでしょ。
「まあ、私も君と似たような感じだったかな」
気に障ること言われたら全部無視してたし、と彼女。
今の彼女にそんなことされたら泣くね。
無視されるのは文句を言われるよりキツイ。
「それっていつくらい?」
「まあ中一とか?」
高校生になる頃にはもう普通に戻ってたかな、と補足した。
「反抗期終わるの早くない?」
「そうかな」
「大分早いと思うよ」
「じゃあ君はいつまで反抗期拗らせてたの?」
別に拗らせてた、ってほどではないけど。
「高二とかだったかな」
「それってなんかきっかけあるの?」
「なかったと思う」
いつの間にか反抗期が終わっていたような気がする。
「親との感動的な出来事で改心した、とかじゃないんだ」
「そんなことめったに起らないでしょ」
そうだけどさー、と少し不満そうな彼女。
「え、じゃあ感動的なエピソードとかあるの?」
「私もないけど」
でも、と言って彼女は続ける。
「エンタメとして面白いんだよ」
「反抗期のときの話ってエンタメになる?」
「なるなる」
友だちの反抗期の話を聞いたことがあるそうで、それがかなり面白かったらしい。
「じゃあ今から嘘100パーセントの反抗期の話でもしようかな」
「いいね」
純度100パーセントじゃん、と彼女。
その後は完全に嘘の反抗期の話をしながら家に帰った。




