第41話 いや、本当に泣いてるのかなって
「君って映画に感情移入するタイプ?」
映画を見ながらこちらを見ないで彼女は尋ねてきた。
「かなりするね」
「感動して泣く感じ?」
「うん」
めっちゃ泣くよ、と補足した。
前までは泣かなかったけど、最近は何を見ても泣くようになった。
特に子どもが頑張る系のドキュメンタリーには本当に弱い。
涙もろくなってきたのかな。
「私は全然なんだよね」
「そういえば前に映画見に行ったとき、ずっと真顔じゃなかったっけ?」
真顔って程ではないけど、と彼女は軽く否定する。
彼女が映画を見て泣く姿はあまりイメージができない。
泣かなそうな雰囲気をしてるっていうか。
「そもそも感情移入するイメージないかも」
「え、私けっこうする方だけど?」
「マジ?」
感動するけど泣くほどではないっていう感じらしい。
「そのさ、私に対するイメージ何とかならない?」
感情移入しなそうって普通にショックなんだけど、と彼女。
「でもめちゃくちゃ笑ったり泣いたりする感じじゃないじゃん」
「それはそうだけどさー」
彼女は不満そう。
しばらくは黙って映画を見続ける。
感動するシーンに入った。
少ししてから、彼女はこちらをちらっと見る。
「……なに?」
「いや、本当に泣いてるのかなって」
泣いてるのを人に見られるのは少し恥ずかしい。
何とか泣かないように我慢した。
しかし耐えきれずに涙が零れる。
その様子を確認してから彼女はティッシュを取った。
「ほんとに感情移入するんだね」
「まあね」
彼女からティッシュを受けとりつつ、なるべく平静を装って応えた。
すぐに涙は引いて元通りになる。
映画終了。
「いやあ、普通に面白かったね」
「うん」
本当に良い作品だった。
「今からどうする?」
「外出しても良いよ」
正午過ぎだからご飯を食べに行きたい。
「まあそれはちょっと待ってから行こうかな」
「なんで?」
「だって君、めっちゃ泣いた後の顔してるじゃん」
流石にその状態で外歩けないって、と彼女は笑った。
自分ではいつも通りだと思ったけど、周りからみるとそうではないらしい。
1時間ほど時間を潰して目の腫れが引いた後、昼ご飯を食べるために外に出かけた。




