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重めの彼女とお話するだけ  作者: 夏野恵


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第38話 君の指噛んでるのもめっちゃ気持ちいんだけど……

ごめんなんだけどさ、と言って彼女は話始めた。


「今ちょっと時間ある?」

「あるけど」


スマホから顔を上げて応える。


「いやちょっと頼みにくいことなんだけど……」

「全然いいよ」


なに? と尋ねる。


「ちょっと好奇心で、って感じで……」


彼女の目は右に左に泳いでいた。


なにこれ、どういう状況?

彼女がもにょもにょするのは珍しい。


しばらくしてから、ついに彼女が口にした。


「私の指、嚙んでくれない?」


彼女はおずおずと手をこっちに出してきた。


「……え?」

「嫌なら別にいいんだけどさ」


すぐに手を引こうとするので、一旦掴んだ。


「ちょっと待って、どういうこと?」


後で頼んだ方がよかったかな、と呟いてから彼女が話始めた。


「自分の指、噛むの気持ちよくってさ」

「まあ、うん」

「君にもちょっと噛んでもらいたいなって……」


恥ずかしそうな顔で言うから、なんか恥ずかしいことを聞いている気分になる。

でも指を噛むのってそんな気持ち良くなるのかな。


「いつからそれやってるの?」

「一か月くらい前から……」

「週何回?」

「毎日……」


俯きながら彼女は応えた。

あれ、これ何の話だっけ?


「まあ別に良いけどさ」


どういう風に嚙んだらいいの? と尋ねる。

ありがと、と応えてから彼女が試しにやってくれた。


「こういう感じで、第二関節のところを噛んで欲しい」


彼女は自身の右手の人差し指を噛んだ。

なんとも言えず、彼女の様子を眺める。


「……そんな真顔で見られると恥ずかしいんだけど」

「あ、ごめん」


状況が飲み込めず、思考停止状態になっていた。


「じゃ、おねがい」


彼女はもう一度手を差し伸べた。

丸みをおびた可愛らしい手だ。


同じところを言われた通り優しく噛んでみた。


「もうちょっと強く噛んで」


頷いてもう少し力を込める。


「もうちょっと」


痛くないのかな、と思いつつ強めに噛んでみた。


「……」


彼女が黙っていたので、ちらっと表情を確認してみた。


蕩けた表情をしていた。


え、指噛まれただけでそんな気持ちよくなれるの?


「……ありがと」


彼女は手を引いてすぐに口を開く。


「君の指も噛んであげようか?」


彼女は手を口元に持っていって尋ねる。

そんなに気持ちがいいならやってもらおうかな。


「軽く噛んでみて」

「うん」


彼女は薬指を口の中に入れた。


「ほお(どう)?」

「うーん……」


歯に手が当たってるってだけって感じ。

気持ちいとは別に思わなかった。


「ごめんもういいよ」


離してもらおうと思ったが、彼女は指を咥えたまま。

スッポンみたいだな、と思いながら彼女が指を噛んでいる様子を眺めていた。


なにこの時間という言葉は何とか飲む。


しばらくして口を離した。

彼女は口を拭いてから呟く。


「君の指噛んでるのもめっちゃ気持ちいんだけど……」


噛んでるだけで気持ちよさって感じるの?



彼女のフェチを発見した今日だった。

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