第37話 合鍵渡すのってそんな軽い気持ちでできるの?
「じゃー鍵開けるからちょっと待って」
「オッケー」
鞄の中から自宅の鍵を探す。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「鍵、ないかも」
「えっ?」
マジでないの? と彼女。
少なくとも、いつも自分が入れている場所にはなかった。
「ポケットとか入れてないの?」
「いつも鞄の中のこのポケットに入れてるんだけど……」
ちょっと見せて、と彼女。
「そこにはなさそうだね」
今日は結構いい雰囲気だったのに、ここに来て鍵をなくしてしまうとは。
「とりあえず合鍵で入ろうか」
彼女はキーケースの中にある合鍵を取り出した。
難なく開錠。
家に入って玄関の電気をつける。
助かった、と呟きながら自分の鞄から鍵を探す。
普通に見つかった。
「鍵とかちゃんと管理しときなよ」
「そうだね」
ごめんごめん、と言いながらふと疑問に思った。
「そういえば合鍵って渡してたっけ?」
「かなり前に渡されたよ」
何月何日に、と補足する彼女。
その日は彼女が家に来てたから、流れで渡したのかも。
「合鍵を渡してたの、忘れることある?」
防犯意識とか大丈夫? と真顔で尋ねられた。
少なくとも、彼女以外には渡していないから大丈夫だと思う。
しかし彼女にとって、合鍵を受け取ったことはそれ以上に意味があったらしい。
「合鍵渡すのってそんな軽い気持ちでできるの?」
けっこう重めの意味があると思うんだけど、と彼女。
正直言って当時のことはあまり覚えていない。
ただスマホの検索履歴で『合鍵 作り方』というのが何個かあったから、色々考えていたかも。
「でもその合鍵、全然使ってないよね」
「私が合鍵を持ってる前提の話が一回も出なかったし」
まさか本当に忘れてるとは思わなかった、と本気で驚いた様子だった。
ともかく、彼女が合鍵を持っているということがわかってよかった。
鍵をいつも通りの場所に置いて、リビングに入った。




