第35話 私、君の両親に会いたいんだけど
「へぇー写真で見たより結構いい感じじゃん」
カップルシートを見て呟く彼女。
青緑色の丸形のシートでクッションが何個か並べられていた。
「とりあえず座ろっか」
「うん」
腰を下ろしてシートの表面をなでる。
とても触り心地が良かった。
「君ってプラネタリウム来たの何回目?」
「3回くらいかな」
小学校と中学校の行事で何回か来たかな、と小さな声で付け加えた。
人はそこまで多くないけど、一応周りには気を使って話す。
「じゃあもうプラネタリウムマスターってわけだ」
「3回くらいでマスターは早すぎるけどね」
もっと来てる人だってたくさんいると思う。
「私は1回しか来たことないかも」
家族と一緒に来たらしい。
「そういえば一人っ子だっけ?」
「うん」
君はどうなの、と聞き返された。
「2歳の妹がいるらしい」
「らしい?」
なんで「らしい」なの、と再び尋ねられた。
「しばらくの間、実家帰ってないんだよね」
「へぇ……」
なんか変な雰囲気になってしまった。
「いや、普通に予定が合わないってだけだから」
「だろうね」
君って家族想いっぽい雰囲気は出してるから、と彼女。
家族想いっぽい雰囲気ってなに?
彼女が言うように、自分は家族想いなほうだと思う。
ただ毎年実家に帰るってほどではない。
今のところ、それが数年間続いている。
しばらく帰っていないと、帰ることに腰が重くなってしまっているのだ。
「一回実家に行って親の顔見ようかなとは思ってるんだけどね」
妹もいるし、と付け加える。
「なら帰るきっかけ作ってあげようか?」
「きっかけを作るの?」
彼女は頷く。
プラネタリウムの上映中に注意のアナウンスが始まったが、彼女は気にせずに口を開いた。
「私、君の両親に会いたいんだけど」
どうかな、とこちらに視線を向けてきた。
「いいよ」
「よかった」
彼女は手を滑り込ませてきた。
恋人つなぎをしながらアナウンスを聞く。
「いつ頃行く?」
「まあお盆くらいかな」
詳しい日にちが分かったらあとで連絡して、と彼女。
オッケーと頷くのとほぼ同時に、プラネタリウムの上映が開始した。




