第32話 なに勝手にノイズキャンセリングしてるわけ?
「・・・って話なんだけどさ」
君、どう思う? と尋ねられた。
「あ、ごめん、なんだっけ?」
「マジでさ・・・」
ちょっと逆向いて逆、と彼女。
「なんで片耳だけワイヤレスイヤホンつけてるわけ?」
そう言いながら、彼女はワイヤレスイヤホンを外す。
「配信やっててさ・・・」
「誰の配信?」
「ミューっていう人」
ちょっと確認するから、と彼女は自分のスマホで検索し始めた。
「あー今配信やってるね」
「これが本当にレアでさ」
年一くらいだったからどうしても、と言い訳を呟く。
「アーカイブ残さないタイプの人なの?」
「わからない」
ごめん、そこまで確認してない、と付け加える。
「ふーん・・・」
彼女はしばらくの間、黙ってミューの配信を聞き続ける。
「年一なのはまあそうなんだねって感じ」
配信を消して呟く。
とりあえず頷いておく。
「でもさ、普通にありえなくない?」
今、私がいるわけじゃん、と彼女。
本当にその通り。
全面的に悪いのは自分なのは間違いない。
「・・・」
「なに黙ってんの?」
「おっしゃる通りだなって」
正論すぎてぐうの音も出ない。
「ていうか、これまでにも何度かあるよね」
今まで黙ってたけどさ、と彼女は呟いて続ける。
「出掛けるときに電車の中入った瞬間にワイヤレスイヤフォンつけてたよね?」
「・・・癖で」
「いや、確かに電車の中で話すことほとんどないよ? 」
「うん」
「でもさ、たまに話したりするわけじゃん」
なに勝手にノイズキャンセリングしてるわけ? 私ってノイズだっけ? と彼女は腕を組んだ。
「もうなんか全部ごめん」
「その大は小を兼ねるみたいな謝り方も嫌い」
嫌いってはっきり言われたのは久しぶりかも。
「これから気を付けるから」
「気を付けるだけでしょ」
「・・・」
「ほら」
マジでいい加減にして、と呟く。
「私が片耳イヤフォンつけながら話してたらどう思う?」
「ちょっと嫌かな」
「ちょっと?」
「いや、めっちゃ嫌かも」
人がして欲しくないことはするなって話、小学生でもわかると思うんだけど、と付け加えた。
「じゃあ、小学生未満ってことで許してもらえませんかね・・・」
「そっちで帳尻合わせるの?」
私、子どもと付き合ってるつもりじゃないんだけど、と彼女は零した。
数十分後にやっと許してもらえました。
本当にすいませんでした。




