第29話 だから、血管派閥ではないね
「なんでずっと手見てるの?」
彼女がじっと手を見ていたので気になった。
今はスマホを触っているだけ。
何もおかしなことはしてないはず。
「え、指見てるだけだけど」
だからなに? と当たり前のように返された。
「指見てなにになるの?」
「それ、アニメとか漫画のキャラが好きな人に『結局二次元じゃん(笑)』って言ってるのと同じだよ」
(笑)までは思ってなかったけど。
でも彼女にはそう映ったらしい。
彼女は続けた。
「君の指、けっこう性癖に刺さるかも」
あれか、指フェチみたいな。
それは聞いたことある。
「ちょっと手出してみて」と言われたので、素直に手を差し出す。
「細長い指っていいよねー」
そう言いながら彼女は指先を撫でる。
「初めて言われたかも」
「でもこの指を見てどんな指ですか? って聞いたら、皆『細長い指ですね』って答えると思うけど」
普通の人は「普通の指ですね」って答えそう。
「爪ツヤがあるのもポイント高いね」
それはどうも、と答えつつ彼女を見る。
真剣に指を見られているのはどうも落ち着かない。
「もういい?」
「まだ」
ちょっと待って、と彼女は呟く。
「ちょっと手をパーにしてくれない?」
「パー?」
こんな感じで、と彼女が手を開く。
「・・・なに?」
彼女の手を見ていたら尋ねられた。
「なんか可愛い手してるね」
「絶対悪い意味じゃん」
そんなつもりはないけど。
彼女の手は柔らかくて丸い印象。
子どもの手みたい、っていったら悪い意味になるだろうからその言葉は飲み込む。
「とりあえずパーにして」と言われたので、素直に手を開く。
「コレだよコレ」
これが一番好き、と呟く彼女。
「手開いたらさ、骨が見えるじゃん」
「まぁ、浮き出て入るかな」
自分の手を見ながら答える。
「それがなんかもう・・・いいよね」
上手く言語化できていなかった。
そんなに好きなの?
しばらく彼女の様子を眺めてから口を開いた。
「どこかで聞いたことあるのが、血管が浮き出てるのが好きって話」
「あーそれもあるね」
もちろん好きなんだけど、といって彼女は続ける。
「君の手って白いじゃん」
「まあ白めではあるかな」
「静脈の青さスケスケなのね」
「うん」
たしかに、手のどこに静脈が流れているかすぐにわかるくらいに自分の手は白い。
「そうなってくると、ちょっと怖いかな」
「怖い?」
周りからの刺激に弱そう、と言われてしまった。
この手からそんなナイーブな印象受ける?
「だから、血管派閥ではないね」
「そんな派閥あるの?」
あるある、と頷く彼女。
指フェチにも複雑な組織環境があると知った今日だった。




