第25話 君、さっき植物だって生きてるって話してなかった?
「そういえば君、ペットとか飼わないの?」
「ペット?」
うん、と彼女は頷く。
「いきなりどうして?」
「なんとなくね」
ちょっと気になって、と彼女。
「子供のときは犬を飼ってたね」
「お、犬」
ちょっとテンション上がった?
「でも、犬に手を噛まれて怖くなったって感じかな」
「まさに『飼い犬に手を嚙まれる』だね」
ほんとだよ、と呟く。
容赦なく嚙んできてびっくりした。
せめて甘噛みでおねがい。
「じゃあ犬はナシって感じ?」
「まあね」
すでにペットを飼う前提で話が進んでいるような気がするが、一旦気にしない。
「猫はどうなの?」
「好きだけど、自分で飼うとなるとちょっと違うかな」
癒されるレベルだったら動画とかで間に合ってる。
まあ私、猫アレルギーだからアレなんだけど、と彼女。
「やっぱなつきやすいのがいいよねー」
彼女はスマホで調べ始めた。
「なんでペットの話になったの?」
「んー?」
質問には答えず、彼女は記事を流し読みしている。
「ハムスターが一位らしいよ」
「ハムスターね」
スマホを受け取って、魅力が書かれた箇所を見る。
見ているだけで癒されるらしい。
実際、癒されそう。
「へぇ、いいね」
「いいかな?!」
彼女のテンション、再び上昇。
「え、なに、飼いたいの?」
「飼いたい」
できれば君の家で、と彼女。
「そうなってくると話は変わるよねー」
「なんで?」
「まずは自分をちゃんとお世話できるようにならないといけないし」
「あー・・・」
そうかも、と頷いた。
まさかこんな情けない理由で説得することになろうとは。
「まあ、私の家で飼ってもいいんだけど」
でも君もちゃんと週一のペースで家に来ることが条件になるかな、と彼女。
毎週確実に、というのはちょっと厳しい。
「なんだろ、私だけじゃなくって、君にもちゃんと参加してもらいたいんだよね」
ペットのお世話に、と呟く。
「自分で言うのもアレだけど、そうなるくらいなら飼わないっていう選択を取るかな」
「・・・だよねー」
知ってたけど、と言って彼女はスマホを閉じた。
わかりやすくテンション落ちたな。
ちょっとマズいと思い、自分でも簡単に調べてみた。
「調べてる感じ、コケを育てるのがお世話として最低限で済みそう」
「え、コケ?」
水と適度な光さえあれば大丈夫らしい。
「それってペットって言えるの?」
「植物だって生きてるよ」
「・・・いや、そういう話をしてるんじゃなくって」
でもコレとかすごくない? とスマホで苔テラリウムの画像を何枚か見せた。
「意外と綺麗じゃん」
「でしょ?」
手のひらサイズの自然というところに魅力を感じる。
「じゃあ苔テラリウム、育てることにする?」
「えー水やりしないといけないのか・・・」
「君、さっき植物だって生きてるって話してなかった?」
それくらいちゃんとしてよ、と彼女。
結局、苔テラリウムの話は後回しになった。




