第23話 まあシンプルに考えれば『私も好き』とかじゃない?
「好きって言って」
「好き」
「もう一回」
「好き」
「もう一回」
「好き」
「もう一回」
「好き」
『好き』と何度も繰り返し口にする。
「・・・なんか、言わせてる感じがしてあんまなんだけど」
「でも言って欲しいんでしょ?」
それはそうだけど、と彼女は呟く。
「多分アレだね、『好き』っていうフレーズが供給過多になって、価値が下がってるって感じ」
「雰囲気壊すようなこと言わないで」
今、そういう感じじゃなかったじゃん、と彼女。
「でも実際さ、毎日『好き』って言う人と1年に一回しか『好き』って言わない人だったら、1年に一回しか『好き』って言わない人の方が嬉しくない?」
「その初回の『好き』が来る前に別れるから意味ない」
切れ味抜群。
「じゃあ毎日『好き』って言って欲しい感じ?」
「うん」
すぐに彼女は頷く。
「毎日言ってたらテンプレみたいにならない?」
今の日本人で本心から『おはようございます』って言ってる人なんていないよ、と付け加えた。
「『おはようございます』もコミュニケーションの一つでしょ」
とにかく、口にすることが大事なの、と彼女は呟いた。
「『好き』から始まるコミュニケーション?」
「うん」
「それってどうなるの?」
「まあシンプルに考えれば『私も好き』とかじゃない?」
逆に『私は嫌いだけど』って言われたい? と聞き返された。
それはキツイ。
「じゃあさ、初めて『好き』って言ったときと、今『好き』って言ったときだとどっちが嬉しかった?」
「それは絶対最初」
ていうか、君が自発的に『好き』って言ってくれないのが問題だと思うんだけど、と彼女。
論点を逸らす前に戻されてしまった。
こうなったらどうしようもない。
なるべく自発的に言うように意識しつつ口を開いた。
「本当に好きだよ」
「私も」
すぐに彼女も応えた。




