第22話 こういうのって、君からしたらあんまりって感じ?
「そういえばこの後どうするの?」
食事が終わったあと、何気なく彼女に聞いた。
「え、何かすることあるの?」
「いや、別にないけど・・・」
首を横に振る。
「いや明日って平日じゃん」
そろそろ帰った方が良いんじゃないかなって、と付け加える。
「なに、私に帰ってほしいの?」
「そう言うことじゃなくって」
「じゃあどういうこと?」
なんか分からないけど、彼女のギアが上がった。
「明日は平日だよね?」
「そうだよ?」
頷く彼女。
「だから今日は早めに帰った方が良いんじゃないの?」
「私に早く帰ってほしいって?」
「・・・あれ、説明間違ってる?」
話が噛み合っていない気がする。
「私、今日は泊まるつもりで来たんだけど」
「それは別に構わないけど」
構わないけど、なに? と尋ねられた。
「明日は大丈夫なのかなって」
本当にそれだけ、と付け加える。
「明日のことは明日考えればいいでしょ」
とりあえず今日は泊まらせて、と呟く。
前にそれ言ったら「計画性のなさが出てる」って言われた気がするんだけど。
まあ言う人にもよるか。
「着替えとかは大丈夫?」
「大丈夫」
ちゃんと持ってきたから、と彼女。
計画性あるね。
「じゃあ、皿洗っとくからお風呂入ってきていいよ」
「そうさせてもらおうかな」
じゃ、お先に、と呟いて彼女は浴室に言った。
「・・・皿洗いとか、こういうとき以外ほとんどしないよなぁ」
食器は基本的に装飾用。
棚に閉じ込めておくのが一番の使い方だと思う。
「あ、そういえば連絡しとかないと」
スマホを取り出して友達に連絡する。
「『今日は急遽予定入ったからゲームできないかも』っと・・・」
すぐに送信。
了解、と淡泊な返信が来たので、安心して皿洗いを始める。
そして皿洗いが終わると、ソファに腰かけ時間を潰す。
「ごめん、次入っていいよ」
後ろから彼女の声がしたので振り返る。
「あれ、そのトレーナーって・・・」
「うん」
君が前にくれたヤツ、と呟いた。
「なんかダボダボじゃない?」
「オーバーサイズってなんか可愛くない?」
可愛いけど、自分の着古したスウェットを着られるとなんかドキドキする。
「あ、アレか、彼シャツみたいな」
「シャツではないけどね」
まぁ似たようなものなんじゃない? と彼女。
「じゃあちょっとお風呂入ってくるから」
そう言ってソファから立ち上がる。
「・・・いや、別にいいんだけどね?」
彼女は部屋から出る直前に口を開いた。
「なに?」
「いや、別にいいんだけど・・・」
こちらに視線を向ける。
「こういうのって、君からしたらあんまりって感じ?」
「こういうのって?」
わざとやってるの? と彼女は言って続ける。
「その、彼シャツが・・・」
聞こえるかどうかくらいの声だった。
ちょっと待って。
何を言いたいんだ?
「いや、普通に可愛いなって思うけど」
「それはそうだけど・・・」
そうじゃなくって、と呟く。
「なんだろう、普通にお風呂に行けるっていうの?」
それがどうしてなのかなって、と付け加えた。
「行かない方がいい感じ?」
「いや、行ってもいいけど・・・」
マズい。
彼女が彼女っぽいこと言ってる。
普通に機嫌が悪いのは大丈夫なんだけど(本当に大丈夫かと言われると・・・まぁ、ちょっと考える時間が欲しい)、こういうちゃんと彼女らしいことを言われるときは、本心に気づかないといけないような雰囲気を感じる。
とりあえず、彼女がお風呂に出てからの会話を思い出す。
「とりあえず、その彼シャツはマジで好き」
「それはまぁ、うん」
ありがと、と彼女。
「で、今から『彼シャツ可愛かったな』って思いながらお風呂に向かうつもり」
「・・・うん」
なんか間があったな。
いつも答えるときの間を気にする彼女が間を空けているということはそういうことだ。
頷かざるを得ない状況だから、一応頷いているという感じ。
自分と全く同じ。
彼女はこちらに視線を向けていた。
「あーごめん、なんかしちゃった?」
「いや、してないけど・・・」
してないの?
じゃあこの雰囲気はなに?
いつもだったらもっとキレ気味で教えてくれるんだけど、こう曖昧な空気になると教えてもらうように頼むのが非常に難しい。
「ソファに座っても良い?」
「うん」
彼女も一緒にソファに腰を下ろす。
いつもより距離が近い。
やっと気が付いた。
「一旦、お風呂に入ってくるから」
一旦ね、と繰り返す。
「・・・オッケー」
別にいいけど早くしてね、と彼女は呟いた。
『別にいいけど早くして』ってどういうこと?
とりあえず、さっさとシャワーを浴びようと思い浴室に早歩きで向かった。




