第10話 ハリネズミのジレンマで言えばまだ全然寒いくらいだね
「ハリネズミのジレンマって聞いたことある?」
「なにそれ?」
ヤマアラシのジレンマなら聞いたことあるんだけど、と彼女は応える。
呼び方が違うだけで同じ意味なんじゃないかな。
「意味とか知ってる?」
「本音を言いたいけど、言ったら相手が傷つくんじゃないかって思って程よい距離感で関わることは難しい、みたいな意味だったと思う」
ちゃんと知ってるんだね。
で、それが何なの? と彼女は尋ねる。
「ちゃんと本音で言ってくれてる?」
「私が?」
ゆっくり頷いた。
「半分は本音だけど」
「残り半分は?」
それを言ったらね、と濁す。
「じゃあ君は?」
「言ってることはほとんど本音だね」
「言ってない本音もあるって感じ?」
「まぁね」
そんなものでしょ、と彼女は呟いた。
「で、なんでそんなこといきなり聞いてきたわけ?」
学っぽいことなんて普通聞いてこないじゃん、と付け加える。
「ちゃんと程よい距離感でいれてるかなって」
「普通そんなこと聞く?」
そういうのは自分で考えたりするものだと思うけど、と応える。
「やっぱ心配だからさ」
「あー・・・」
まぁ、そういうこと考えるかもね、と呟いた。
「で、どうかな」
彼女に質問する。
「ハリネズミのジレンマで言えばまだ全然寒いくらいだね」
もっと近づいてもらわないと、と付け加える。
「ていうかさ」
「なに?」
「私、ハリネズミじゃないんだけど」
あくまでも例えだし。
「君の針で痛くなったらその時伝えるから、できるだけ近づいてくれない?」
「それは助かる」
そういって彼女に数センチ近づいた。




