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教育者×フライパンスキルで、ゆるっと領地再生します!?  作者: 宙子
行商の道を拓く

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シマウマ、それともパンダ?

 

 3度目の新月の日から、2カ月が過ぎた。


 派遣されたあの場所で、人間が魔に転化する被害は、かなり抑えられただろうということだ。

 魔物に傷つけられるのを100%防ぐことはできなかったけれど。


 これまでは、あの恐ろしい現象にまったく対処していなかったという。

 

 現象の起きる場所は6年ごとに変化する。

 突き止めるのがとても難しく、どの程度の厄災が待ち受けるかも分からないから、対策部隊の編成も困難を極めていた。


 数百人単位で人口が減少していたという調査結果もでているんだとか。

 それと比較すると、かなりの輝かしい成果といえる。



 黒い影として彷徨っていた人々の心身の傷は、優れた白魔導士や教会の僧侶による治療が進んでいる。


 行き場のない人々は、働き口や新しい家を世話して貰えるようだ。



 調査団によると、円形の星空を映し出す鏡面はあれから1度も現れていない。湿地帯にしては他よりちょっと硬いだけの地面だ。

 上空も、ちゃんと曇ったり晴れたりしている。



 新月の夜、アイリーが泣きながら手を握った男は、やはり彼女の長年の親友だった。



「ベルクだよ、名前は」


 アイリーは、詳しく話してくれた。


 幼なじみのベルクに誘われ、アイリーはギルドへ登録。ちょうど仲間を探していた回復役の女性と3人で組み、ときには魔物と戦い、依頼をこなすことで生活していた。


 けれど、6年前の新月の前日、力を増した魔物たちによって回復役の女性が大ケガを負った。


「とにかく魔物の強さが異常だった。それにあの状況、誰のせいでもない。でもベルクは……前衛として、守れなかった責任を感じたんだ。彼女を背負う覚悟で、厳しい仕事を転々とするようになった。アタシが何度引き留めてもダメで。冷酷な態度で怒鳴られて、とうとう切り捨てられたと思った。ベルクにしてみれば、巻き込まないための演技だったんだ。アタシはお屋敷に雇ってもらえて、ほんとうに運がよかった」


 ベルクさんの話では、地方都市のドワーフに雇われて鉱山の荷運びや、駆け出し商人の護衛をおもにしていたという。どれも昼夜を問わず、危険と隣り合わせの過重労働だ。


 そしてついに、ベルクさん自身が深手を負ってしまった。


 雇い主の商人はベルクさんを盗賊の群れの中に置き去りにし、逃げ出した。

 しかし、積み荷のすべてを失い、商団を維持できなくなった。


 路頭に迷ううちに、闇に魅入られたのだろう。



「そうだったの……ほんとうに苦労したね。でも、これからはきっと全部、いい方向に行くよ」


 私はアイリーの肩にそっと手を置く。


「はは、太らせておいたしな!」


 アイリーが白い歯を見せ、ニッと笑う。



 うんうん。あれから半月くらいかけ、おもにアイリーがベルクさんの静養するお部屋へと何度も食事を運んだ。


 いまはもう空気だけど、カイ様の寛大な配慮の結果。


 屋敷に滞在中、ベルクさんは広くて綺麗な1人部屋をあてがわれた。

 ミルヴァンさん特製の万能薬も、かなりの効果があったらしい。


 食事は毎回、アイリーが工夫を凝らした特製メニュー。

 麦がゆから始めて、すぐに具入りのスープやパンが食べられるようになった。

 そこから普通の食事に移行するまでは、とても早かった。


 グルメなほうじゃないみたいだったけど……育ちがいいのか、身に着けた教養か。

 食べる様子が素敵な人だった。



 そんなこんなで、彼はもう回復している。それに、働き口もある。

 もともと、鍛えていて精神的にも強い人だったのがよかった。



 槍の腕を認められ、王宮付きの護衛役になるため、士官学校へ通うという。

 学費・諸経費はすべて国家予算からねん出。しかも、お給料もある。



 アイリーの打ち明け話には、こんなオマケが。


 もちろん、もとお仲間さんである女性へのお見舞い金。

 これまでもご家族のためにと用立ててはいたけれど、その額が増える。


 まあ、私にできるうちは喜んで、というスタンスでいる。




 リオネル王子の評判は、3度目の新月以来、かなり上がった。

 

 というのも、任務に参加していた王宮所属の魔法使いや騎士たちはあの日、貴い身分の第一王子が目の前で次々に的確な采配を下したことに驚いていた。

 

 さらに、有する者じたい希少な光属性魔法を惜しげもなく使われる光景を目にして、実は震えるほど超・感動していた。



 ウワサ話に根や葉がつき、貴族から商人、庶民に至るまでまたたく間に広まった。



「お集まりの皆様、本日の舞台は、新月の闇に浮かぶ、神秘的な円形闘技場。襲い来る恐ろしい魔物を白い刃でなぎ倒す、堂々たる若鷹!」



 芝居がかったように、伸ばした右手で天を指すアイリー。

 王都で大人気だという演目を再現してくれたみたい。ヘタだけど!


 2日の休暇の間に、どこまで情報を仕入れに行ってきたのか、想像がついた。



 私やアイリーはもちろん、同行していたお屋敷メンバーを中心にすっかりリオネル王子びいきなので、喜ばしいとしか言いようがない。



 ただ、白い鷹っていうのは……黒い鳶のほうが合ってる。

 ……白黒だから『シマウマ』それか『パンダ』かも。


 色々と台無しなので、もうツッコまないでおこう。



 イメージは、少しずつ上手に書き変えていったらいい。

 リオネル様には、父王様を始め信頼できる味方がついている。


 今はなるべく多くの国民から、好意的なイメージがあることが大事なのかも。




 私にとって一番大事なことは、カイ様やお屋敷の皆が前より遥かに健康的で、幸せそうに過ごしていることだ。



 初めは関係が最悪だったメイドさん達。

 さんざん意地悪を言われていたことは、煮だしすぎた紅茶くらい苦めの思い出話になった。


 でも、煮だしすぎた紅茶はミルクティーに向いている。

 木材でできた床の拭き掃除にも役立つ。


 分かりあえた今では普通に楽しくお話できるし、時には部屋を行き来して女子会っぽいこともしている。


 農園管理の皆さんは今日も熱心に早朝からせっせと畑を耕し、愛情込めてよーしよしよし!と動物の面倒をみている。

 何かの儀式みたいにちゃんと石鹼を泡立て、念入りに手を洗っている。

 こうなるともう、尊敬しかない。



 元Tの皆さまは、何やら自主的に訓練タイムを設けているようで、日暮れ前まで勇ましい声が聞こえてくる。

 練習相手のわら木人形がどんどん使い込まれ、増えていく。手作りしてるようでかかしみたい。おかしな顔が書いてあってブコツな作りなんだけど、そこがまたいい。


 顔を合わせるとものすごい数の質問が飛んでくるし、指導してくれ!なんて人もいるから、なるべく足を向けないようにしてる。



 そして、厨房の料理人たち。今はほぼ全員と気さくに話せるほど信頼関係がある。


 ブルノさんが丹精こめるスープやパンは、安定の美味しさ。

 ルーヴァンさんは、相変わらずレシピの研究と盛り付けの美の追及に貪欲だ。


 お金に目がないと思っていたルーヴァンさん、お子さんのいる立派な家庭人だった。

 しかも、4人目が産まれる予定なんだとか。

 

 きっとルーヴァンさんに似てどこか圧強め、将来有望なお子さんが健やかに誕生するんだろうな。



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