グリーントロ商会
翌日。ブラヴァートさんに『問題』発生したらしい。
しかも、けっこう深刻そう?すぐに話を聞きに行った。
「ギルドで買い取ってもらえない……ですか」
「ああ、そうなんだ。もちろん、まだ探してはみるが。……この都市では難しいかも」
前に滞在した、モルデの特産品と銀製品を、引き取り拒否されたという。
「私のせいです、もう少し行商人としての実績があれば……」
珍しく、ふさいだ様子のブラヴァートさん。
その物憂げなお顔も、素敵なんですが。朝から目がシアワセ……じゃなくて!
「いや、商人ギルドはよくいえば堅実だけれど、融通が利かないですよね」
ザリウスさんが、すかさずフォローをいれる。冒険者として色々な経験をしているから、察しが付くのかな。
「あの、もう1度行ってみませんか?詳しくワケを聞いてみたいです」
少し勇気を出して提案してみたところ、ブラヴァートさんがOKしてくれた。
______________
「ああ~、ダメなものはダメ、何度言えばいいんだ!」
「理由をご説明頂けませんか」
ヒゲをたくわえたギルドの管理官が、うるさいといいたげに大きく手を振る。早く追い出したい気持ちが透けている。
(忙しいんだろうけど……対策を取りようがないから、ここは聞き出したい)
「もう、しつこいなー。分かったよ言えばいいんだろ」
厚かましいと知りつつ粘ったら、折れてくれたみたい。
「第一に、君らの信用性の低さが問題だ。次に、買い取ったとしても需要がない。以上だ」
「すみませんが、需要というのは……?」
「はあ……。商売やってて分からんか?この半年以上、貴族や金持ち連中が興味あるのは実用品なんだ。チャラチャラした装飾品なんかじゃない。ギフォの蔓延で、どこも不安定だからな」
なるほど。何となく見えてきた気がする。
「それは……せめて、品物だけでも見ていただけないでしょうか」
ブラヴァートさんが言う。そういえば、交渉の時に品物を持っていったのに、見てもらえなかったらしいよね。
「見たところで変わらないよ。ほら、帰った帰った!」
警備らしき人たちに半ば威嚇され、追い出されてしまった。
「ほかを、当たりませんか?」
とザリウスさんが提案した、その時。
「ブラヴァートさん、ですよね?!」
聞き覚えのある声がした。
「あ、マグナさん!」
誰かと思えば、昨日盗賊に襲われていた商人バルトロ・マグナさんだった。
興味ありげにのぞき込んでくる。
「今日はどのような……ああ、ご商談ですよね!?」
「はい。ただ……」
ブラヴァートさんが、事情を説明する。
「なるほど、ちょっと着いてきてください!」
あとをついていく形で、商人ギルドに逆戻りした。
___5分後。
「いや~、すみませんでした!完全に、こちらの誤解でした。
グリーントロ商会、マグナさんのご紹介ということですし、喜んで商品見せていただきます」
管理官のヒゲの男が、深々と頭を下げてくる。ホントに、さっきと同じ人……?
ポカンとしている私たちの前で、ブラヴァートさんが話を進めていく。
「気にしないでください。先ほどの言い分は、当たり前ですよ。取引して頂けるなんて、幸運です」
よく分からないけどマグナさんって、すごい商人さん……なのかな。
グリーントロ商会かあ。名前からして勢いがありそうな感じはする。
肝心の商品も、銀製品はお見せした瞬間にギルドでのお買い上げが決まった。
ただ、織り物のほうは、マグナさんが
「えっ、モルデの織り物をお持ちなんですか?……あの道のり、危険かと思うのですが。
さすがです!ぜひ、うちで引き取らせて貰えませんか」
と言い出してくれた。言い値もかなり良かったらしく、即決していたみたい。
それにしても、やっぱり危険なルートではあったのね。同じことを考えていたのか、メルさんと目が合った。
「あの、皆さんこの後のご予定は?」
とマグナさんが聞いてくる。ブラヴァートさんが
「いいえ、おかげさまで今日は特には……」
「それでしたらよければぜひ、寄って行ってください!」
マグナさんの邸宅に招かれた私たちは、温かい歓迎を受けた。
一見、普通の邸宅にみえて警備がしっかりしている。趣味のいい調度品が備え付けられていて、とても居心地がいい。
「まあ、いらっしゃい。お話は聞いていますよ!ごゆっくりどうぞ」
奥様がとても料理上手らしい。何種類もの野菜やコケットの卵がトッピングされたサラダ。
メインの料理も、数種類が用意されている。
「わー、お肉が柔らかい。おいしいですー!」
メルさんが目をキラキラさせながら食べている。
ザリウスさんもすっかり夢中のようだ。
ブラヴァートさん……は控えめに食べるフリ?
「おや、あまり進んでいませんね。何か他の物を用意させましょう」
とマグナさんが気遣うのを、やんわりと笑顔で断っている。
あんまりしつこいようだと困ると思っていたけれど。
「ところで……お引き取り頂いたモルデの織り物、需要がないとなると、沢山の在庫を抱えることになりませんか?」
ブラヴァートさんが話題を振り、マグナさんの表情が、少しお仕事モードになる。
「あまり、大きな声では言えませんが……商人ギルドは先を読むのが遅いですからね。視野も広いとはいえない」
「……と、いいますと?」
「確かにこの半年間、貴族や商人達は装飾品を買い控えてきました。
ただし、その主たる理由は魔人の影響ではなく、新技術の発展によるものです。国外で人気を誇っているデザインがあるんです。その波が、間もなくこちらにも影響する」
驚いた私は思わず口をはさむ。
「えっ、じゃあ、銀製品を買い取ってくれた商人ギルドは、困ってしまいますか?」
「はは、ナガメさんはお優しいですね。頭の固い連中だ。少しくらい困ればよいのです。ただ、銀は溶かせば作り変えられる。その点に気づけば、利益を損なうことはまずありません。もし泣きついてきたらアドバイスしてやって、恩も売れます。情報量を取ってもいい」
そこまで考えて……。マグナさん、やっぱり尊敬。ブラヴァートさんも似た感想みたい。
「なるほど。貴重な情報を、感謝します。それで……織り物のほうは?」
「当商会のネットワークで売りさばくことは十分に可能です。私を信じてください。
それにモルデの製品は質がよく、手に入れにくいので商会の間でも扱いやすい。
ひとえにブラヴァートさんのご慧眼ですよ。今後もぜひ、私の商会に商品を卸して頂きたいです!」
「そうですか、それはぜひお願いします」
2人は、親しく握手を交わしていた。知り合ったばかりとは思えない。
心強い味方ができて、ホントに嬉しい。
ただ、私の勘だとブラヴァートさん、こうなるって予測していた気がするんだけど、どうなんだろう?
私の視線に気が付いたのか、ブラヴァートさんはにこりと微笑みを投げかけてきた。
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