盗賊団と戦え!
食事と補給を兼ねて、小さな町に何度か立ち寄った。
「この辺りからは、盗賊が出やすい。気を引き締めてくださいね」
サラッとブラヴァートさんが予告してくる。……その言葉通りだった。
ガタガタッ……!!
馬がいななき、車体がスピードをゆるめる。
ニブい音も連続して聞こえてきた。
ハッとして身構えると、すでにザリウスさん達の姿がない。
「これは……」
私もローブの下でフライパンを召喚し、車外に飛び出す。
荷馬車は、ザッと見5名ほどの盗賊らに囲まれていた。
少し離れた林の影から、こちらを狙う弓使いもチラリと見えた。
リーダーらしき人相の悪い男が進み出てきて言う。
「大人しく投降しやがれ!!ピカピカの馬車、ひと目でわかったよ。初めてのお使いなんだろぉ?……お前らにはまだ早い。大好きなママの所に帰りな」
取り巻きたちが、下卑た笑いを重ねる。
「ああ、お助けを……!わたくしどもは、この先の町へどうしても行かねばならないのです。この食料品を、孤児院の子どもたちが待っているのです。見逃してください!」
ん?ブラヴァートさん、どうしたんだろう、孤児院?そんな設定聞いてないんだけど……。
ただ、盗賊達にはあきらかに隙ができた。
「おいおいおーい、そんなヘタな交渉でおさめようってか?聞くわけねえだろ。お前ら、縛り上げろ!」
「……では、交渉は決裂ですね?」
ブラヴァートさんの目が、怪しく光った。次の瞬間。
「ひゃぁああっ!どうなってる!?」
「うぐっ……動かねえ、足が、手がぁ」
欲に目がくらんでか、積み荷に手をかけたヤツらが何か黒いものに手足を……縛られている?次々に、地面へ転がっていく。
ザリウスさんとメルさんも、交戦を開始していた。
グルルルルル……!!
「!?ええっ」
フェルナが、巨大化していた。まるで、黒い巨大な狼だ。
緑色に光る目玉が2つ、夕闇に浮かんでいる。
盗賊の下っ端は、恐怖で動けなくなっている。
メルさんが投石紐を投げ、拘束していく。
「ナガメさん、今です。アイアンスキルで弓使いを……手加減は、お任せします」
ブラヴァートさんから耳打ちをされた。
「え。あ、はいっ」
後からノコノコ出てきて、見るからに戦闘力のなさそうな私は、この混乱の中、ほとんどノーマークだ。
……!そういえば。私は女神ミュリの言葉を思い出した。
『隠れたいってときにも、使えるよ!』
こっそり近づいて、コンとやったらどう?
やってみた。抜き足、差し足……! コン。
「ハゥエッ!?」
ギリギリ、と弓を引きしぼっていた女が、白目になってその場にひっくり返る。
よし!まずは、1人目ね。私は心の中で、小さくマルを作った。
ただ、2人目は私が木の枝を踏んだ、パキッという音に反応して……
「あぁん?何だ」
と言いながら持ち場を離れた。……ところに忍び寄って、コン。
全部で4人いたけど、どの盗賊も同じ手に掛かってくれた。
すかさず拘束する、メルさん。
「ナガメさん、やる~!」
と言ってくれた。
盗賊の親玉も、その右腕も1度崩れるとあっけなかった。
仲間を見捨てて、何か金目のモノだけ持ち出そうと積み荷に手を伸ばしたところを、例のナゾの黒い影にシュルシュルシュル~~!と捕まってしまい、地面に転がった。
同時に、ブラヴァートさんが素手で打撃を入れ、意識を失わせる。
もとの静寂が戻ってきた。
「はぁ、口ほどにもないヤツらでしたね」
と、ブラヴァートさん。
「皆さん、ありがとうございました。ヤツらの処遇は、近くのギルドに通報して任せましょう」
「あ、ワタシ手配します!」
メルさんが、すぐに使い魔の鳥を召喚した。気の利く人だなあ。
私はブラヴァートさんに聞いてみた。
「あ、あの。さっきのスキルは~」
「ええ、私ですよ。闇魔法の1種。便利でしょう」
ウィンクされた。わわっ、そのウィンクも、だいぶ反則ですよ?
説明してくれなさそうだから勝手に想像するけど、商人が積み荷を守ろうとする心から発するスキルとか……?あっ、最初の『交渉』が発動のカギになってたり?
フェルナは、元の可愛い姿に戻っていた。
意外だったなあ。あのフェルナが。超カッコよかったけど!
「お疲れさま」「よーしよし!」「フェルナ、いい子~」
3人で思いっ切り褒めて、好物のおやつを与えたことは言うまでもない。
そんなこんなで、盗賊を返り討ちにしつつ行商は進んだ。
……けっこうな回数、襲われた。
もう少し控えめな馬車を用意したほうがよかったんじゃ……とか思ってしまった。
そして、3日目のお昼。最初の目的地に到着した!
商業都市、モルデ。規模はそこまで大きくないらしいけど、市場の賑わいが全然違う。
アボカドみたいな大きなルチェに、海産物も並んでいる。
ギフォが漂い、貧しそうな人々が徘徊する区画もあるけど、晴れ間も見られる。
「早速ですが、商人ギルドで交渉してきますので待機をお願いします」
とブラヴァートさん。元商人なだけあって、頼りになるなあ。
……と思っていたんだけど。
許可が出たというので、総出で簡易の屋台を作り、商品を並べた。
店番は交代制で、最初は私とメルと、ブラヴァートさんになった。
「……思ってたより、売れません、ね」
「そうだねぇ」
2人でコショコショと言いあう。
近くにブラヴァートさんがいる手前、大きな声では言えないけど、つい。
2時間は経ってるけどダメだ。商品を見ていく人はいるけど……。
それどころか、言いがかりをつけられた。
「お姉ちゃんたちぃ、可愛いねえ!初めて見る顔だなあ」
「こ、こんにちは……」
「ああー、ダメダメ!声が小さいよぉ?」
昼間から、赤ら顔のおっさんだ。吐く息もアルコール臭い気がする。
……そういえばここ、酒場が近かったなぁ。
とか思っていたら、急にウッ、と気持ち悪そうな顔になり、千鳥足でヨタヨタと去っていった。
ブラヴァートさん、何かしてたような……あれも魔法?
そのあとも、場所代を払ってるのか?とか、わりと色んな通りすがりが絡んできた。
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