王都アルグレインからの招待
春の陽気に浮かれていると、こんな知らせが舞い込んだ。
「王都アルグレインに、ご招待?!」
王国任務があるくらいだから、あるんだな~、とは思ってたけど。
遠い存在って感じに捉えてた。
しかも、理由が分からない。私に限っては冒険者ランクまだギリFだし。
「カイ様の、推薦とかなんじゃ?」
アイリーも招待されていて、明らかにワクワクしている。
旅行。そして、都会の街並みを歩けるのは、すごく楽しみ。
ただ……。ある理由から、どうも気乗りしないのだった。
数日前。
お屋敷にて会議があるというので、参加をした。
執事長の説明では、王様からこのようなご依頼があったという。
王宮の北側、木立の中を小川ぞいに進んだ先にある、洞窟。
もとは鉱山だったけれど、いまは資源が枯渇した、廃坑。
使われていないけれど、ドワーフ族が管理をしている。
問題は___かねてより、ギフォが濃い場所として知られているのだそうだ。
そのため立ち入りはおろか、王宮の兵士が立ち代わり警備をしているので普段は近づくことも難しい。
さらに、度重なる調査によって、洞窟には少なくとも数十年以上、何者かが『封印』されている痕跡があると分かった。
詳しく解明、対策をすることが、王国の将来的な利益になるという。
そう言われましてもー、と正直思ってしまう。
あえて蜂の巣をつつきに行くような危険を冒す必要あるの?
そんなところに行くくらいなら、真夏に大鍋でオランを延々とかき混ぜ、ジャムにしてたほうが何倍もいい。
いい匂いだってするし!メイドさんたちワーキャー言って喜ぶし!
……なんて散々、心ではごねてみたけれど。
今回の王都行き、カイ様と古文書の分析に適任な執事長が同行することになっていて、治癒魔法が使えるメイドさんも一緒なのだそうだ。
ただ……火の魔法もフライパンも、覚えたて0年生。
コントロール力っていまいち何?状態の私。
狩りに慣れたせいもあり、タゲ取りが習慣になってて、反射で小刀投げするアイリー。
本当に大丈夫だろうか。不安。
_____________
「ナガメちゃぁーーん!お久しぶり、元気??」
ミュリの声だ!嬉しくなって、空を見上げる。
「お話ししたかったです~!」
「私もです~!ただ、あんまり時間がないかもなの。
早速だけど、ナガメちゃんギルドで鑑定受けたんだよね?」
「はい!それで……」
「見ていたからね、わかるよ。
ただ……ナガメちゃんを客人として招待したのが誰か、私にもまだ分からないの。
セラフィさんの言う通り、超!信頼できる人以外にはヒミツにしましょう。
私の方でも引き続き、調べてみるよ」
そっか、召喚したのがミュリや、ミュリの関係者の可能性はないってこと?
もしかして、私が思うより重大なことだったり?
「心強いです、お願いします」
「もちろんだよ! それでね、、加護は、私です」
「ひたすら嬉しいです。気づいてなくってすみません。……あの、どんな効果なんでしょう」
「と、それはね。浄化に関係しているかな」
「あ、なるほど」
じゃあ、だいぶ以前から加護をつけてくれていたのかな。
「でもね、何ていうか、色々できる!って感じに、考えてもらえると嬉しいの」
「色々。ですか」
「そう!例えばだけどね、隠れたい!っていうときにも使えるよ」
隠れたい?そんな場面、来るかなあ。。
恥ずかしすぎてもうダメ!的な?
浄化だけで、もう十分な感じだけど。
「あ、微妙って思った?」
「そ、そんなことは」
「ふふ、あっ、そろそろ行かなきゃ……もっとお話ししてたいのに」
「いえ、いつも貴重なお時間、ありがとうございます」
「またねぇぇ~」
マイナスイオンたっぷりの、美声が響いた。
____________
王都までは、馬車を乗り継いでいくのかと思いきや、エルデンベイルを50リューほど北上した地点から、空路なのだった。
それも、飛空艇だ。
「うわぁ~、すっご~い!」
「かっこいい……こんな近くで見たの初めて」
快晴のもと、草そよぐ台地に、大きな空飛ぶ船体がゆっくりと降下してくる。
アイリーと2人で盛り上がった。
船体の下部、厚い板で覆われた部分に、強大な力を持つ魔法石が安置されているのだとセラフィさんが説明を入れてくれた。
……ということは、王都には強力な魔法を使える魔法使いが、沢山いるのかな。
それと、この快晴は魔法の障壁の力でギフォを払っているから、とも教えてもらった。うーん、スゴすぎる。
空の旅は快適だった。
眼下には澄んだ湖、渡り鳥の群れ。
そして、緑豊かな山々。
はしゃぐアイリーに手をとられ、クルクルと回って踊って、落下しかけたことを除けば。
セラフィさんの拘束魔法がしっかりキャッチしてくれて、助かった。
……かけられて分かったけど、ギュッとされてる感じ、ちょっと愉しい。
王都にお屋敷の産物を持参するらしく、メイドさんのアイテムボックスにはアッポ(りんごっぽい果物)やパン、そして焼き菓子が沢山、仕舞われている。
なかでもブルノさんが考案した、バスケット入りパンの詰め合わせには可愛らしいリボンもかけられ、受け取った人の笑顔が見える。
……ルーヴァンさんといい、ブルノさんといい、仕事デキる人は女子力高い法則でもあるのかな?
山々を眼下にかじるアッポは、これまでで1番美味しく感じた。
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