初依頼はお届け物
たぬき耳なギルド嬢が、笑顔でギルド登録を祝福してくれた。
「はぁい、確かにお預かりしました!本日からランクFの冒険者ですねっ。
あの、早速ですが、おすすめのご依頼ございますよ~?」
「聞いておくか!」
と、アイリー。だいぶやる気ありそう……。
「お2人で、行かれますか?ふむふむ、アイリーさまはDランクですね!」
「アタシ、小刀スキル(自在・強)と、アイテムバッグ(小)持ちだ。
さっき、登録し直したからわかると思うけど一応」
「いいですね、それでしたらランクE、食料の配達依頼はいかがでしょう。
この街から北東に、1,5リューの集落までになりますよ。
こちらの報酬は、銀コイン10枚!
……ただし、夕方から夜間にかけてEランク以下の魔物が数体、出没するという報告があります。お気をつけて」
1,5リューは、およそ6キロくらいらしい。
ちょっと遠いけど、時間にも余裕があるので、受けることになった。
配達する食料は、獣の肉が3キロ、野菜3種類と、水の瓶が10本。
途中、食料店で商品を受け取り、アイリーのアイテムバッグに収納した。
「アンタら、2人だけ?そんな軽装で……大丈夫なんだろうな?しっかり代金を貰ってきてくれよ」
と店主が不安そうに言っていた。アイリーはともかく、私が新顔だからかも。
ギルドで渡された地図を確認。時間を考えると、最短ルートをとりたい。
北門を出ると、馬車1台がやっと通れそうな一本道だ。背の高い草が一面に、風に揺られている。
「風が気持ちいいなぁ!」
アイリーが、白い歯を見せて笑う。
「そうだね、あっ、晴れたよ」
どうしてだか、ミュリを思い出してほっこりする。
特に何もなく、道のりの半分が過ぎたところで急にお腹が空いた。
道沿いには、木々はまばらで大きな岩がゴロゴロとしている。
倒れた大きな丸太を椅子代わりに、持ってきていたサンドイッチを頂く。シンプルにハム・トマトサンドで、ハム多め。
「ふぉれ、超~うまっ!」
またまた、口いっぱいにしてる。
ハムは街で購入できるらしく、トマトは屋敷の自家製。いい感じに共演してる。
それに、オラン(オレンジそっくりな果物)のジュースも合う。ちょっと面倒だけど、しぼってきてよかった。
充電できたので、再度出発。
「ん?ちょっと、暗くなってきてないか」
いち早く気づいたのは、アイリーだ。
「ん、日没まではかなり時間があるはずだけど……ちょっと急ぐ?」
「っしゃ、魔物にエンカウントした時に備えて、息が切れないくらいにな」
実戦の経験があるアイリーが一緒で、やっぱり心強い。滑るように歩みを速めた彼女の、燃えるような赤毛を見失わないよう、ついていく。
そのまま20分くらい経っただろうか。小走りしていたアイリーが、速度を落とした。
「水辺が、近そうだ」
なるほど、さっきから少し湿った空気を感じていた。
オランのジュース、休憩でほぼ飲んでしまったし、水分補給もしたいところ。
少し歩くと、見えてきたのは小川だった。
「あ、でもこれ生水だよね。飲むならキレイにしないと」
「ナミズ?よく分からないけど、飲むとたまに体調めっちゃ悪くなるのは、そういうことか?」
口ぶりからして、これまで普通に飲んでいたのね。かわいそうに。
……入れ物を洗って、お水を汲んでいこう。
火を起こして、沸かしてから飲めばいいし。と思っていると、アイリーが閃いた。
「ナガメ、この間話してくれたよな。浄化が得意なら、この水もできないか」
「!そうだね、やってみよう」
……結果、できた。
浄化前に比べてにごりがまるでなく、試しに少し飲んでみたら、驚くほどクリアな風味。
しかも、召喚したフライパンに水を張り、キレイになーれ、と心の中で唱えるだけ。
薪を組んで火を起こし、煮沸して、冷めるのを待って……の手間と時間がいらない。
召喚するフライパン、小さめ&深めにしたら、ちょうどよき。
「サイコー。地味に使えるよな!ナガメのフライパン」
「そぅだね、よかったー」
地味に、というところに引っ掛かりかけたけど、これから先、このお水調達スキルは役に立ちそう。
ワクワクのほうが大きい。
美味しいお水パワーか分からないけど、水辺から目的地の集落までは、それほど遠く感じなかった。
のどかな村、という感じのところ。水仙に似た、いい香りの花があちこちに咲いている。
「まあま、よく来てくれたわね!」
ギルドから来たと言い、食料品を手渡すと、人のよさそうな女性と、その家族に感謝され、袋入りの代金を渡された。それに、水仙に似たいい香りの花の束も。
ただ、女性は重度のおしゃべり好きで、マシントークを聞かされた。
さらに、これから食事の準備をするから一緒に、と誘われる頃には時間が気になって、遠慮しておいた。
「もっとゆっくりしていってもいいのにィ~」
じっとりとした目つきで言われ、タジタジだった。
「ハハ、どうも~。また来ますね」
ようやく、帰路につけた。日没までは2時間ないくらいだろう。
アイリーが、少し苛立ち始めている。言葉にしないだけだ。
自然に早足になる。
あっ、これは来るときに通った小川。小さな橋を、ホッとしながら渡る。
ところが。しばらく歩いていくと周りの風景に違和感を覚えだした。道に迷ってる……かも。
「アイリー、ねぇ。聞いて。地図を確認しよう」
「……分かった」
私が、荷物から地図を探しあてた時___ギフォが、濃くなった。
「警戒しろ!」
勘のいいアイリーは、もう小刀を構えている。
私は、足が震えを感じながらフライパンを召喚。
周囲は、林だ。コントロールに不安のある火魔法は使いたくない。
そのまま、少しでも歩みを進めたいのか、アイリーがじりじりと移動する。
薄暗い中、目を凝らすとキラキラとした細かい粒が空中をただよっている。ちょっと綺麗だ。
ただし、ブゥ~ン、ブゥンという低い羽音が不気味すぎる。
「うう~、いるよぉ、いるいる!」
「ふん、フレイムモス3匹ってとこか」
ボソッとアイリーが言う。
「ナガメ、火の魔法は使うなよ。最悪、この一帯が燃えちまう」
「そうだね、分かった」
アイリーは低く構えてから、小刀を繰り出す。
気合の入った投げ技は、初手でフレイムモスのハネの付け根に刺さり、1体がバランスをくずして落ちてきた。思ってた3倍は大きい!そして、だいぶ恐い。
「そっちは、任せた!」
と言いおき、アイリーはダッシュして行った。
一方、地面に落ちて、ゴソゴソともがく個体。
気は進まないの、でも……。
「アイアン・スプラッシュ」
ごめんね、と心の中で言いながら、私はフレイムモスの腹あたりをめがけ、フライパンを振るう。
魔物は、きらめく鱗粉を散らし、地面に沈んだ。
ええ~、果物・野菜の名前についてですが、可愛いからと面白がってつけていたらだいぶ設定数が増えてつけた人の首をしめてきたので、このあたりからしぼらせてください。
例:トマト=異世界名もトマト。
随時、説明書きをしますので覚えないと、と思って頂く必要は1ミリもありません。宜しくお願いしまーす。
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