冒険者ギルドへ!
久しぶりにルチェの木を見に行くと、大粒のさくらんぼみたいな実が沢山生っていた。
チェリリと呼ばれているらしい。
色づいたら、これは話題になりそう。……にしても、季節感はない。
管理官が何人もいたので、ちょっと話を聞いてみた。
「ルチェの木を、これから沢山植えるんだよ」
「そうそう。そのうち1本でも、奇跡が起きてくれりゃぁ安泰だ」
……なるほど。この人たち、本当に考え方が逞しい。
私もこっそりとフライパンを召喚。願いを込めて歩き周っておく。
終わるころには穴掘りの手伝いに引っ張られそうになったけど。
「ナガメー、ここか。そろそろ行かないと!」
アイリーが呼びに来てくれた。私は笑顔でうなづく。
今日は、街のギルドに登録しに行く予定。
もちろん料理長やリネンさんにもOKをもらってある。というより……
「ナガメさん、せっかくの火魔法とアイアン・スキル、活かしましょう!
そのためには、冒険者ギルドに登録し、依頼をこなすといいですよ。私も貴方くらいの頃は……」
「その通~~り。腕も人格も経験で磨かれる。この、ワタシのように」
長い昔話を始めたり、ドヤ顔を隠さなかったりした2人に勧められた流れだ。
ちょっと残念な話をすると、先日の魔人の襲撃で、大広間の床や壁にダメージが入ったり、備品が損傷したりしていて、修復や買い直しが必要なのだ。
注意を払ったつもりの私の火魔法も、だいぶ床を焦がしていた。
……カイ様は、氷魔法を床から生やしたりして、大きな穴とかあけてたけど……。
ともあれ、依頼をこなせばお金になるし経験も積める。登録しない理由がない。
ということで、2人で乗り合いの馬車に揺られ、おなじみの街エルデンベイルへとやってきた。
市場は……いまだにがっかりだけど、冒険者ギルドには長い歴史があるとのことだ。
うん、看板からして、きちんと磨かれている感がある。
ちょっと建付けがよくない、きしむ扉を開けて中へ入ると
「こんにちはー!」「お帰りなさいませ!」
鈴が鳴るような声で、挨拶された。受付嬢たちだ。
私たちの前には、すでに3~5名の列ができている。
盾を持ち、甲冑をつけている大柄な男性、長いローブ姿で魔術書を開く女性。
「大変、お待たせしましたぁ~!」
たぬき耳としっぽの女性に手招きされ、私は前へ進んだ。
「こんにちは、こちらへ来るのは今日が初めてなんです。登録を、お願いできますか?」
「了解ですっ!では、こちらにご記入を」
登録用紙を渡された。名前に、現在の住所、職業……はとくに問題なし。
出身地。これは、リネンさんに前もってアドバイスを貰った、遠くの街の名前を記入する。
「ねぇ、アイリー。スキルの欄はどう書けば……」
「うん?適当でいいんじゃ?」
「え、そうかなぁ」
すでにギルド登録済みだというアイリー。
もう少しちゃんとアドバイスをくれるとよかったんだけど。
困った私は、再度たぬき耳の女性に話しかけた。
「……なるほど。それでは、鑑定をなさいますかぁ?
登録前提なのでお安くできます。銀コイン、8枚です」
う、けっこうな額。ただ、持ち合わせてはいる。
「あのぅ……内容って、誰かに見られたり……しますよね」
「いいえ!ご希望に合わせて、ご内密にもできますよ?
そのように鑑定する場合、表示はご本人様にしか見えません」
そのあと詳しく話を聞いたところ、もし内容に不備がある場合、登録用紙はその場で燃え上がり、この街での登録は2年不可。
すぐに登録するには、他の街へ行く必要があるらしい。
……アイリ……確認しておいてよかったー。
別室へ誘導され、しばらく待っていると。
にこやかなローブにとんがり帽の男性がやってきて、鑑定が始まった。
男性の片目に、青白く光る魔法陣が渦巻く。
____ 鑑 定 結 果 _____
【 名前・年齢 】 ケーコ・ナガメ (22)
【 職業・身分 】 バトルシェフ / 異世界から転生した女性(客人)
【 召喚理由 】 ▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮
【 レベル 】 11
【 体 力 】 680
【 魔 力 】 400~800
【 攻撃力 】 600~1100
【 防御力 】 300
【 素速さ 】 220
【 スキル 】 火属性魔法(制御能力:未熟)/中級浄化
【固有スキル】 フライパン召喚(上限2)・強打撃 /上級浄化
【 備 考 】 歌女神ミュリスティアの加護・小
教育者としての素質:高
……ふむふむ。思ってたより強くなってる!レベル11。
バトルシェフか~!何かかっこよくて、いい感じ。
突出しているのはフライパンの攻撃力っと。
防御は低いみたいだから、気を付けないとだね。
浄化は……フライパンのほうが使っているからかな?効果が上級なのは。
ん?身分のとこ、異世界転生(客人)って、いったい何なんだろう。
それに、召喚理由の記載は……黒塗り?どういう意味?
なぜだかゾッとした。考えすぎだといいけど。
「あの……召喚理由のところが何ていうか、黒いんですが」
「ああ、私の力不足か、たまたまエラーかですね」
「エラーですか。あのー、もう1度お願いしたりできますか?」
「できます、追加料金は1回につき銀貨2枚です」
2回やってもらったけど、結果変わらずだった。
(節約しなきゃなのに、銀貨4枚マイナス……トホホ)
ミュリスティアの加護……は、本人か執事長に聞いてみようかな。
メモを取って戻り、登録用紙に記入。今度はスラスラと書けた。
ただ、『客人』とか、女神ミュリスティアの加護のところは書かずにおいた。大丈夫かな……?
たぬき耳な受付の女性は、記入の内容を確認したとたん、大声で___
「あぁっ、火魔法をお持ちなんですか?うわー、すごいです!
それに、スキル……フライ、パンも、とっても強そうですねっ!」
たまたま、列の途切れたタイミングで、周囲に人がいなくてよかった。
そして、受付で普通に鑑定しなくて本っっ当によかった。
あ、長椅子で昼寝してたアイリーが、ガバッと起きて、こっちに来た。
「どちらのスキルも、制御がほとんどできてないので、訓練も兼ねています……アハハ」
一応、説明的なことをしてごまかした。
それでナットクしてくれたのかは分からないけど、書類は燃えることもなく、無事に通ったようだ。
ナガメの鑑定結果ですが、元いた世界の情報は『更新』によって省略されたととらえて頂ければ幸いです。
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