魔法仕掛けの花火
すっかり暗くなった裏庭。
灯りのともったルチェの木が、見とれるほどに綺麗。
集まった領民には、ちらほら帰りだす者がいる。
メイドさんや料理人からパンやルチェをお土産に渡され、従者さん達が荷馬車まで案内している。
「とってもとっても、楽しかったです~!」
「また遊びに来たいなぁ。今度はいつ?」
笑顔で言われると、こっちまで嬉しくなる。
「ナガメさん、ちょっといい?」
カイ様が側に来ていた。ルチェ酒を手にしていて、ほんのりだけど上気している。
「カイ様。よかったですね、素敵な日になりました」
カイ様が、笑顔でうなづく。
「ぁ……おケガのほうは、大丈夫なんでしょうか?」
「うん、もうほとんど平気。リネンの魔法が効いてる。
それに……美味しい料理を山のように食べられたから」
「ふふ、そうですね」
そのとき、遠くでドドン、という音がして、大きな火花が上空で花のように輝いた。これって、花火……!?私が驚いていると。
「これも魔法だよ」
と、カイ様が教えてくれる。次々に、空に大きな火花が咲く。
小さくて可憐なのもあれば、ちょっと風変わりなものも。
「わあっ、綺麗……!!」
「綺麗だね」
それからしばらくの間、夜空にあがる魔法仕掛けの花火が、さまざまな花を咲かせ続けた。
「……私、火属性の魔法はダメなんだ。それも、全然」
と、カイ様が言う。
「そうなんですか」
「うん、憧れもあって、だいぶ練習はしたんだけどね。向いてないみたいで。
それはともかく、ナガメさんのつくる炎、いいよね。綺麗で優しいオレンジ」
見てくださってたんだ。
「どうも……コントロールが、全然ですけど」
「ああそうだ、これを渡そうと思ってた、忘れるところだったよ」
小さな箱を渡される。
そっと開けてみると、シルバーの細いネックレスに、深いオレンジ色のしずく型の石がついていた。メッセージが、添えられている__
『 カーネリアンを贈ります。魔法の調和に役立つといいね 』
「素敵ですね!嬉しい。ありがとうございます。大事にします」
「うん。よかった。魔法、上手くなるといいね。焦らないで頑張って」
従者さんが声をかけてきたので、私は失礼した。
もう少しだけ、お話ししたかった気もするけど。
______________
翌日のお昼過ぎ、私とアイリーは、屋敷の広間に呼ばれた。
あの、押しが強いけど熱心な農園管理の女性や、狩りの時に一緒だった有能なメイドさんの姿もある。
執事長やリネンさん、農地管理官長の姿もある。
前に進み出た執事長の説明では、カイ様が日ごろの貢献に感謝を表すための時間とのことだ。
隣でソワソワしていたアイリーが、パッと笑顔になった。
私とアイリーは、それぞれ銀のコイン30枚を頂いた
今後は料理人の報酬にも、少し色を付けてくれるらしい。
それと、私のほうは農園管理の手伝い・火魔法やフライパンの練習も公認に。
……農園の部分は、正直フクザツ。何とかうまくやっていく方法はないかな?
ただ、外出許可も公認にしてくれたので、前より気軽に外へ行けそう。
それに、新しい制服。デザインはそれほど変わっていないけど、生地がスベスベ。
そして、カイ様からは
「これからは、屋敷の会議に参加して、意見を聞かせてほしい」
とも言われた。リネンさんや、ルーヴァンさんのほうを見ると、うなづきを返してくれる。彼らの、推薦なのかも。
アイリーは、イベントでの狩りの功績を称えられた。
暴走する巨大なエルカーンのターゲットを取ったうえ、小刀当てつつ走り回れる人なんて、そうそういない。
今後も、いや今後は、協力して安全に注意し、狩りに励んでほしいとも言われていた。
外出許可と、新しい制服。そしてそして、袋が贈られた。
これは魔道具で、『アイテムバッグ』の役割を果たすらしい。
容量はそこまで多くないらしいけれど、超がつくほど便利そう。
料理長ルーヴァンさんは、重みのありそうなコインの袋を渡され、糸目の端がデレレーンと下がっている。抜け目のない人だから、自ら希望していそう。
ザリウスさんとそのパーティメンバーも呼ばれていて、無期限のお屋敷での滞在の約束と、ザリウスさん個人にずっしりしていそうなコインの袋。
フェルナも誇らしいのか、目をキラキラさせ、尻尾を振っていた。
パーティメンバーはすでに、農園管理官やメイド、街のギルドで依頼を受ける冒険者など、それぞれ働いてくれてもいる。
いつかはまた旅にでちゃうのかもしれないけど、その時もこのお屋敷が拠点になるといいなと思う。
そしてリネンさん。彼女には、丁重な感謝の言葉と綺麗な魔石と金のコイン。
さらにアッポのジャムを、抱えきれないくらい。
大きな花束も贈られていた。レディに気遣いを忘れないなんて、本当に素敵。
奉仕の精神があって優しいリネンさんは、ジャムやお花をすぐメイドさん達に配っちゃいそうだけどね。
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