ごちそう山盛り収穫祭
数日後、領民たちも招いてのお祭り騒ぎになった。
ルチェや農作物の豊作を祝う、収穫祭。
それに、ザリウスさん一行の歓迎会も兼ねている。
……もしかしたら、魔人を撃退できたことも関係してそう。
カイ様のアイデアだとか。意外にイベント好きみたい。
「……ったく、まあ、美味しいものが食べれるならいいけど」
アイリ-はふくれっ面をしたり、やる気をふるい起こしたりと忙しい。
厨房もバタバタしどおし。
でも、メイドさんが交代で手伝いに来てくれたし、遊びに来た人々の何名かは自主的にお皿やグラスを運んでくれた。
屋敷の裏庭にはテーブルクロスのかかった大きなテーブルが設置され、一面に料理が並ぶ。
バイキング形式で少しずつとれるようにしてあったけど……大量に持っていく人ばかり。
執事長のセラフィさんにお願いして、食べきれる分だけ取っていくなど『マナー説明』してもらったら、グッとましになった。
説明が上手すぎて、イベント感もでていた。さすが。
干した魚とオイルのソースをそえたカラフルな野菜スティック、3種の獣肉のミートローフ、ひと口サイズのウッド・ターキの唐揚げ、木の実パウダー風味など。
デザートは、焼きアッポ、砂糖がけイティに、木の実のパウンドケーキ。
焼きアッポは、芯をくり抜き、砂糖と刻んだ木の実をつめて焼いたもの。
砂糖がけイティは、お砂糖と水を煮詰めた水あめにイティをくぐらせ、木のピックを飾った。見た目も可愛い。
木の実が香ばしいパウンドケーキには、泡立てた卵をふんだんに使ってある。
コケット(鶏ソックリな鳥)も、まだ数は多くないものの以前に比べて格段に卵を産んでくれるようになったので、できたメニューだ。……今日も、畑と動物見回りタイムをしてきた。
コケット小屋の管理官が言うには
「2羽メスがいるとするだろ?1日卵1個のペース。
だから、2羽のうち1羽はサボっている計算なんだ。
ちゃんと交互に産んでるか見張らないと!」
……あんまり圧をかけないといいけど。絶対、逆効果だから。
パンと肉料理はとくに好評で、すぐになくなるので石窯2つをフルに使って……も足りないので、裏庭に即席で大きなキャンプファイヤーを作り、そこで焼くようにした。
棒焼きパンは、子どもウケ抜群だ。
奇跡のルチェの木は、また少し大きくなったように見える。オランに続き、アッポの実も鈴なりだ。
幹や枝に飾りをつけられ、木の周りを子どもやメイドさん、街から来た若者たちが手をつないでダンスしている。
私とアイリーも、厨房が落ち着いたタイミングで交代で輪に入った。
飾りは、薄暗くなるとイルミネーションみたいに光りだし、ビックリした。
聞いたところ、魔法仕掛けらしい。
裏庭の一角に佇むリッドさんが、少し落ち込んで見えた。
思い切って、声をかけてみる。
「お疲れさまです、リッドさん」
「ああ……ナガメさん。昨日は本当に、本当にお世話になりました」
「いえ、私は大したことは。フライパン構えて走ってただけっていうか……」
片眼鏡の奥が、少し優しくなった気がした。……笑われてる?
リッドさんは、イベントにきている領民の鑑定を終えたところだという。
自主的に沢山の人をみることで、『鍛え直したい』のだとか。うーん、意識高い。
「……魔人だった従者は、屋敷にきた初日に私が鑑定したのです。
しかし、見破れなかったのでカイ様にケガをさせてしまい……あるまじき失態です」
「そうでしたか……。よほど巧妙に化けていたんでしょう」
「そうかもしれません。やつらは本当に、厄介な存在なのです。……
ナガメさん、貴方やはり、いい人ですね」
「え、いえそんなことは……」
何か、気まずい。
食いしん坊な私の頭には、まだテーブルに出していない新作料理が思い浮かんでいた。
「もしよければなんですが、召し上がるなら何がお好きですか。苦手なものは?」
少し考える様子を見せてから、リッドさんが口を開く。
「お肉よりはお野菜……ですかね。何でも食べますよ」
「!少しお待ちください」
と言いおいて、厨房へ小走りした。
「こちらはいかがでしょう」
ズッキーニ(風の野菜)を細く切って、少しカールさせたものに、半熟のコケット卵、乾燥させ粉にしたチーズと、スパイスを少し合わせている。
「こ、これは。盛り付けも綺麗で、頂くのがもったいない」
しばらく口にするのをためらっていたリッドさんだけど、フォークで器用に丁寧に食べ、美味しい!と感想を聞かせてくれた。
その様子を、アイリーが少し離れたところから見ていることに気づいた。
さっき料理を取りに行ったついでに、事情を話したから、気になったのかな。
目線で合図をすると、嬉しそうにこちらへ来た。私は適当に理由をつけて、その場を後にする。
そのあとしばらく、2人は向かい合ってテーブルにつき、話をしていたようだ。
______________
リネンさんにお願いして、少しの間お借りした屋敷の一室。
準備が整い、私はメイドさんに頼んでリネンさんと領民の女性を数名、お招きした。
大きな容器にお湯をはり、ハーブや花びらを浮かべた。即席のスパだ。
全身浸かれるお風呂とまではいかないけど、少しは違うといいな。
「まあまあ、これは何ですか?」
「初めてみるね、どうやって使うんだい」
打ち合わせ通り、メイドさんたちと一緒に、椅子をすすめた。
深く座り、裸足になって、足を付けてもらう。
「わあ~、温かい。それに、いい香りですね!」
リネンさんがいつになく、うきうきして見える。
顔には、お湯をかけて少し冷ましたタオルをのせる。さらには、軽くマッサージも。
終わるころには、とてもリラックスした様子のリネンさんを見ることができた。
より寛げるように、しばらくは女性限定。
説明をして興味を持ってくれる人がいればの話、男性陣も招待することにしている。
結果、いずれも好評だった。
とくにメイドさんたちは、さすがの美容意識の高さで
「今日から毎日、この温かい布で顔をふく!」
「今度のお休み、みんなでお花とハーブをとりに行こう」
「マッサージ上手いかも!私」
と、はしゃいでいる。
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