見えてきた課題
魔人・ブラヴァートが逃げようとしたかどうかは、正直かなり怪しい。
けれど……魔力ぎれで、もはやマスコット的な見た目。
そのうえ有益な『情報提供源』になってしまったわけだ。
マスコット・ブラヴァートとその配下の魔人は、しばらく屋敷内にとどめ置かれることになった。
色々と、深堀りしたいこともあるのだろう。
ただ、あのカイ様のことだし、甘めの処置しかされなさそう。
その後、アイリーと2人でルーヴァンさんのところへ行き、カッコ良かった!と持ち上げたところ
「いやあ~、ちょうど持ってたのが包丁でね」
と、腹を揺らしつつ、照れていた。
持っていたのがまな板でも、伸ばし棒でも、この人は一定の成果をあげただろう。
ただ……。
「ワタシが考えた技名を、マネしないでくださいよ!」
と言われた。ああー、たしか『アイアン・エッジ』と言っていたよね。
アイアンの部分が被ってるのが気になったみたい。
それには、アイリーが
「いやいや、アイアン・スプラッシュのほうが先だし!」
と断固譲らない姿勢を見せると、かなり拗ねていたので
「アイアン・エッジのほうが、断然カッコいいですよぉー!(本音)それに、アイアンの部分が同じだと、お師匠様とその弟子!って感じがしませんか?」
と言ってみたら、まんざらでもない顔になってくれた。
ただ、今度はアイリーがぶっ、とむくれた。
ちなみに、ザリウスさんは尋問が終わると同時に倒れ、仲間が大泣きで心配していた。
仲間の説明では、魔力切れを起こしやすいのだという。
目覚めたというザリウスさんに、ちょっとビビりつつ、チーズ入りミルクがゆと、うさぎ形にカットしたアッポを運んだら……。
「俺の灰色魔法、闇魔法を無効化するだけなんで。
決め手に欠けるんで。すごく、助かりました!」
と、超がつきそうなくらい健気なことを言われた。
……どうやら戦闘中は、『キャラ変』するみたい。
うさぎ形のアッポには、目をキラキラさせていて少年みたいだった。
マスクを取った顔が、ちょっと可愛い。
ミルクがゆも最後まで美味しそうに完食してくれた。
ちなみに、ルーヴァンさんと私が張り切って作った新作料理2種も、すぐになくなった。
普段は退屈しているお屋敷メンバーの食欲が、事件に刺激された?
果たして好評だったのかも分からないけど、美味しいものはすぐになくなるって……いうよね?!
______________
あの騒動に参加した人のうち数名は、急きょ『面談』を受けることになった。
何を、聞かれるの……?と思っていたら、部屋に入るなり
「ナガメさん、いつの間にアイアン系のスキルを習得しましたか?それに、得がたい火の魔法まで」
と聞かれた。どうやら私の面談相手は、リネンさんだ。
ん?アイアン・スキルっていうと、だいぶかっこいいかも?それ使いたい!
……じゃなくて、リネンさんの前で、大事なことをごまかしたくなかった私は
「じつは、女神ミュリ様に……」
と包み隠さず話したところ、リネンさんは予想通り、半信半疑という感じだったけど、一応は納得してもらえた。……たぶん。
そして、意外なことを聞かされた。
「大事なことを言いますから、よく聞いて。
ナガメさんのアイアン・スキル。そして火魔法。
いずれも、大魔法に匹敵します」
「!だだだ大魔法ですか?」
「ええ。先ほど執事リッドさんの鑑定スキルで、改めて確認をしたそうです。
きちんと断らずにみてしまって、気を悪くしたらごめんなさい」
「それは気にしません、大丈夫です」
「ではもう少し、具体的に言いますね。
ナガメさんの持つスキルのいずれも大魔法クラス。
なのですが、コントロールはほぼ不能、威力や効果にはムラがあるようです。
そして未知の部分もあるようです」
「そうですか。コントロール、できるようになりたいんです……!」
「ふふ、いずれできますよ。
さらに、こちらもかなり重要ですね。
アイアンスキルと火の魔法の両方に、闇魔法を打ち消す以上の、浄化の効果もあります」
リネンさんの話によると、先刻の戦闘での一場面、小柄な魔人を火の魔法でさえぎった際、強力な浄化プラス、闇魔法はね返しの作用が発動。
一気に魔力マイナスになったうえ、オーバーダメージを受けた魔人は崩れ落ちた、という。
「ああ、そうだったんですね……!」
真相が分かり、スッキリした気分。疑問には思ってたから。
「それでナガメさん、お身体の方は大丈夫ですか?」
と、心配そうに聞いてくれる。
「ええ、何ともないです。ちょっと疲れはしましたけど。
ちょっと長めに眠れば、回復するかなーって」
「……そうですか、ムリはしないでくださいね」
「リネンさんこそ、治癒魔法を沢山お使いでしたよね。
……お大事になさってください」
と私が言うと、リネンさんはとても優しい表情を見せてくれた。
私にしてみたら、リネンさんのほうがだんぜん心配だった。
リネンさんが教えてくれたけれど、彼女は自然の力を借りて白魔法を使用するという。
「それにね、私の魔法は私の心を汲み取ってくれるの。
大切な誰かのために力を使うとき、ほんとうの力を発揮するんです。
年齢を重ねただけ、経験もあります。バランスをとれるので大丈夫」
リネンさんみたいに、説明上手になりたい。
……思い起こせば狩りの夜、野営地が黒い影に襲われたとき、私はカイ様に言われた。
「そのフライパン、しばらく出しておける?」
ちょっと疑問だったけど、念のため2重に浄化空間を張っておくため、だったみたい。
カイ様にも鑑定スキルがあると聞いているし……。何でもお見通しだよね。
部屋に戻ると、アイリーはすでに面談を終え、小刀を磨いていた。
アイリーの面談相手は、執事長。
ひとまずはお褒めの言葉を頂いたが、大半は小刀のスキルについて詳しく話すよう言われたという。
「はー、まいるよな、安全、安全って。
今後はお1人で行動なさってはいけません、だってさ!」
またまた、念を押されたみたい。
私も、リネンさんとの会話内容を打ち明ける。
すると、アイリーはしばらく考えるそぶりをしてから
「んー……。じゃあさ、そろそろ受けてみるか、ギルド任務!」
と提案された。アイリーは、すでに街のギルドに冒険者として登録しているという。
「慣れてランクが上がらないうちは、稼げるコインもそれなりだけど。
経験になるよな!」
「冒険者、かあ。私にできるのかな」
「できるできる。依頼は、自由に選べるんだ。アタシと2人で組めば、余裕だって」
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