決着……!?
気は、まったくすすまない。
だけど、私も召喚したフライパンで援護を試みる。
あくまでけん制のつもり。
「ア……アイアン・スプラッシュ(やや棒)」
フライパンを振り回し、近くにいた小柄な魔人に迫ろうとする。
しかし、距離を取られてしまい、なかなか近づけない。
ただ、こちらが数と形勢では上回ったからか、敵に焦りの色が見え始める。
そのまま、2人で追いまわしていると……
「ぐ……!」
小柄な魔人がうめいた。魔力の限界が近いのかも。
そこで、カイ様の氷魔法が続けて命中し、動きを止めた。
ちょっと考えてみたら、ほぼ無詠唱の攻撃魔法はズル……いや、強すぎる。
いつ飛んでくるか分からないんだから。
それに乗じて間合いを縮めた、アイリーの小刀も命中。
アイリー、めっちゃ嬉しそう。フリクトンさんに弟子入り(?)した甲斐があったね。
致命傷ではなさそうだけど、翼と足に当たっているから、この小柄な魔人はいままでのスピードは出せないだろう。ただ……。
追い詰められた様子の小柄な魔人は、何かに気づいた。
そして、柱へ向かって移動していく。柱の影では……若いメイドさんが震えている。
目的不明だけど、ロクなことではなさそう。
ただ、ここからじゃフライパンは届かない。
私はとっさに、炎をイメージし、クルクル、ヒョーイをやってみた。
想像よりも迫力のある炎が生成され、勢いよく飛んでいき、メイドさんと魔人を隔てた。
「!ひゃああ」
我に返ったのか、メイドさんは一目散に走り去る。逃げ足は速いみたいで助かる。
炎がかすめた魔人はなぜか、その場に崩れ落ち、動かなくなった。腰が抜けたかのような。
(あれれ、当たっては……ないんだけど?)
「よくやった。……その選択、後悔させてやる。ここからは本気で行くぞ!!」
大音量が、広間じゅうに響く。
耳がキーーーンとなった。
黒槍の魔人の逆鱗にふれてしまったらしい。
闇魔法の詠唱。威力がさらに高まったように見える、黒槍状の武器。
それは、カイ様に向けて放たれた。
一瞬の出来事で、反応が遅れる。
「カイ様!!」「ご領主!」
からくも避けたカイ様だったけど、黒い槍は腕をかすめたらしい。よほど痛いのか、腕をおさえている。
さらに、ニヤリと口元をゆがめた魔人は、再び闇魔法で引き寄せた禍々しいオーラを放つ黒槍を構え、カイ様めがけて滑空していく。
「 ………!」
アイリー、私が駆け寄ろうとした、次の瞬間。
「ガアァーーーーッ……!」
うめいたのは、魔人のほうだった。魔人の黒槍は、グレーの障壁に阻まれてカイ様に届かず。ザリウスさんの、灰色魔法障壁だ。
「……シャドウ・スラッシュ」
また、後だし詠唱。しかも、本人はわりと離れたところにいる。距離があっても届いちゃう障壁、つくづく強い。
反対に、カイ様の構えた剣が魔人の腹のあたりを貫いていた。反応からしても傷は相当、深そう。
さらに、このタイミングでリッドさん、執事長セラフィさんが駆けつけてきた。街での用事もそこそこに、来たようだ。メイドさんの転移魔法かもしれない。
セラフィさんの魔法が魔人たちを捕らえ__この緊迫した事件に、幕を下ろすことができそうだ。一同が、ホッと胸をなでおろした。
その後、カイ様が語ったところによると、小柄ですばしっこい魔人は新しく雇い入れた従者に『擬態』していたそうだ。……そういえば、このところメイドさんの間で噂になっていたっけ。超美形だと。
従者の姿でメイドさんの1人を誘い込み、気絶させて吸血中、目撃者が大きな悲鳴を上げた。
そこで、カイ様が駆けつけ、戦闘になったとのこと。
「それでは、この黒い槍の魔物……いや、魔人は?」
と執事長セラフィさん。それについては詳細不明だが、戦闘中の様子からして、恐らくは密接な関係があるだろうということだった。
「人に擬態する魔人……これは非常にやっかいな問題ですね」
リッドさんが深刻そうに言う。
「残念ながら、この領地だけでなく、王宮の城下町に至るまでも、日常的に事件が起きているのです。
若者の度重なる失踪、吸血による極度の衰弱、そして最悪は……。
ギフォの濃い日はとくに、報告が多いです」
と、すぐに執事長セラフィさんが応える。改めて、物知りなお方だ。
あれ……私が知らないだけ?
考えてみたら、転生初日なんて何も知らずに街をうろうろ歩き回って、けっこう危なかったかも。
リネンさんに声をかけてもらえて、よかった。
そのリネンさんが側に来ていた。すごく心配そうだ。
「お怪我の、具合をみますね」
と言うや否や、カイ様の負傷した腕に手を当て、治癒の魔法を唱え始める。
生命力と温かみを感じる、とても綺麗な魔法。
リネンさん、回復魔法も使えたんだ!かっこいい。
おそらく大事な局面だけで使うようにしているのだろう。
カイ様の後で、ルーヴァンさんも腰のあたりに魔法をかけてもらっていた。
ルーヴァンさんのは、ト〇がマッサージ受けてるみたい。おっと、笑っちゃダメ。
黒槍の魔人は、地下の鍵のかかる部屋に連れていかれるようだ。
……と。その姿が目の前でフッとかき消えた。
「!?くっ、いったい、どこへ……」
「逃げられてしまったのか?」
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