襲い来る魔人、共闘
煮えたかな~?って、屋敷が何者かに襲われてる?!
食べてる場合じゃない。
夕刻。何やら、屋敷が騒がしい。
_____イヤな予感がする。
騒ぎがどこで起きているか、確かめようと私は屋敷内を駆け足で見て回った。
原因はすぐに分かった。広間に、小規模だけど人だかりができている。
カイ様が、戦っているのだ。その相手は__魔物?
角のようなものが2本、頭にあり、目が赤く光っている。
しかも2体。1体は長身で、180㎝を超えているだろう。もう1体は、小柄だけどスピードが速い。
どちらもコウモリのような黒っぽい大きな羽を持っていて、全身黒いオーラ。さらに、仮面をつけていて、だいぶ不気味だ。
カイ様の、細身の剣攻撃をかわすのに広間の柱に飛び上がって、ベッタリと取り付く。
かと思えば、攻撃を仕掛けようと滑空をしている。
カイ様は氷魔法と雷魔法を使い分け、攻撃している。
魔法を使うところも、闘うところも初めて目にする。緊張が伝わってきて、頬を汗が流れた。
私のイメージだと、魔法は発動の時に何か唱えると思ってたけど、すごくサイレントだ。
よくみると、短く何かつぶやいている。いつものような温和な空気感がまるでない。それだけ、真剣なのだろう。
しかし、大柄の魔物は飛びぬけて戦い慣れているようだ。長い槍状の武器でほとんどの魔法を弾いている。カイ様が押され気味にも見える。
「ヒャー ハッハハァ!」
何か、腹立つ笑い声。黒槍の魔人は、完全に遊んでいる。
……そうだ、今日は確か執事長とリッドさんが街へでていて不在だ。魔法が使えるというリネンさんは多分、メイドたちを安全な部屋に避難させるのに手一杯なのだろう。
この状況、思う以上にマズそう。
でも、実戦の経験がない私が出て行って、役に立てる?かえってジャマにならないか不安。
「どした??」
ちょっとのん気な声が、背後から。アイリーだ。人ごみの後ろからひょい、と顔を出して確認した。
「はぁ?どうなってるんだ?まま、魔人?」
「魔人か!……ね、どうしたらいいと思う?」
と、私が言った時だった。
「アイアーーーン・エッージ!」
野太い声が響き渡ると同時に、銀色の刃のようなものとボリュームのある身体が宙を舞った。
ルーヴァンさんだ。いつもの様子、豊満な身体からは想像もつかない素早さで、一気に間合いを詰める。
その勢いで、小柄な魔人に向かって大きな包丁を振りまわした。ただ、素早くかわされ、かすり傷をつけることもできない。
「目的はいったいなんだ!白状しなさぁーい!」
次第に息が上がりながらも、圧をかけていく。
こんなときも圧をかけるスタイルは健在だ。
それに引き換え、魔人達には余裕が見られる。ルーヴァンさんの問いかけに応える様子もない。
と、そこでアイリー乱入。あいさつ代わりに、小刀を投げた。
しかも、連投。初めて見るワザだ。あたりはしないけど、かすめさせている。
さっきから、軽く準備運動みたいなことをしてたから、行きそうだとは思っていた。
唐突に、ルーヴァンさんがバテた。日頃が運動不足……食べ過……いやいや、あれだけ激しい運動をしたのだから、当然だ。
小柄な魔人が、その隙につけこみ、滑空からの、吹き飛ばしを仕掛けてきた!
「ぐううっっ!!」
苦しそうなうめき声。ルーヴァンさんが、壁に勢いよく吹き飛び、身体を強打した。さらに続けて__
「ダァーク・ピン」
こざかしい呪文とともに、黒いオーラをまとった無数の何かが、ルーヴァンさんめがけて放たれる。
……?効いてないっぽい。と思ったら、ルーヴァンさんの周囲をグレーの障壁のようなものが覆っていた。
「アッシュ・ドーム」
灰色のローブにマスク。ザリウスさんだ!彼の足元には、フェルナもいる。
「ヴァンッ!!ウウ~~~」
小さな体で、懸命に吠えている。……こんな時だけどちょっと可愛い。
そこで、ザリウスさんは意外にも、魔人を鼻で笑った。
「フッ……。いまのは闇魔法?つねられた程度の威力だ。俺の結界に値しないなあ!」
結界を張った術者には、そんなことも分かるらしい。
(あぁ~、ピンって聞いて、洗濯物に使うピンチを連想しちゃったんだよね)
しかも、ザリウスさんは詠唱が腹話術みたいに『ちょっと、遅い』
わざとやっているのか分からないけど。あれって、やられるほうにとっては地味にイヤなやつ……。ザリウスさん、味方でホントによかった。
「……ッ!ダァク!ギフォォッ!」
よほど悔しかったようだ。魔人がすごい形相で再び、仕掛けてくる。あたりにギフォの濃い版みたいなものが立ち込める。
倒れこんでいるルーヴァンさんが、
「エッーホ、エッホエホ!」
とちょっとむせだした。むせかたちょっと可愛いっていう。
「アッシュ・スラッシュ」
ザリウスさんが唱え終わる前に、あっさりとギフォは払われた。
「ふーん、なんだこれは?ちょっと湿っぽかったけど」
またしても煽るザリウスさん。
魔人の顔がめちゃくちゃ悔しそうにゆがんだ。
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