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教育者×フライパンスキルで、ゆるっと領地再生します!?  作者: 宙子
友と過ごす刻

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魔法使いザリウス、使い魔フェルナ

 

 急ごしらえだったけれど、温かい食事を取ったパーティメンバーの表情は、だいぶ明るくなった。

 皆の様子に安心したのか、魔法使いの男がこちらへ来て、口を開いた。


「俺たちは、旅の途中で何度も思わぬ強敵に襲われ、やっとのことで逃げてきました。助けて下さった上に、こうして受け入れてくれて、感謝しています」


 自己紹介によると、男はザリウスというらしい。

 話によると、領地の巡回(じゅんかい)中、知らせをうけたカイ様も駆けつけ、応戦したようだ。


 カイ様は本当に、困った人を見捨てない。自ら(おもむ)く行動力も相当なものだ。ただでさえ多忙なのに。

 すかさず、執事のリッドさんが応えた。


「気になさらないで、大変でしたね。

 ところで、魔物はどんな様子でしたか?」


「お恥ずかしい話、全員が逃げ切ることに精いっぱいで。……ただ、大きな黒い羽のある、人型の魔物でした」


「奴ら、空から襲ってきた!不意(ふい)打ちだったんだ。ザリウスが大魔法を使わなかったら、全滅してたよ」


 偵察(ていさつ)役らしい女が、憎らしそうな顔で口をはさんだ。


 こんな時だけど、大魔法というワードにすごく興味をひかれた。やっぱり、スケールが大きい、派手(はで)な魔法なのかな。すごく見てみたい。……今は不謹慎(ふきんしん)か。


「運が、よかったのです。ヤツの(やみ)属性との相性がよかった。いち早く、フェルナも知らせてくれましたし。何より、カイ様が駆けつけてくださったことが大きいです。あのまま深追いされていたら、今ごろは……」


 フェルナというのは、いまも足元にくっついている、犬のことのようだ。ザリウスさんは、急に黙り込んでしまった。


「闇属性……そうですか。貴重な情報、ありがとうございます」


 リッドさんの表情が(けわ)しい。


 と、ザリウスさんが、急にその場で倒れこんだ。


「……!」「ザリウス、大丈夫!?」


 すぐに仲間が駆け寄り、介抱(かいほう)している。

 フェルナもくるくると近くを歩き回り、不安そうに鳴く。


「気にしないで、大魔法の副作用みたいなものです」


 と、白魔法使いの女が言う。ザリウスさんは、ベッドのある部屋へ連れていかれた。

 _____________


 私は厨房へ戻り、即席(そくせき)で鹿(っぽい動物の)お肉でジャーキーを作った。そして、お手柄だったというフェルナに差し出す。


「フェルナ、お腹空いてなーい?」

「ウォン、ウォン!」


 しっぽを振りながら、嬉しそうに食べてくれる。こうして見ていると、可愛いワンちゃんという感じ。


「あっ、可愛いなぁ!」


 アイリーも駆けつけ、フェルナが食べ終わるのを見計らって、背中のあたりをなでなでしていた。犬が珍しいのか、メイドさんも何人か近くへきたので、手招きをする。


「わぁ、いい子だね!」


 代わる代わる、ジャーキーを少しずつあげていた。


挿絵(By みてみん)


「あのぉ、この、ジャーキー?どうやって作るんでしょう」


 おずおずと聞いてきたので


「これは、フライパンでできるよ!お肉を細長く切って、乾燥するまで焼くの。ワンちゃん用は、お塩なしでいいんだ」


 と、簡単にコメントした。アイリーがそわそわしている。自分用を作ってみたくて仕方ないんだろう。



 しばらく後。別室で食事を取ったらしいザリウスさんが、戻ってきてこんなことを言い出した。


「先ほどは、驚かせてすみません。……お恥ずかしいです。とても、美味しいお食事でした。おかげで生き返ったようだ!特にあの、パンにとろーりとした白い……」


「チーズののった、ピザでしょうか?おほめに預かり、光栄です」


 ズイッと前に進み出る料理長ルーヴァン。得意げな顔をしている。

 本当にお調子者なんだから。(にく)めないけど。


 それから、執事リッドはザリウスと話し込んでいるようだった。


 お皿を洗いながら聞き耳をたてていたところ、ザリウスのパーティ一同は、しばらくこのお屋敷に滞在するようだ。


 これも、カイ様の計らいなんだと思うと、ますます信頼感が高まる。


 __________________


「ううっ……」


 お皿を片付けていると、かすかにすすり泣きが聞こえてくる。何だろう?


 声のする方へ行ってみると、貯蔵庫だ。そこには、ひょろっとした男の子がいた。私が声をかけようとすると


「ごめんなさい!僕……(かま)の火を見てなくって。居眠りしてて」


 なるほど。この子が火を絶やしちゃったらしい。もう夜も遅いし、疲れていたんだろう。ムリもない。

 私は、ニッコリと笑顔を作った。


「いいんだよ。誰でも失敗はするの。もちろん私も」

「お姉さんも……?」


「そうだよ。そうやって、少しずつ上手くなっていくんだから。次からは、気を付けようね」


挿絵(By みてみん)


 お姉さん、という言葉が乾きぎみな心にちょっとしみた。

 しばらくの間、鼻をすする男の子のそばにしゃがんで、おしゃべりした。


「思いついちゃったんだけど……時間がある時に火をおこす練習をするのはどう?」

「えっ、ボクにはまだ任せてもらえません。危ないって」

「できると思うなあ」

「……やってみたいです」

「うんうん。ルーヴァンさんに聞いてみるね」


 男の子は次第(しだい)にスッキリとした顔になると、何度か頭を下げてから戻っていった。


 うーん、少し疲れた。

 お皿洗いの途中、ボーッとしていたらカップを落としてしまった。ガシャーン!とハデな音が(ひび)く。近くにいたブルノさんに、ギロリとにらまれた。おっと、気を付けよう。


 さっきの男の子もまだいたようで、私がカップを落とすのをバッチリみられた。大きな目をパチパチとさせている。


「何やってんだよ!」


 駆け寄ってきたアイリーが、苦笑しつつ(ほうき)を渡してくれた。


 私は箒でその場を手早く()いて、破片をかき集める。頭をかいてから、再び洗い物に集中した。



 翌日。朝イチで料理長のところへ、火おこしの件を話にいった。ルーヴァンさんはしばらく考えている風だったけど


「ナガメ、貴方がちゃんとついていてあげるなら。それと、他の子にも同じことをしてあげてください」


 と言われた。早速、今日から教えよう。すぐに知らせに行く。先に厨房にきていた男の子は、私の話を聞くと笑顔を見せた。他の火おこしできない子も加わり、ちょっとしたイベントっぽくなった。


 黒く硬い石に、火打ち石を打ち付けて、火口になる麻の繊維(せんい)に、火花を飛ばす。アイリーも、途中参加で手伝ってくれた。

 赤くなった火口に息を吹きかけていき、パッと火が燃え上がると、ワッと歓声が()いた。


 いつの間にかやってきていたルーヴァンさんが、料理人を集めて言う。


「慣れていない子の火おこしは、忙しくない時だけです。それと、経験のある者が手伝うか、見守るように。もし、万が一何かあった時は……」


 そこでルーヴァンさんはためた。

 皆が静かに息をのむのが分かる。


「全力で、火を消すことっ!その場にいる、全員で!」


 うーん、さすが。ただ、ルーヴァンさんが張り切ってお手本を示そうと、近くの(おけ)の水をバシャアァァン!とぶちまけた。おかげで、お昼まで()き掃除に泣かされた。

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