第三十七話 -組織は陰謀の塊-
久しぶりの投稿になります。
ちょこちょこ執筆してはいますので皆さん生温かい目で見守ってください。
「以前から思っていたのですが、ナークの料理は見慣れないものが多いですね」
と、俺がこっそり素材同様どこかに仕舞っていたナケナシの貯蓄での料理を食しながらそう呟いた。
よくよく考えてみると俺がこの世界に来てから食したモノは奇抜なモノが多かった。
――と言ってもマスターの料理だけなわけだが……。
緑色のアレは最早俺からすれば料理どころか食物であることさえ疑わしい域なのである。
認めたくはないが味は美味しかったのだけれども。
この世界の食材は、以前の世界になかった味がある――という訳ではない。
味自体はどの食材もどこかで食べたことあるような味が多い。
俺がまだ出会っていないだけの可能性のほうが高いけれども。
そうは言っても全く同じというわけではない。
寧ろ全くの別物だろう。
以前の世界の食物と比較してこの世界の食物は、味と見た目が合致していないのである。
俺の世界がイス取りゲーム開始時の配置であるとするならば、この世界はぐるぐる回って適当に座った状態のイス取りゲームである。
椅子が味で人が見た目という所か。
別段、逆で人が味で椅子が見た目でも表現上差し障りないが。
何にせよ、この世界の食材は混乱を極める場合がある。
何せ、林檎にしか見えないものが唐辛子とか砂糖の味である可能性があるからである。
一番ひどかったのは、苺だと思って食べてみたらそれはどうも紫蘇の味であった時であった。
臭いは苺でも紫蘇でも無かったので予想できるはずもない。
違う味であるだろうと予想こそできるが、苺に似た何かじゃないかと思っていたのである。
この差異はそれはもう酷いものである。
サンタを信じる夢見る子供に紛争地の前線を見せるようなものである。
だから、料理自体は見た目と味の組み合わせが変わるだけで同じ様な物があると思っていたのであるが、どうもそうではないようだ。
運がいいのか悪いのか。
例えば、バナナは腐りかけが美味しいという。
だけれど、腐ってしまったら大変なことになるものがあるだろう。
例えば鮮度とかいって差別化を測る魚等の肉類だ。
もし、これにバナナの味が割り振られていたとしよう。
するとどうなるだろうか。
腐らせた際の味はおいしいものかもしれない。
だが、味は良くとも腐った魚やら肉は食すべきものではないことは明白である。
某不思議のダンジョンに出演していた場合、満腹度か元気の最大値が下がるどころかhpも低下して見せるだろう。
それ程のものである。
そういう事から、以前の世界では味わえたものが味わえなくなる――何てこともあるのだ。
その逆も然り――
当然、あるにはあるのであるが、そもそも発見が難しいし時間がかかる。
そのため殆ど出会えてはいない。
ベヒス嬢が食す料理はそんな中の俺の苦肉の策である。
形状は味付けした木の実に味付けした板みたいなものを挟んでいるハンバーガーとも呼べない何かである。
が、それは元の世界で言うところのハンバーガーの味なのである。
この世界は、単純な味の変化はしない。
もしかすると、味と栄養の組み合わせも違うのかもしれない。
幸いは、この世界の住人と俺の味覚がほぼ共通しているということだろうか。
この世界の住人が上手いものは基本的に俺も食せる。
――口にあうかはまた別だけれども。
単純な味の変化ではない――俺がこう述べるには理由がある。
というのも、先のバナナを再度例に上げるのであれば、腐らせれば腐ったバナナの味がするとは限らないのである。
腐らせると肉の味になるかもしれない。
もしかすると、泥の味がして食べられるようなものではないのかもしれない。
その様に滅茶苦茶な変化をしてみせるのである。
魔導書によると、どうも魔力による作用らしいのだ。
少なくとも以前の世界は魔力が少ない、または皆無であったらしい。
俺は平和な世界に生まれていたようである。
そんな訳で、この世界での創作料理は地獄を見る可能性があるため、一定水準以上の料理が出来たら、それを主に食という進化を見せない停滞を望む食生活になりがちらしいのである。
――今から思うと、最初に泊まった宿屋の料理も無難そうなものばかりであった。
そういう訳だから、この世界での料理の種類は殆ど無いようなのである。
そんな中でのハンバーガーは新鮮に感じられたのではないだろうか。
「たまたま発見しただけだよ」
宇美音子さんが何か余計なことを言って、俺が異世界人だと周知にならないかと心配していたが、黙って食っているので杞憂そうで安心するばかりである。
個人的にはバレても問題ないけれど、現在、漏らしかねないと考えてしまう所謂パーティ以外の人がいるのである。
サイレンはそうバラすとは思えない人種ではあるが、やはり付き合いが短いという事は欠点であるようである。
人は形の見えない"時"という概念の影響を多大に受けるものである。
それは今の様に他者への認識も例外ではないのである。
博愛主義者になろうと思えばこれを超越する事が条件の一つになるであろう。
そういう訳で俺は博愛主義者に慣れないのである。
――閑話休題。
たまたま発見したと言われてはそれ以上追及できないと何か感じつつも思ったのか少々訝しげ成分を加えた表情でベヒス嬢はそうですか、と頷いた。
先にも述べた訳だが、俺自身はこの世界から見て異世界出身であるという事がバレても問題は皆無なのだけれど、ややこしい事や面倒な事が発生するかもしれないと思われるので暈したり逸らしたりとしている訳だ。
そんな訳で誰に話して誰に話していないかとか覚えていないのである。
もしかすると、誰にもバレない様に話していないかもしれないし、もしかすると今のやりとりは完全に蛇足であると言わざるを得ない程に完膚なきまでにバレているのかもしれない。
――本当の所、どうだっただろうか。
話していないならば、ベヒス嬢からすれば俺の事は何もわからないという事になるのである。
俺的に、話した事を忘れてるってのはなんだか宜しくない様に思えた。
と、言う訳で後日それとなる話しておく事にしよう。
俺だったら旅仲間の事を知らないままで他人以上の立ち位置に持っていけないのはあまり好ましい事ではない。
さて、この話というか思考はここまでにしておこう。
このまま続けたとしても漏れなく堂々巡りになるだろうし。
「まあ、気に入ったのならまた機会があれば腕を振るう事にするわ」
「ありがとうございます。では、直の事、今回の件は成功させないといけませんね」
――成功、か。
それがどの意を指すかに寄るだろうが、おそらくベヒス嬢は死ぬな、そう言いたいんじゃないだろうか。
「そうだな、んじゃまあちゃっちゃと終わらせてまた今のメンバーで飯でも食おうか」
「なー君のかっこつけー」
俺が地味に良い台詞を言った所、それはすぐさまブチ壊された。
犯人は言うまでもなく宇美音子さんである。
ふざけるのは食事量だけにしてほしいものである。
いやいや、食事量だけでも大迷惑なのだが。
――うん、全体的に自重してくれ。
「別に恰好はつけてるつもりない。明らかに俺のキャラじゃないしな」
俺には似合わんよ。
というかな、この世界に来てから俺の恰好いいシーンは皆無で高所関連の出来事により意識を手放し敗北を喫する等の恰好悪いシーンは満載なのである。
寧ろ俺は格好悪いのだ。
宇美音子さん、俺のこの思考を読んでるのかどうかしらないけれど、ニヤニヤしながらこっちを見るのは遠慮願いたい。
凄くみじめな気持になる。
何せ、宇美音子さんは何だかんだ言って明らかに俺より活躍しているのである。
「にやにやと嫌らしい顔を浮かべて俺の気分を奈落の底へ貶めるのは止めてモス風味のこれを食べておとなしくしてなさい」
と、俺は亜空間かなにかは知らないがどこからともなくハンバーガーのお代りを取り出して宇美音子さんの口の中に放り込んだ。
宇美音子さんはむぐぐ、と多少苦しさを表わす声を発して見せたが顔は笑み満載であったので俺の不満は一向に改善される事は無かった。
寧ろ、不満は増大する方向である。
ついでにエンゲル係数も増大である。
幸いは現在の食事の構成物質は主に貯蓄からなるので財布は痩せる事も無く太る事もないという事だ
。
もし、関与する形式であれば間違いなく痩せる方向へと変化を見せていただろう。
それも、みるみるうちに、という言葉を体現せんというばかりである。
とは言っても、既に痩せ細っている為、hpバロメータは真っ赤っかになってしまっているので致命的状態であるのは変わりないのだが。
その真っ赤になり具合は無限地獄に投入されてもお目にかかれない程に紅蓮であるだろう。
どうやら宇美音子さんはハンバーガーの投入に気を良くしたのか更なるハンバーガーを要求してきた。
それに刃向かう事のみを目的として無視を極め込んでみたがニヤニヤ顔を展開して見せた。
致し方なくわんこハンバーガーを実施する事にした。
着々と在庫が減っていく為後日食材を自主的に入荷せざるを得ないなと未来の面倒に付いて俺は頭を痛める事になった。
そういう訳で俺は後日の食材入荷作業の負荷を緩和する為に今多少入荷しておく事にしよう。
ここは森なので食材に困る事はないだろう多分。
断言できないのは森が文字通り壊滅的であるので自然が維持できているかが甚だ疑問であるからである。
とか何とか言ってみた所で現実は変化を見せないので歩を進めてみるしかない。
森の中心部に位置する場所が直線状に消失しているので自然のサイクルが乱れていない事を願うばかりだ。
消滅領域は、森の消滅前全体の総量と比較すれば大凡5分の1に匹敵するのである。
それは心配してしかるべきだろうし、俺の心境も理解してくれると信じている。
俺の家の5分の1が突如消失したら発狂しているのかと思われるレベルで暴れるのは間違いない。
森の動物たちが暴れ狂わないのが不思議である。
野生の動物たちは以前の世界とは違い、魔物であるので人間に物言える存在なのだがその状態なのである。
文字通り物言える存在もいれば以前の世界同様に言語を繰る存在でない場合もある。
が、総じて言える事はあるのである。
肉体言語という言語を持ち前の戦闘能力で繰る事が可能なのである。
――主に俺と宇美音子さんが殺気を放っている事に鎮静の原因があるのかもしれないが、雑魚なオッド辺りは捕食されていても大丈夫そうなのだが。
近くにいるから。
俺達が近くにいるからという原因はありそうではある訳だが、塔の内部の魔物の様に殺気だっているという訳でもないのである。
これは塔内部の魔物の殺気を感じた瞬間に思うべき事柄であった。
何にしても余計な戦闘が発生しそうにない事は大歓迎だ。
今まで、異常に戦闘回数が多かったからな。
牢獄島に引きこもっていた時とは大違いだ。
というか、この世界が物騒過ぎるだけなのだが。
以前の世界で完全に敵対しているヤツとガチバトルしたのって両手で数えられる範囲しかないぞ。
修行という名の虐殺は何度もあったけれども。
――木の実を漁っていて分かったが、宇美音子さんがこの森を破壊してからそれにより発生した森の傷跡付近に魔物は来ていない様である。
というのも、衝撃で落ちた木の実が放置されたままなのである。
俺が魔物なら真っ先に拾いに行くがな。
今なら俺らが殺気を飛ばしている為納得できるが、通り過ぎたらこの場に出現しても問題ないはずなのだが。
もしかすると、俺たちを避けているのではないのかもしれない。
状況から考えてこの森の傷跡を避けているのではないだろうか。
そうでないならば現状の情報のみでは予想ぐらいしかできず、断定までは至れない。
当初考えていたのは、先に述べた俺らの殺気から逃げているというモノ。
他には宇美音子さんに渡した武器群の魔力量である。
最初は鞘で武器群の魔力を一時封印していたのだがどうも宇美音子さんはお気に召さなかったらしく鞘は全てどこかに捨てられてしまった為最初にこの森に来た時には恐らく魔力は解除されたままだったのだろう。
とは言っても、実際に使用するまではそれ程では無い。
が、異質さというのは感じ取れるはずなのだ。
俺は亜空間に収納している性質がらその辺には疎くなっている。
臭い匂いも嗅ぎ続ければ鼻がおバカになって感じなくなる様なモノと似ている。
それ故に気が付けなかったのだが、一応人間でも敏感で魔力センスがあるヤツは薄々気が付けるものであるので放置できないと今は使用時以外は鞘無しでも封印できるように細工を施してある。
宇美音子さんに教えると何だかんだと文句が来そうなので内緒で行った訳なので誰にも話せないが。
森が破壊されたとなると通常はその場所の様子を見にくるものなのだが、何やら矛盾が蔓延している雰囲気である。
何やら気になる所で、知っておいた良い雰囲気満載だが、どうしようもない為放置する事にする。
さて、俺が食材集めに来たのは、そのまま食材が不足したため補充という面もあるが今の様に思考を展開する為でもある。
というか、当面の問題ぐらい答えをある程度絞っておかないとどうしようもない。
突如答えを求められてわかりませんではこの世界での俺の立ち位置から考えて宜しくないのである。
当面の問題――
厳密には俺の問題ではないのだが思考しておく必要があるだろう。
それはサイレンの扱いである。
現状、街へと帰還すべく歩を進めている訳だが、おそらくサイレンはホーネイにとって何らかの鍵やら弱みを握っているのではないだろうか。
後者の可能性は扱いからして極めて可能性が低いが、前者はあり得る。
例えば、家宝に伝説の剣みたいなのがあって、サイレンはそれを受け継ぐ一族の最後の一人で死んだらホーネイが奪える状態にあるとか。
例えば、サイレンは一度死ぬと幽々な白書の魔族大覚醒みたいな事が発生して遠くない内にあるであろう魔族戦でかなり貢献できる存在になるとか。
例えば、サイレンは凄まじい財産を持っていて、他に親族がいないからこのまま死んだらホーネイに寄付されるとか。
ぱっと思いつくのはこれぐらいである。
何故これの考えに至るかは単純な話だ。
ホーネイが明らかにサイレンを殺そうとしているという事だ。
しかも、世間体的にホーネイの評価が下がらない様に遠まわしにだ。
おそらく、俺がオッドの頼みを受諾せずに助けが来なければサイレンは今頃魔物の夕食だっただろう。
そして、この任務はサイレン一人である必要はないし、態々こなさなければならない任務でも無い。
正直、なくても大丈夫なのだ。
サイレンは音響魔法が使用できないとのことなので戦力としては認識されていない。
それ故に殺すなんて安直で意味の無い事はしそうにもない為、確実に裏があると考えるのは当然であると思う。
先の案で一番可能性がありそうなのは、財産関連だろうか。
伝説の武器があるなら今すぐ使ってるだろうし。
誰か固有の存在しか使用できないという限定条件があるならば、ホーネイの事実上死ね宣言であるこの任務をこなそうとしているサイレンであれば普通にホーネイに寄贈するだろうからなぁ。
まあ、細かい事情でそれが出来ないとかはあるかもしれんが。
多分だけれど、サイレンが持つモノの中で確定的な価値がないが、価値が発生する可能性があるものか、絶対に必要ではないが、あった方が良いというモノがあるならば十中八九それが狙いなんじゃないだろうか。
それだったら個人的に気に食わないし、サイレンの意見次第に成りはするが援助しなくもないかもしれんな。
多少、考えておく必要がありそうである。
「さて――」
何だかんだと木の実やらを補給できたので戻るとしようか。
多少急ぐとして明日には確実に街に到着しているので準備をしておこうかな。
下手したら今度こそ指名手配にかもだし。




