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魔王物語  作者: ragana
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第三十八話 -聖人と同じ風格でもカスはカス-

最近、戦闘ばっかりだ。

きっと、終盤に近付いているんだね

「サイレンさん、任務はどうしたのですか?」

 街について――と、言えればよかったのだが、そこまで行かず森を抜けた辺りでそう声をかけられていた。

 幸いにも俺に声をかけた訳ではないのでスルーしようと思うわけだが、残念ながら現在の俺の目標は魔族がいる大陸へ行くことである。

 それを達成するのに必須となるのは現状、サイレンを無事街へと送り届けて飛行船を入手というかレンタルすることである。

 更に、依頼人であるオッドが身構えている。

 どうも、関係的に宜しくない様である。

 現状、幾つかの理由により、どちらに付いてもいい場合、オッドとサイレンを擁護してもいいと判断しているため、俺もやむなしで立ち止まる。

 見てみると、俺以外全員が既に立ち止まっているようであるので、先の選択肢で『立ち止まらない』を選択していれば漏れ無く空気を読めない阿呆になるところであった。

「……失敗しました」

 サイレンは苦虫でも噛んだ――現在進行形で噛んでいる様な苦渋の表情を浮かべそう言った。

 まあ、あんだけ魔物がいりゃ、普通ミスるわな。

 俺がサイレンの立場ならそもそも拒否ってるわ!

「それでノコノコ帰ってきたのですか? 塔がある限り貴女は任務を続行すべきでしょう」

 と言われサイレンからは暗い空気が溢れ出る。

 ふむ、ふむ。

 簡単に説明すると、この急遽現れた頭も服装もザビエルみたいなおっさんは事実上サイレンに死ねと言っている糞野郎ってことだ。

 任務内容が重要であるならばわからんでもないが、せめて単独で突っ込ませるとか阿呆みてえな事はすべきじゃねえのは明白である。

 俺としては上記のように色々と思うところはあるわけである。

 客観的に見えても正直、おかしい部分は目白押しであるのだ。

 が、俺は現状部外者である。

 部外者であるのでここは傍観に徹する方が話をかき乱さないだろうという判断である。

 心配であった宇美音子さんもどうやら空気を呼んでくれているようで沈黙を保っている。

 口がうずうずしているのであまり期待はできないが――。

「申し訳ありません……」

 と、下げる必要がないんじゃないかと思わざるをえない頭を下げるサイレン。

 まー、見るからにこのザビエル野郎はサイレンの上司であるのでおそらくそういう理不尽な現象は自然に発生するのだろう。

 そして、眼前で繰り広げられている理不尽応対劇もその一端に違いない。

 サイレンが我慢して頭を下げているので俺達はそれをぶち壊さない様に沈黙を保つべきなのである。

 再度言うが、宇美音子さんは口がうずうずしているので時間の問題である。

 猶予はあまりなのである。

「謝罪必要ありません。申し訳ないと思うなら、今すぐにでも引き返して任務を達成しなさい」

 事実上の死刑宣言ですねわかります。

 まあ、流石にこんな任務は拒否――

「――わかりました」

 マジかよ。

 ワザワザ死刑台に登るって言ってるんだぞ分かって言ってるのか――?

 いや、わかっているんだろうが。

 余程、このホーネイという組織に弱いらしい。

 命を投げ捨てる程に。

 組織に属した覚えがない俺に取っては信じられないことである。

「いい加減にしろ!」

 という怒声。

 オッドが息を切らせている。

 怒声はオッドからによるものらしい。

 まあ、サイレンはオッドに取ってそこそこ重要な人物な様なのでブチキレるのは理解できるが。

 いやはや、まあ我慢の限界だよねやっぱり。

 俺がオッドの立ち位置なら間違いなく、サイレンの代わりにあのザビエル野郎を塔に放り込んでいるところである。

「オッド主任といえども、口を出さないでいただきたい。何せ、彼女はホーネイの姫君直々の命令を反故にしたのですから」

 うぇ、この糞命令、このザビエル野郎の独断とかじゃないのかよ。

 ホーネイって組織、マジで腐ってるなぁ。

「――っく!」

 と、オッドは黙る。

 いやいや、反抗できないのかよ。

 ――それ程にこのザビエル野郎の地位が高いのか、それともホーネイの姫君直々の命令とやらが重要視されているのか。

「あー、オッド? 俺的に目的達成してえし助力しようか?」

 と、若干ボリュームを落としてオッドに話しかける。

 オッドは苦渋の表情でしばしの沈黙を保ったが、じきに首を立てに振った。

 サイレンもそれを見ていたが、止めはしない。

 ふむ、この糞ザビエルよりかはホーネイに反抗的か疑問を抱いているようである。

「あー、あー、すみません。そこのザビエルさん」

 と、ザビエル糞野郎に声をかけると、こちらを向く。

 うむ、うむうむ。

 見れば見るほど、歴史の教科書に載っている例のあの人にそっくりである。

 転生体なんじゃないかと疑問を抱かざるをえない程である。

 さてさて、今は問題を解決するとしよう。

 よくわかんねーザビエルの転生体についての考察などどうでもいいのである。

「なんですか?」

 小首をかしげてくるザビエル。

 どの動作を取ってみてもイメージ通りの挙動であると言わざるをえない。

 そんな挙動である。

「塔がある限り任務に従事しろってことっすよね?」

 ザビエルに対する俺の発言はすべてチンピラ的な発音であると思っていただければ幸いである。

 それを十分に再現できていたのか、ザビエルの顔が怒りで引き攣っている。

 コレを見る限り、普段どれほど人の上にアグラを掻いていたのかわかるというものである。

 そんなザビエルが首を縦に振るのを見届けると俺は口の端が釣り上がるのが分かった。

 さて、塔を破壊してしまおうかな――

 直後、轟音が周囲を襲った。

 あれあれ、俺はまだ塔ブチ壊してないぞ!

 そもそもまだ何も行っていない。

 だが、塔の方を見てみるが、その姿はない。

 こうなると、心当たりというか諸悪の根源は基本的に独りだけである。

「我慢できなかったんだよーゴメンねなーくん」

 語尾に☆やら♡やら♪の記号が付属されてもおかしくないと判断できる猫撫で声で言ってきても場は和みはしない。

 ほらほら、激しくやったからかザビエルがキレてるじゃないか。

 頭髪の間から除く頭皮も真っ赤にしているじゃないか。

 これは相当にご立腹に違いない。

 うむ、ザビエルの後方から明らかに武装している集団が現れたな。

 こりゃ、間違いなくご立腹である。

 これは、諸悪の根源である宇美音子さんに押し付けるとしよう――

「頑張ってね、なーくん」

 再度、語尾に色々な記号が付属してもおかしくない猫撫で声で言っても許されはしない。

 後ろの下がりやがって。

 俺に全部押し付けようという魂胆が見え見えである。

 せめて一緒に対処しろや。

 そして、一緒になって俺を壁にするように後方へと移動しているその他の面々も同罪である。

 ちょっと躊躇しているべヒス嬢は罪状軽減してやろう。

 ニヤニヤしているオッドと――サイレンもニヤニヤしてるな。

 この二人は重罪に違いない!

「なーくん、悠長にこっちに恨みの念を飛ばしてて良いのー?」

 ニヤニヤ顔の宇美音子さん。

 それが意味するのは――

 背後を見ると、武装したむさ苦しい男共が襲いかかってきていた。

 当人であるサイレンとオッドが参戦しない臭いのになんで俺が戦わないといけないんだよ。

 そう思うわけだが、世の中には理不尽な出来事は多々あるのである。

 これもきっとそのひとつだ――

 そう思わないとやってられない事はあるのである。

 寧ろ、ポジティヴ思考でいこうじゃないか。

 うん、音響魔法の使い手が集うホーネイと戦えるのは、音響魔法の使い手と戦ったことのない俺に取っては幸いなんだな。

 まあ、魔族は使わないだろうから役に立たないんだが。

 それに、俺は生憎とバトルジャンキーでもないのであるが。

 目と鼻から雨が振りそうである。

 いや、雨程度の表現で収まりきらないかな。

 下手すりゃ鉄砲水とか土石流のレベルである。

 音響魔法と相対したことがない事で喜べるのはバトルジャンキー。

 なら、バトルジャンキーではない俺はどう考えるか。

 簡単な話、手の内がわからないどうしたら良いのかわからない、下手すれば足元すくわれて死んじゃうよっていう相手である。

 何気に身の危険を感じるわけなのだ。

 少なくともあのザビエルがそこそこ位が高い。

 事実、ザビエルが襲いかかってきている武装集団を指揮している様に見えるし。

 となると、そこそこ音響魔法を使えるかもしれないなぁと思わなくもない訳で、魔道書を展開したらなんか感づかれるんじゃないだろうなと思わなくもないのである。

 魔導書を展開出来ればあらゆる音響魔法を把握して対抗策を知り尽くせるんだけど、その選択は安全策でありながら最善策には思えないのである。

 今更、魔道書ばれてもいいんじゃねえのかなって思わなくもないけど、手札を切らないことは命綱を残せるってことだしなぁ。

 武装集団やら武装したむさ苦しい男共とばかり表現しているが、その武装は一般とはやはり違うものである。

 一見すると只の西洋騎士である。

 全身を騎士甲冑で覆っているし、両刃剣を携えている。

 剣は片手持ちのそう大きくない剣であるが、相手の首を掻っ切るには十分――そんな、死を作成するに当たって十全の牙を持っているのである。

 これだけの表記であれば先も述べた通り、よく居る――いやいや、よくは居ないが――西洋騎士である。

 一般が抱く西洋騎士との相違点は携えている剣にある。

 よくよく見てみると、弦が付いていたりとどこと無く弦楽器を想起する形状や特徴を兼ね備えているのである。

 楽器という面で見てみると、着込んでいる甲冑も吹奏楽器の様な箇所等、何らかの楽器の形状や特徴を兼ね備えたモノが見受けられる。

 音響魔法――

 正直、魔道書なんぞ使わないでも多少予想はついているのである。

 地味に漫画とかに出てきそうな名前だし。

 と、思考に没頭しすぎるのは宜しくない。

 現に、目前まで騎士が振り上げた剣が――楽器なのかもしれないが――迫ってきている。

 剣を受け流して、カウンターをブチかましてやろうと考えたが、せまる驚異の数が多すぎる気がしたので考えを改める。

 密度で言えば、きっと東京の人口密度超えてるなこれは。

 幸いにも、まだ迫り来る途中であるので退避経路は十分にある。

 敵の配置と筋肉の付きからから見て後方へ回避を試みれば追撃はない――そう勘が言っているので後方へと滑るように移動した。

 足も動かさずに文字通り滑るように――傍から見れば幽霊よろしく恐怖映像でしかないが――後方へと退避した。

 ――瓦斑流、地滑り。

 武装集団からはそれに対して驚愕の雰囲気を滲み出していたので逃げ切ったと思ったのだが、後方から妙な大気の動きを感知し、更に横へと滑るように移動した。

 見れば俺が先ほど居た場所には斬撃痕。

 それだけであるならば、風魔法の一言であったのだが、何やら違和感を感じた。

 そんな思考をしている間に背後に再び妙な大気の動きを感知。

 無論、先の斬撃痕がある為、先程より真面目に回避をする。

 右へと滑りつつ後方へと回転し攻撃を視認しようと善処してみる。

 が、攻撃は瞬間的なものなのか見えたものは斬撃痕のみである。

 武装集団の誰かが隠密行動で背後に潜んでいた――その考えは遮蔽物があまりないこの場では現実的ではない。

 それに、気配も感じない。

 攻撃の瞬間は人一人以下の気配は感じた。

 もしかすると、使い魔的な何かなのだろうか。

 まあ、何にしても――もう慣れた。

 武装集団は最初のように突貫はしてこなくなった。

 一度であの戦法は通用しないんじゃないかと考えたのだろう。

 指示しているのはザビエルであるのでザビエルを褒めるのは個人的にやりたくはないが、良い選択だと思っておこう。

 再度言うが、ザビエルは褒めたくないがな。

「なー君、ちゃっちゃとやっちゃってよー! お腹すいてきたー」

 表記はしていないが、さっき朝食を終えたところである。

 宇美音子さんか宇美音子さんの腹の住人かは知らないが、自重しろと思わざるをえない。

「終わらせるから外野は黙ってろや」

 切実な思い出ある。

 早くやれと言うならば、俺一人に押し付けずに協力してくれればいいのに誰も出てきやしない。

 ゲームとかみたいに戦闘パーティは何人までとかいう制限はないのだし。

 背後から迫り来る攻撃は魔道書なしだと知識ほぼ皆無な俺にはわかるはずもないので探求にしては気にしちゃ駄目だと捨ておくことにする。

 まあ、漫画とかなら、この攻撃の正体を暴いたり防いだりして相手を驚かせるとか、その正体を見破った仲間側の誰かがそれを暴露して相手をビビらせるとかあるんだろうな。

 残念ながらここは漫画じゃないぞ。小説かも――ゲフンゲフン。

 閑話休題。

 兎に角、仲間側の誰かが協力してくれる素振りなどべヒス嬢以外皆無で、そのべヒス嬢を見てみるとどうやら協力しようと出張ってくれようとしてくれている様だが宇美音子さんに妨害されているので無理そうである。

 あれ、宇美音子さんってそんなに俺に恨みとかあったのかな。

 ありゃ、駄目だまた話が逸れている。

 さっき閑話休題とか格好付けて思ったのに。

 どこが閑話休題なのやら。

 一応言っておくけれど、閑話休題という言葉の意味を知らない訳ではない。

 さて、目前の問題の解決方法であるけれど、超簡単。

 なんか、よくわからん攻撃があって困惑してるなら、さっさとその攻撃してるヤツをぶっ潰せばいいじゃない。

 そういう考えで俺は行くぞ。

 ――転白流、朧弓姫。

 一応、朧弓姫という歩法は回避体術なのであるが、何気に汎用性が高い。

 縮地の極地と呼べる移動歩法である。

 別段、回避のみに使用しなければならないという制限はない。

 まあ、転白流は気配遮断やら認識阻害という様な隠密行動等で構成されているので、回避専門と捉えるのは当然の帰結であるのだろうが。

 兎に角、朧弓姫を使用して武装集団の目前まで――ってのは武装集団と戦うことになるのでザビエルの目前に躍り出た。

 補助的な異常攻撃ってこういう指揮官がやらかしてそうな予感がするし。

 ザビエルはまだ気がついていない。

 何気にしゃがんで視界に入らないようにしてるしなぁ。

 コレでケリがつくとザビエルの腹めがけて拳を振るったが何らかの障壁――見えない壁だな。超えられない壁みたいなもんだな――に阻まれてしまった。

 その際に衝突音が発生し、ザビエルの目がこちらを向いた。

 驚いているようである。

 若干の放心状態に襲われているようであるので一旦距離をおく。

 うむ、よくあるゲームみたいに武装集団には悪いけど雑魚的な配置の奴らを全滅しないと攻撃できないよ設定かな。

 音響魔法というからには音を奏でてソレにより魔法を発生するとかなんだろうから、多分、武装集団をブチのめさなくても楽器破壊すりゃおっけーなんだろうがな。

 個人的に専ら怪しいのは、甲冑に同化している吹奏楽器的な部分である。

 武装集団は楽器を演奏している素振りがない為、動くだけで、風が吹くだけで音がなりそうだという疑惑が満載な吹奏楽器部分に目をつけたのだ。

 まあ、面倒くさいから全部破壊するけども。

 ――瓦斑流、地滑り。

 先と同じ様に滑るように移動する。

 ザビエルは多少呆けたままであったが、武装集団はザビエルの指示を受ける存在であるが、傀儡ではない為、動き出していた。

 振りかかる剣を横から押すことにより逸らし、都合のいい攻撃法を行う。

 ――瓦斑流、倉砕き。

 武器破壊――

 それに徹した攻撃方法である。

 使いようによっては鎧破壊、簡潔に言えば装甲貫通ができるのである。

 熟練度によっては戦車でもどんとこいと言えるぐらいに反則的な装甲破りになるのだ。

 今回は無論、それにより鎧破壊を徹底して行う。

 個人的にぶち殺す方が楽なんだけど、殺しても楽器があれば見えない壁は消えないよとかありそうだし。

 鎧ごとブチ壊すとなると宇美音子さんと交代したい所である。

 なんだかんだ言って魔道書無しだと高レンジな攻撃とかあんまりできなんだよなぁ。

 対一とか対多とかの技はあるけど、どこと無く受身的なのが多い気がするなぁ。

 まあ、良いや。

 取り敢えず、武装集団――そういや、人数とか数えてなかったなぁ――の15の鎧を破壊した。

 一応いっておくけど、これで武装集団の鎧は全て破壊してるし、少なくとも現状で確認している武装集団の人数と破壊した鎧の数は等号で括って問題ない。

 一応、剣は脆かったのか受け流す拍子に全部ブチ壊れてしまったので、後からそういえば、剣にも楽器っぽいのあったね!とかいうオチは事前に潰しておくことに偶然にも成功した。

 現在、武装集団は武装集団にあらず。

 パンツ一丁集団と化している。

 もはや雑魚の極み。

 下手すりゃ村人Aとかにも桑とかあるならフルボッコされかねない装備である。

 ザビエルは今頃呆けから回復したが、既に手遅れというもの。

 これからザビエルの顔を、歴史書などでらくがきされちゃって変わり果てた姿になったザビエルの様にしてやるとしよう。

 主に肉体言語のみで。

前書きで終盤に近づいてるって書いたけどすぐ終わるわけじゃないです。

もうちっとだけ続くんじゃ

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