第三十六話 -RPGで宿屋が頻繁にあるのは贅沢過ぎるな-
更新が滞りがちで申し訳ない思いです。
非常に多忙なためですが、徐々に進めていきたいと思いますので生暖かい目でも暖かい目でも自由な目で見守っていただけるとありがたいです。
後、今後はどの様に投稿するか悩んでいます。
1:短くていいから早く投下していけや
2:今までみたいな長さで読みたいから遅くていいから今までのようにやれや
3:何か他に意見があればどうぞ
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「まさか本当だとは思わなかったな」
と、男としか思えない口調の台詞を吐いたのはサイレンだった。
背がでかいから男と間違えられることが多いらしく自然とこの様な口調になったらしい。
顔自体は大いに女性であるし気配も同様に女性の風であるのだけれども。
ああ、閑話休題。
端から横道まっしぐらであった。
台詞は消え去った森の件に対してである。
消し去ったというのを信じ切れていなかったらしい。
文字通り消え去っている森を見てそうサイレンは漏らしたのである。
「言っておくけどやったのは俺じゃないからな」
というと信じられない、という様な表情を向けてきた。
なんだ?
俺じゃないと何か困る事でもあるのか?
それとも、この中でやらかしそうなのは俺だけとかか?
それだとかなりショックだな。
宇美音子さんを差し置いてやらかしそうとか完全に反省しなければならないパターンである。
涙と鼻水を土石流の様に垂れ流して土下座しつつ反省するレベルである。
あ、宇美音子さん。
心を呼んで睨むのやめてください。
実際には心を読む事は宇美音子さんには出来ない為勘なのだろうけれども。
だとしたら尚更問題だろうが。
勘だけで判断して人を殺せそうな殺気を飛ばすのは改めるべきだと思わざるを得ない。
少なくとも一般市民ならば卒倒しているレベルである。
しかもいい加減に飛ばしているから多少周りに拡散してしまっているじゃないか。
現状、今いるメンバーの誰も気が付いていない程の微弱なモノだから大丈夫だろうけれど。
――サイレンの肩の上の人形が動いた気がしたが気のせいだな。
サイレンも殺気に気が付いた素振りが無いしサイレンの挙動という訳でも無さそうである。
「てっきり、全てはナークさんがやっているものかと思ったのだがなー。何せ、こんな事をしでかせるのが何人もいるなんて信じたくないからねー」
まあ、確かにあの邪魔極まりない森を破壊できるのであれば既にやっているか。
主に、精神的に森林伐採とかやりにくいとかじゃないかな。
魔法使えば森なんて即破壊できるし。
「あの森の破壊は以前から言われていたんだよー。中々に強力な魔獣がいる訳だしね。でも、強力な魔獣がいるという事は、同時にその土地は強力な魔力を内包していることになる訳だー」
サイレンは、何やら意味ありげな表情をして「だから破壊できなかったんだよー」と言った。
魔力の内包されたモノを破壊する際には、対象の耐久と魔力向上の総合の耐久度を上回る耐久度か魔力を持つモノで破壊を試みなければならない。
例えば、あの森がこの世界の何よりも凄まじい魔力を保有しているのであれば恐らくそれは世界とか神にしか破壊できないだろう。
サイレンの台詞を鑑みる限りは、少なくとも森を破壊するぞと言っていた奴等の魔力量又は全員の総合魔力量よりも多い魔力を内包していた事になる。
俺ならばまだ魔力量が神の恩恵で相当ある訳だから納得できない事もない、という訳か。
それを魔力を持っていないであろう宇美音子さんが破壊するというのは規格外過ぎるという訳だ。
何せ、森が内包している魔力と耐久値を総合したモノよりも、宇美音子さんの物理攻撃の方が勝っていたという事になるのだから。
魔法を殴り飛ばしてブチ壊すというとある不幸を叫ぶフラグメーカーの幻想を破壊する右手よりも酷い仕様である。
宇美音子さんが森を軽々と破壊していた訳だが、あれはこの世界基準で考えれば奇跡の産物、最早崇拝して良いレベルであったのかもしれないな。
金食い虫は崇拝する気にはなれないので俺は宇美音子さんを全く崇拝しないわけだが。
話を蒸し返す最低野郎に思われるかもしれないが、残念ながらそれを考慮した上でも言わざるを得ない程に銭と食物の恨みは引き摺るものなのである。
さて、この件は宇美音子さんが関わる以上考えても仕方がないな。
基本的に宇美音子さん含め俺の知る達人クラスは規格外中の規格外であるのである。
場合によってはナメック星でイベントが発生している際に戦闘介入しても生き残れるんじゃないかと思ってしまう事もある。
それを考えるとサイレンの驚き具合にも納得である。
魔力量から言って俺が一番その存在に近いと思っていた所、ダークホースの宇美音子さんがその存在だと聞けば取り敢えず驚くだろうな。
後の事は驚いてから考える、そんな結論に至るだろう。
――サイレンは力を恐れない様である。
サイレン自身、森を破壊しなかった事から、森を破壊できない、または瞬間的に破壊する準備が整わないのどちらかである事は明白である。
前者であるなら明らかに、後者であるなら速度という点を見る限り宇美音子さんより劣っているという事になる。
現状、知り合いであるオッドの知り合いとはいえ、自身を簡単に殺す事が出来る存在と殺す事が出来る状況で共にいる事は通常恐怖するものなのだが、どうもその素振りはない。
ベヒス嬢の時は、ベヒス嬢は軍人であるので同じ様な状況に立ち会った事があるからなのかと納得していた訳だが。
言ってしまえばサイレンもホーネスに所属している限りは軍人と大差ないのだろうが、動きをみる限りベヒス嬢と違い戦闘経験があまりなさそうなのである。
身体の動作は中々であるが、体内をめぐる魔力があまり精錬されていない。
つまり、あまり魔力を――魔法を使用していないということである。
――サイレンはホーネイからしたら木偶の坊って話だったけど、それと何か関係あるんかね。
ホーネイは音響魔法による新興宗教ってイメージあるなぁ。
それだったら前線で徒手空拳であるなら通常は死に至る訳だし、挙動と筋肉の付き具合を見る限り前線で生き残れる程徒手空拳での戦闘に長けていそうもない。
まあ、ガタイが――背が高いのでそこそこ戦えるようになるのは間違いなさそうであるが。
まあでも、肩に乗っている人形然り、少女趣味が露骨に抜けていない所を見るとあんまり血なまぐさいのって体験してないのかもなぁ。
これは完全に偏見だから撤回して却下してしまって問題ないのだけれど。
「まあ、宇美音子さんは例外に身を置く人間の一人だしな」
そういう事で片しておこう。
個人的に俺は魔力を多量に過剰に神によって内包する事になっている為規格外的な事柄を行えても問題はないと思わなくもない。
あまり使用しないとはいえ魔法による恩恵は大きいのである。
ただ、魔法が扱えるというだけで単純に手段が増えるからである。
宇美音子さんは、俺と対するように魔力を持ち合わせていない。
この世界では一般市民でも多少は魔力を保有していることから、魔力量だけで言うならばこの世界で最も弱い存在という事になる。
単純計算、蟻よりも弱いという事になる。
肉体が強靭である――
それが戦闘力の大半を占めているのは大凡見当がつく。
それ以外の要素を挙げるとすれば短刀術を心得ているぐらいであるが、そもそもその短刀術が異端的な部類に該当する短刀術である為、前提条件として肉体が強靭である事が挙げられるのである。
その事から、事実上、宇美音子さんの強さは身体の強靭さが挙げられるのである。
魔力が無いとは絶対的な差が生まれる。
それは事実上宇美音子さんが蟻よりも弱い存在になってしまうという例で分かると思う。
ただ、現実はそうではないようである。
少なくとも蟻よりは確実に宇美音子さんは強いのは間違いないだろう。
俺の作成した武器の幾つかは魔法を込めている為に相応の魔力を内包している。
森を破壊する際に使用したナイフも魔法が込められていた為魔力の問題は改善されていたように見える。
だが、それであるなら尚更に不自然な点が出てくるのである。
というのも、居合い抜きもどきの鞘代わりに手を使用していた。
魔力が全てと言って過言ではない法則が成り立つのであれば今頃宇美音子さんの手は無いだろう。
が、実際は手が無いどころか、今はベヒス嬢をワキワキしようと怪しい動きを元気よくこなしてみせているという迷惑ぶりである。
――ベヒス嬢も宇美音子さんのあしらい方慣れてきたっぽいな、完全にスルーしてる。
さて、これらの謎はどういう訳か。
おそらく、師匠が言っていた気とか言うやつなんだろうってのは前からわかっている話だが、どうなんだろうか。
人間と魔族の戦いでは魔力依存だからその辺り重要そうだよな。
「ウミネコとはいったい何者なんだー? 見た感じは何の変哲もない女性だがそうじゃねーだろう」
まあ何の変哲もなくはないな。
詳しくは知らんが。
過去の話って聞かねえし興味ないからな。
「俺からすりゃなんかよくわからんもんと棺と人形を常時背負ってるヤツのが何者なんだよって感じだよ」
そういうとサイレンは多少乾いた笑いをしてみせた。
どうも何やら深い理由があるようである。
――個人的に棺と人形を常時背負うなんて只事じゃない、寧ろ異常の部類であるのだが、それを常時行う事になる理由となると深くないはずはないのである。
少なくとも、せざるを得ない事情があるのは間違いである。
それを想定しつつ突っ込んだ俺は若干鬼畜の所業だったかと反省する事にした。
「ナーク、おそらく彼女が背負う棺は音響魔法に使用する媒体、楽団回路ではないでしょうか」
……ベヒス嬢が俺の背後から介入してきてビビったわ。
前触れもなく背後に回って声を出すのは控えてくれ。
完全に気が付いてなかったら辛うじて仕事をしているチキンハートの振動が停止して俺の活動は停止してしまうではないか。
――楽団回路ってのは魔法使いで言うと杖みたいなもんだったかな。
さっき街にいた時にちょいと耳にした気がする。
気にしていなかったのでそれが事実と合致する記憶かどうかは定かではないけれども。
さて、それは全く興味無いので問題ない。
どちらかというと、それはサイレンが使用するものなのだろうか。
先の戦闘では使用した素振りは見せなかったが。
死ぬかもしれないという状況で使用しなかった所を見ると、反動で世界が滅びるとかそういうモノがあるか、又は使用できないかだ。
個人的に、ホーネイに木偶の坊扱いされているぐらいだから使用できないって方が正解に近そうではあるな。
面白味を求めるなら前者だろうけれども。
だけれど、それだったら俺の魔力と似たような状態だし二番煎じか。
そういえば、楽団回路ってのはなんだろうか。
重要な媒体だという事程度しか覚えてないや。
音響魔法の性質を見たりしたりしてる感じ演奏とかに関わりそうだからそれ楽器か何かだろうか。
それだったら棺が超変化してギターとかになるのだろうか。
街で見た音響魔法の雰囲気的にオルガンとかそういうのになりそうな気がするけれど。
変形するとなるとそれは男のロマン満載間違いないな。
そうであると願っておく事にしよう。
サイレンに聞くのが手っ取り早いのは明確なのだが、なんかさっきの意味ありげな笑いを察する所、聞くべきじゃないかなって思うから聞けないんだよなぁ。
一応、空気ぐらいは読むのである。
空気を読んで敢えてブチ壊すことはあるかもしれんが。
ここで空気を読まない宇美音子さんが参戦してくる事を危惧する訳だが、大丈夫そうである。
宇美音子さんはこっちの話しに全く興味を得られない様でオッドに手品を見せて反応を楽しんでいる。
対するオッドはこの世界に魔法があるからか手品が無い様で反応は激しい。
これなら宇美音子さんも当分楽しめるだろうから心おきなく話をする事にしよう。
もう話す事思いつかないけどね。
サイレンの事はホーネイ所属でオッドの知り合いで異常に背が高くて棺と人形を装備してるってことぐらいしか知らないなぁ。
――これだけだと、知り合いの知り合いがホーネイに所属している変人って事になりかねない事に今気が付いた。
が、気にしない事にした。
こりゃ、気にしてたら時間が足りない気がするわ。
気にする事がこれだけで収まらない気がするからな。
オッドとサイレンの歩調――特にオッド――に合わせていたらかなり移動速度が遅いな。
塔に行く時は俺と宇美音子さんの歩調であったので即行着いたけれど、今はまだ一直線に道が作成された森に入って少ししたぐらいである。
道程の大半が森を占めているので進行度はかなり知れているという感じか。
――この調子だと下手したら夜までに到着できねえぞ。
森で野宿だろうか。
幸い、ここの魔獣はそれ程強くない為殺気を飛ばせば近づいてこないが、稀に存在する力の差を読めない阿呆が近づいてきたとしても晩飯になる感じだな。
あー、そういえば肉とか野菜には困らなさそうだけどこの森、川無いし泉はあるかもしれないけど未確認だから水分補給が難だなぁ。
地下水を引き当てられれば楽そうなんだけど、現実的じゃない。
この世界には地下の様子を察する事が出来る機械とか無いしね。
あったとしても少なくともあれは現在所持して無いし、持ち歩く様な物でも無いから誰も持ってないだろうしな。
もし、持ち歩いてるなら俺は間違いなくそいつの精神を疑うし、そいつへの評価は気が狂った人という事になる。
俺と宇美音子さんがサイレンとオッドを背負ってさっさと進行するとう選択肢が一番手っ取り早そうである。
思いつくや否や、当然俺はそれを提案する訳だ。
無論、返答は賛同を得られるものかと思っていたが、オッドとサイレンが反対意見であった。
塔へ向かう際は賛同していたオッドであったが、そんなものなど幻覚以外の何物でもないと言わんばかりの反対体勢である。
もしや、やはりオッドにとってあの速度は毒だったのだろうか。
個人的にそう思う所も無きにしも非ずであったので仕方がないと提案を取り消す事にした。
主に風圧とかが問題だったのかね。
俺が提案を取り消すと言った瞬間に俺が取り消した提案を提案してくる宇美音子さんは良い根性をしていると思ったのはまた別の話である。
少々、オッドから説明を受けていないので事情を知らないはずのサイレンも反対体勢であったのは気になる所であったが、目下の問題は夕食である。
この森の中で野宿になりそうであるから寝やすそうな場所を確保しなければなるまい。
――岩とか無いし洞窟の作成はできなさそうだし、能力を使って作るのも面倒だから地べたで良いかな。
雨は降りそうが無さそうなので大丈夫だろうし。
雨なら屋根ぐらいは欲しいしその辺りの予想は重要なのである。
取り敢えず、このまま進行しつつ木の実とか探して見かけたら手当たり次第確保しておこうかな。
なんか、木はあるけど実がなってる木があんまり見当たらねえんだよなぁ。
獣も基本的に近づいてこないしなぁ。
何やら地味に夕食に困りそうな雰囲気であったが、腹の中の住人は自重しそうな雰囲気を垣間見せもしない上に、腹の中でまだかまだかと暴動を起こす時期を待っているのである。
たとえ一食であったとしても抜かりがあればそれ相応の対応は必至、腹の中の住人はその様な考えであるようである。
既に先走ったやつが多少俺の食欲を刺激してきている。
悟りを開いてもこいつとは生き別れは出来ないだろうなと実感した瞬間であった。




