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魔王物語  作者: ragana
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第三十四話 -分相応は良いけど、他にしわ寄せ行くよな-

超絶書けてませんが、取り合えず、書けている部分まで投下したいと思います。

 火炎発生源を潰すとは公言してみたが、潰すという程でも無い気がしなくもなかった。

 何せ、完全に関節という関節を潰してあるのである。

 既に潰し済みというやつである。

 なので、俺としてはあまりする事が無いのであるが、その状況でも迫り繰る火炎だけでなく、追い討ちで次なる火炎を放つ気満々である覇気が感じ取れる。

 そう言う訳で残念ながら命を貰い受ける必要が出てくるのである。

 問題としては、どういう構造か、異様に硬いという事だ。

 そうでなければ、先ほどの関節を破壊した際に、脊髄も同時に折るつもりであったがそうはいかなかったのである。

 よく考えてみると、狼型の小型の魔獣も普通の狼より明らかに硬かった。

 殴っても多少抉れる程度だった。

 俺はそこで気が付くべきだったのかもしれない。

 目視的な意味では硬度。

 感覚的な意味では不可思議な気配。

 今なら多少予想は付く。

 宇美音子さんが以前の世界以上にハチャメチャに動けている事を考えて、あれは師匠達がよく言っていた『気』というヤツで間違いないのではないだろうか。

 この世界での魔力も同じ様な効能を発揮するようだが、魔力は神の恩恵により認識できるので、心当たりから探る限りはそれしか残っていないのである。

 師匠の一人である秋田山さんに気とは何ぞやと問うた時は思い込みみたいなもんだと教えられたけど実際、この世界での魔力の様に形はないが存在感のある存在だったのではないだろうか。

 この思考には何度となく行き当たっている訳だが、ここに来て取り立てた理由は相対している魔獣にある。

 魔力を感じる訳だが、この魔獣が持ちうる硬度を再現できる程の魔力は感じられないのである。

 それに、この魔獣から魔力以上に多量の不可思議な気配――ここでは便宜上『気』と呼称するが――を感じるのである。

 魔力と同等の効力があると仮定すると、感じる気配と硬度はほぼ一致すると言って良い。

 俺が達人の域に到達できなかったのはこの辺りにあるのかもしれない。

 まあ、修行をしていた当時は兎も角、今はやる気なんぞさらさら無いので現状伸び代は無いから知ったとこで無意味だけれども。

 強いて言えば生存率が多少上昇するぐらいじゃないだろうか。

 それはザクがドムになる程の変動だが、特機が投げ売りされていると言っても過言じゃない状態であるので知れていると言えるだろう。

 だからこそ、完全にスルーしてたのだが、案外知っておいた方が良いかもしれないと思わなくもない。

 未来が描かれていた絵を見た限りでは今敵視している魔王共々何者かにやられていた。

 魔王は魔法を極めし者ではなく魔力保有量が最も多い者を指すのだが、魔力保有量が多ければ多い程おそらくは魔法に打ち込む為、比例して魔法が扱えるはずなのである。

 少なくとも知識はあるはずだ。

 まあ、それに費やす時間が無かったり金が無かったりと挙げた事以外の原因で打ち込めないという事はあるかもしれないが。

 この場合、魔王ってのは多少地位がありそうだし、魔族という魔法に長けた存在に属するのである。

 少なくとも普通の人間以上に魔法の知識は最低でもあるんじゃないかと思う。

 そんな存在が勇者と共闘したかは知らないが、敗北を喫したとなると、それ以上の何かの存在を疑わざるを得ないのである。

 黒い霧のようなものを纏っているように描かれていた第三勢力は魔王と勇者に勝利しているであろう状況から、この第三者は人間ではありえない。そして、そこいらの魔族でも魔獣でもないだろうということになってしまう。

 だから、そいつは気も扱えるんじゃないかと踏んでいる。

 正直、魔王やらよりも強力な魔法となると戦術魔法以上の規模の魔法ぐらいである。

 つってもまあ、今は前魔王になっちゃってる訳だけれども。

 まあ、重要な部分は事実であるなら変わりないだろうし問題ないけれど。

 さて、取り合えず、目の前の火炎をどうにかしなきゃだな。

 普通なら漏れなく焼死体を生産するところだけど、気らしき不思議な気配を繰る様に心がけて動いてみるとしよう。

「朧弓姫――」

「!!???」

 目の前の火炎球は消失し、魔獣の一部が爆発と共に燃え盛った。

 魔獣は状況を理解できていないらしい。

 背後を見ると、サイレン(仮)も同様に状況を理解できていないらしい。

「さて、次がありそうだったからさっさと潰して――」

 刹那、俺の本能がアラームを鳴らした。

 まるで、前の世界での達人クラス数人と対峙した時のようである。

 通常ではありえない。

 その域のアラームである。

 視界に変化は無い。

 突如、対峙している魔獣が覚醒でもして強力になったわけでもない。

 魔獣は変わらず硬いだけのでかい猫でしかない。

 ただ、空気が変化した。

 魔獣はこれを感じ取ってどう思ったのか、攻撃を中止している。

 追撃を放つ気満々に見えたがそれが突如として消えうせている。

 それを見るだけでもこの状況が異常であることがわかる。

 魔獣のあの落ち着きようは、この問題があの魔獣にとって好意的なものであるのか、それとも足掻いても無駄であるので諦めているからの格好なのかは定かでは無い。

 どちらにしても俺にとってはろくでもないことであると思われる。

『お前さんが現れてから目に余る行動が多すぎるのう』

 頭に直接響く合奏音にも雑音にも取れる不思議な音が聞こえた。

 それが声である事を認識するまで多少のラグが生じるほど人間離れ――いや、この世離れしている。

 あの神と呼ぶには抵抗を覚えるあいつからも多少同じ気配を感じたが同類だろうか。

 現状、動けない。

 その大きな理由として姿が見えないだけでなく直接頭に声が響いてくることから位置が特定できないでいるからである。

『神の裁きを受けるが良い。どういう訳かお前は力を持ちすぎている。この世界にいずれは匹敵する程の力をの』

 何時の間にか俺と魔獣の間にスターウォーズのヨーダみたいなヤツがいた。

 見た目的にはぶちスライムぐらい弱そうだが、どうもこのいやな感じはこいつから放たれているらしい。

要素低落(メルトフオール)

 詠唱も無く呪文名が宣言され効果が目に見えて現れ始めた。

「――やべえな」

 どうも、こいつは神と同類か神そのものであるらしい。

 人間が使っていたものでも、魔族が使っていたものでもないであろう魔法が発動されているのである。

 というのも、両者が使用する魔法は、基本的に指定した属性を秘めるものに干渉するものが多かった。

 これは違う。

 地面に押し潰されるようになるこれは一見重力魔法である。

 それだけであるならまだ土と風の魔法を組み合わせれば再現が可能だろう。

 だが、これはそうではないし、そもそも規模が酷い。

 崩れて生じた塔の穴から見える景色を視界に入れると意識を失いそうになったため即座に目を逸らしたが、ここを中心に隔離結界が構築され、その中全域にこの魔法の効果が及んでいることが見て取れた。

 というのも、範囲内の木々が一斉に押し潰されているのである。

 俺が何故重力魔法ではないと断言したかには理由が二つある。

 片方は断言は出来ないわけだが。

 単刀直入に言うと、重力魔法程度であるなら多少俺でも耐えられるはずなのにそうでないことである。

 もう一つが決定的で、宇美音子さんも動けないでいるらしいということである。

 尤も、後者は気配が動いていないからという安直な認定法の上でであるけれども。

 何にしてもこのいやな気配というかあのクソ爺に似た気配をヨーダみたいなこいつから感じるのは間違いないようである。

 あくまで俺の感覚を信じるのであれば、だけれども。

 よく考えてみればあのクソ爺は俺の世界のことを全く知らないような素振りであったし、その住人である俺のことも大して知らないようであった。

 世界を管理しているといっていたがあれでは職務怠慢であると思っていなくも無かったわけだが、そこで思考停止してしまっていた俺は愚かであったといわざるを得ない。

 クソ爺があの状態であるのはあいつがクソ爺であるからだと思い込んでいたが、逆に考えればすぐにわかることであったのだ。

 あいつがあの状態でも問題が無いという状況であるのなら。

 そう考えればいいことである。

 恐らく、この推測は間違ってはいないだろう。

『ああ、そうだ間違ってはいない。何故、上位神の事を知っているのかは問うた方が気にかかるがのう』

 ――お墨付きも頂いたところで推測を続けるとしよう。

 先の、クソ爺を上位神と呼んでいたことから大凡わかるだろうが、このヨーダみたいなやつはこの世界を管理するあいつの部下ってとこだろう。

 んであのクソ爺はそれを統括する神ってとこか。

 仮にも世界を管理する役職であるので、いくらヨーダみたいでも神の一種では無いだろうか。

 そうなればこの世界の枠組みに囚われた存在に勝ち目は無い事になる。

 生憎、俺はこの世界の出身ではないのだけれども。

「おい、お前ってサイレンって名前か?」

 取り合えず、ヨーダは気にしても仕方が無いので一緒に地面に多少めり込んでいる女性に声をかける。

 ってやべえな。

 めり込んでるけど肩に乗せてた人形を庇ってやがる。

 人形を庇うことにいっぱいいっぱいなのか俺の質問には答えられないらしい。

 どんだけその人形好きなんだよ。

 それにしても解せないな。

 なんで今頃起こってきてんだよこのヨーダはよ。

 取り合えず、この状況をどうするかだな。

 このままだったら皆薄っぺらくなっちまうぞ。

 絶対にモツが漏れて汚いな。

『人間にしては良く耐えるのう。そろそろ下にいるお仲間の一人が限界のようじゃが』

 絶対にオッドだな。

『そろそろ終わらせてやろう』

 やべえな。

 オッドは兎に角、約束は果したい所だ。

 そういう訳でサイレン(仮)に薄っぺらくなってもらっちゃ困るのである。

 ふと、サイレン(仮)を見てみると何やら叫んでいるようだった。

 が、全く聞こえない。

 俺は口を開く気も出ないほどだるいのだが、サイレン(仮)は相当切羽詰っているのか叫んでいる動作をしている。

 その口の動きは、助けを求めているようにも見える。

 まあ、言われなくてもどうにかしないとだが。

 取り合えず、あのヨーダをぶち殺せばとまるかなぁ。

『お前には――ただの生物には無理じゃ』

 とか何とか言ってやがるな。

 声が頭に響いているので聞こえるのだろうか。

 視界が暗くなる。

 目が潰れたわけでも辺りが暗くなったわけでもなさそうだ。

 ふむ、やっぱり想像通りかなこれ。

 魔道書を弄ってみると、魔道書は全然重くなっていないようである事が分かった。

 とはいっても、俺は全身が押さえつけられたかのようになっているので断言できないのだが。

 錯覚かもしれんし。

(魔道書は重くなってねえなぁ)

 そう呟いたはずだが全く耳に届かない。

 これは決定的だ。

 おそらく、ありとあらゆる要素が地面に沈下してるんじゃないだろうか。

 故に、光も反射せずに地面に沈下し続けている。

 魔道書を展開すると必要な知識が流れ込んでくる。

 どうも、あのヨーダは神ではなく、神の化身と呼べる存在であるらしい。

 そして、今張られてる結界は、内部を隔離して擬似的に神のあの白い世界と同等の性質に変化させるものであるらしい。

 神の能力はあの世界限定での業であるらしい。

 それを構築するこの術は上位の神の許可を得れば対応した場所でのみ使用可能となるらしい。

 って、この魔道書やばいな。

 なんで神に関わることもかいてんだよ。

 明らかに人が知る域越えてるだろ。

 まあ、魔道書に対抗する魔法が記述されているので事なきを得られそうである。

 神は魔力を用いて魔法を行使するのではなく、別の力、言うなれば神力とかそういう感じだろうか――兎に角、それを使用しているらしい。

 ただ、それを読み取って少し邪魔をするだけでこの術は解除されるらしい。

 あ、そういや、こいつさっきから心読みまくってたから今も読まれてこればれてんじゃねえだろうな。

 十分ありえるぞ。

 何も言ってこないのは寧ろ罠か。

 まあ、良い。

 取り合えず普通にやるか。

 この術発動してから感じるよくわからん力を――弄る、と。

 ――ん?

 普通に解除されたな。

 視界も元に戻ってるし。

 ヨーダは驚いた顔をしてるが。

『貴様、何者だ? 神ではないのだろう?』

「神じゃないけどそれが何か?」

 取り合えず、この調子で結界を潰せばこの場は逃げ切ることが出来るだろうが、次もそう進むとは限らない。

 どうせ対策とかしてくるだろうし。

「なー君、そのヨーダ何?」

 声の方を見ると異変に気が付いてか宇美音子さんが来ていた。

 位置的に、明らかに外壁を走ってきたようである。

 重力を無視するのはいい加減止めた方が良いと思うが俺の押し付けだろうか。

「なんか、神関連らしい。取り合えず逃げた方が良いと思う」

「だよね」

 と言う返答を聞くと同時に俺の意識は途絶える事となった。

 瞬間的に宇美音子さんが視界から消失したので恐らくは、宇美音子さんが犯人だろう。

 そして、意識が途絶える寸前に結界を解除していないことに気が付いて急いで解除することとなる。

 完全にけつかっちんである。

 俺としては人知を超えた作業であるので余裕を持って取り組みたかったのだが、まさか宇美音子さんという身内のお陰で慌てる羽目になるとは思いもしなかった――って訳では無いけど、まあ起きて欲しくは無かった。

 宇美音子さんが俺の意識を刈り取ったという事は、多分、上空へと舞うのだろう。

 まあ、俺とサイレン(仮)を背負って飛び交うことぐらい朝飯前だろうし気がかりにせず目覚めてから問いただすことにしようと思う。

 出来れば、サイレン(仮)が人違いでないことを願いたい。

氷河期での就活は非常によろしくないものです。主に趣味の時間が消えますし。

後、永久に描写しなさそうなので書きますが、退治していた魔獣は漏れなくぺったんこ量産の被害に遭っています。

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