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魔王物語  作者: ragana
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第十一話 -黄金色は死の色-

感想以外の案件、こうして欲しいという要望や修正した方が良いんじゃないかと言った助言を送ろうと思ったけれどわざわざ感想で書いて送るのが面倒だなや、感想なのに苦情とか助言とかを送っていいかわからんなぁ、という方は活動報告の方にそういったものを設置しますのでそこにコメントとして記入していただければ幸いです。

無論、感想としてそういったものを送っていただいても幸いです。

 彼女が二週目の黄金色の線を振り回そうとしているので、俺はそれが大凡5度動く間に距離を詰め肉薄した。

 彼女が息を呑む音が聞こえたが、よくある漫画とは違い、隙を見せるのではなく息を呑んだ音を放ちつつ反射で攻撃してきていたので余裕はあまり無い。

 俺はその不意打ちに近い反射での攻撃をしゃがむ事で回避し、瞬時に体勢を整え左腕を振り上げ、振り下ろす。

形状実装(リード)

 俺のその一言で俺のそれは無意味で無いことが証明される。

「ッ!」

 と、声にならなかったが掛け声を上げようとしつつ岩を切り抜いたかのような無骨な岩の剣を振り下ろす。

 が、彼女には当たらず、変わりに地面が粉砕の運命を辿った。

 岩の剣は地面にめり込み、その分周囲が押し広げられる。つまりは、小規模で無骨なクレーターの様なものを作り上げ、代償として岩の剣は粉々になった。

 エモノが唐突に現れて焦っていた様だが、粉々になってしまったのでしめた、と思ったのか彼女は腕を振りかぶる。

 体勢的にこのまま回避行動を行っても回避しきれないだろう。

 足の一、二本をパージする羽目になりそうである。

 そうなれば、俺のチキンハートはショックにより血液循環の役目を放棄してしまいそうである。

 そんな必要が無く、寧ろ無い方が良い自信が俺にはあった。

 が、俺は期待を裏切る男である。いや、初めてそう自負したけれど。

 そのまま右手を振り上げる。

形状実装(リード)

 右手には先程砕けた岩の剣と酷似しているが決して同じものではない岩の剣が握られている。

 捉えたかと思ったが彼女を見ると残念な事に回避してのけていた。

 いや、まあ俺が捉えられなかっただけマシかもしれないけれど。

 一発くらったら消し飛べるからなぁ。

 絶賛ばらばら殺人勃発である。

 少々筋肉的に無理が出そうな動作を行ったせいか否かはわからないが、少し右手が痛んだ。

 痛みのせいで握力が緩み、勢いに任せて右手に収められていた岩の剣はそのまま飛んでいく。

「っく!?」

 それがどうやら無駄ではなく、その延長線上に彼女はいたので少々無理な体勢を取らせることに成功した。

 チャンスじゃんよ。マジで。

 そのまま俺は追撃を行う為に、振り上げた右手は無視して先程使用したがクールタイムを消化し終えた左手を横に薙ぐ。

形状実装(リード)

 その左手にはまた岩の剣が握られている。

 捉えた、と確信できる軌道と位置である。

 俺は腕を振り切ったが、彼女を迎撃する事は叶わなかった。

「それ、強すぎるだろ」

「貴方程規格外では無いですよ」

 俺の言葉に、返答とばかりに冗談を含める余裕が彼女にはあるらしい。

 それもその筈だ。

 彼女の黄金色の線は、別段、線という形に囚われる訳ではなく、その証明として、今、俺の岩の剣を防ぐ位置に黄金色の楕円形の厚さの無い盾が滞空している。御蔭さまで、それに接触した岩の剣は蒸発してしまった。

 彼女の黄金色のそれは変幻自在、縦横無尽なのだろうか。

 少なくとも変幻自在であるような気がしてならないし。縦横無尽であるかは遠隔操作ができるか否かで変わってくる。

 どちらにしても厄介であることに変わりはない。

 黄金色のそれは、熱を収束させたようなものだ。

 誰でもできるだろうが、彼女のそれは錬度故に誰でも出来るものではなくなっている。

 一般人がやれば――例えば彼女の奥で撤退を試みている奴等の中で最も実力があるものでも熱は同等まで高められるが、それを振るう前に熱で身体が燃えるか溶ける事になるはずだ。

 つまり、黄金色のそれを再現するには、魔法精度、魔力精度共に絶対的に不足しているのである。

 ただの熱であるので対処法は幾らか思いつく訳だが、それを実行できるかと聞かれると幾分か選択肢は選択肢として機能しない。

 ゲームの選択肢で通常は白色文字で表記される所を灰色文字で表記され、カーソルを合わせようが関係なく反応をしてしてくれない選択肢ではなく項目と化したあれである。

 そういう訳で情けない事に大半の選択肢が消滅してしまっている。

 主な理由は、選択肢の大半が扱えないが存在するであろう魔法の使用が必須であるものだからだ。

 魔道書を使用すれば話は変わるだろうが、格好から想像できる交友関係を考えれば魔道書を使用するどころか展開さえしている所を見せたくない。

 と、なると俺の技術でどうにかするか、能力でどうにかするか、使える範囲の魔法でどうにかするかの三つぐらいに絞れてしまう。

 いや、細分化すればその三つの選択肢はもっと増えるけれども。今はそこの問題ではない。

 まず、この中で一番選んで問題がなさそうなのは、使用できる魔法でどうにかするものだが、生憎と使用回数が絶対的に少ないので失敗するかもしれない。

 次に、俺の技術でどうにかする、だが、身体がブランク以前と比較すると別の人間というか、別の生物の身体を使用していると表現しても問題無いほどに自由自在には操作できない。

 あまりの不自由さに身体が反抗期に突入したのかと考えたが、日常生活はそうでもない訳だしそういう訳ではなさそうだった。

 最後の選択肢である能力でどうにかする。手持ちに岩があるのだが、全て溶かされてついでにそのまま勢いに乗って俺も溶かされてしまうだろう。

 俺は別段気化したい程自由というか文字通り枠に捕らわれない生き方をしたい訳では無かったのでそれは丁重にお断りさせていただきたい。

 おお。

 残った選択肢全てが選択肢と呼べる代物じゃあなかった。

 いやいや、八方塞がりとはこの事だろうか。

 ……一応、魔道書使えば何とかなるだろうがなぁ。

 逃げるという選択肢も無きにもあらずなのだけれど、ケンカの原因は俺じゃあないけれど彼女は更に原因から遠い存在だろうからなぁ。

 元々は岩が飛んできたのが悪いのだ。いや、確かに彼女は俺の拠点を変わり果てた姿に変えて見せたけれど。

 うん、思いだしたら怒りが込み上げてきた。

 堕落から少なくとも少しの時間は脱出出来る機会を与えてくれたからそれに感謝しなくもないけれど、大切なものを破壊された俺の気持ちもあるってもんだ。

 そう考えている間は隙となる訳で彼女がそれを見逃すはずもなかった。

「ほいほいっと」

 何度も俺の身体すれすれに、時には服の一部を切り裂くんじゃないかという具合に寧ろ何故当たって無いんだ? 偶然か? ぐらいに回避に努める。

 騎士たちが撤退した途端に攻撃が激しくなったのだが、撤退しようとしていた騎士たちを気遣っていたのだろうか。

 それで今まで本気を出していなかったのだろうか。

「お前、本気じゃなかったのか」

 と、言うと耳に届いたのか、口の端を釣り上げて見せてきた。

 俺が焦ってるとでも思ったから故の余裕の笑みなのだろうか。

 ならば、少し試合という名の死合いには合わないが語るとしよう。

「そういえば、俺って実害の無い他人を巻き込むのって嫌いなんだよなぁ」

 首を横断しようと黄金色の線が通るが辛うじてかわしつつそう話しかけてみる。

 これで返事が無ければ死合い中に一人で話ししている阿呆で頭のおかしい奴って認定になってしまいかねない事に発してから気がついた。

 うげえ。

 俺はそんな認定になりたくないぞ。

 話かけているのであって一人で話ししていないし、阿呆かは何とも言えないけれど、頭はおかしくないつもりだ。それが、事実上認められないのである。

 たまったもんじゃあない。

「……何を言いたいのですか」

 おおおおおお!

 返答が来た! 俺の杞憂は無駄であった! 幸いだ! ありがたやありがたや、なむなむ!

「いや、まあだから、それはお前の後ろにいた今は撤退していない騎士も例外ではなくその枠に収まるって事だ」

「……本気でなかったと言いたいのですか?」

 と眉間に皺を寄せている。信じていない、というよりも信じられるはずが無いと言ったところか。

「お前、その戦い方を修得してから負けた事無いだろ?」

「……勝てる可能性のある人物が限られていますからね」

 まあ、そうだろうなぁ。

 俺も今みたいに怒りにまかせて戦闘を勃発させてしまわない限り慌てふためいて逃げるな。

 逃げるのが無理ならあらゆる汁を漏らしてでも土下座をしてでも戦闘を避ける相手だろう。

 ビームサーベルで蒸発死って安易に想像できそうで寧ろ恐怖を巻んじるからなぁ。

 ううむ。

 勝てる相手が限られているなんて自信満々って訳でもなさそうで寧ろ淡々と事実を述べているような素振りで言ってのけるって俺の予想当たっちゃったかなぁ。

 いや、予想が当たっても当たらなくても彼女の実力は変らないけれど。

 気持ちの問題って事だ。

「お前ってもしかして黄金色の断裂(ライトライン)って呼ばれていたり……しないよな?」

 おおぅ。俺の恐る恐る、といった素振りを見て彼女から感じる余裕が増加した気がする。

 ああ、答えを聞かなくても想像できてしまった。

「私が黄金色の断裂(ライトライン)です」

 あー、やっぱりかー。一応、それだと想定して戦っていたけどテンション下がるわ。

 勝てる気がしないからな。

 肩に接触して相手の肩爆発とか意味分からん噂を思い出す。

 まあ、何にしても。

黄金色の断裂(ライトライン)ってだけで強者とは限らない。まあ、可能だったらそれを証明してやるよ」

 黄金色の断裂(ライトライン)と聞いても怯まない様子を見て少々余裕が薄まったようだが、その分癇に障ったのか怒気の様なものを感じる。

 俺は黄金色の断裂(ライトライン)の攻撃を読み回避を続けるが疲労は着実に蓄積されるのでずっとこのままという訳にはいかない。

形状実装(リード)

 ビームサーベルが頭の上を通り過ぎた所で岩の剣を右手に握り脇腹を狙って横薙ぎする。

 が、脇腹に命中する寸前で黄金色の盾が出現し岩の剣を気化させた。

 ああ、中々単純な攻略法が有るようだ。

 黄金色のあれはやはり自動動作という訳ではなく任意動作であるらしい。

 と、なるとそれ以上でいけば良いというだけである。

「んー、こう言ったら軽く聞こえるかもしれないけど敢えて言うよ――」

「っはぁ!」

 返事さえせずにビームサーベルが俺の横を通り過ぎる。

 周囲の地形は結構変ってしまっているなぁ。自然に悪い事をしたと無闇な罪悪感が込み上げてきたが、全てを黄金色の断裂(ライトライン)のせいだから、と思ってやり過ごす事にしよう。

「――今から本気出すわ」

 思うように身体が動いてくれないという反抗期なので限界はあるけれども。

 とりあえず、全力で――は、今の状態だと手を痛めそうだから最速程度にしておくとしよう。寧ろそれぐらいはやらないと絶賛死ねる。

 最終手段に全力は残しておく。

 全力と本気はまた別物なのである。

形状実装(リード)

「っな!?」

 と、驚いている間に腕に魔力を練り込みつつナイフと表現して問題無い程度の小型の岩の剣で攻撃を5度程繰り出してみたが、見た目は軽鎧といった雰囲気なのだけれど、なかなかどうして結構な防御力が有り、要所要所を堅実に守っている。

 攻撃を繰り出すと、寧ろ岩の剣が砕けてしまった。

 岩の剣で殴りつけるとよくて五度で耐久値は底をついて崩壊するらしい。

 ううむ。やはりここの干からびた様な岩は耐久値があまりよろしくないらしい。

 が、衝撃により黄金色の断裂(ライトライン)は高度でいうと20メートル程まで浮き上がった。

 通常ならこのまま飛び上がって追撃をかますのだろうが、俺は飛び上がるとそのままバッドエンドを迎えて意識は永遠に闇をさ迷う事になりかねないので飛び上がる事は出来なかった。

 手元に岩しかないので弓矢を作成する事も叶わないので普通に攻撃する事にした。

 手に負荷がかかるからやりたくないのだけれどそんな事を言っていられる相手ではないぐらい理解している。

 そろそろ在庫の無い岩の剣を総動員とは言わないが大半を取りだして先程と同じ様に岩の剣を作成する。

形状実装(リード)

 形状は同じで、何の飾り毛も無い無骨でそこいらに落ちている岩かと思うような造りである。

 違う所は唯一つ。大きさである。

 宙を舞っている黄金色の断裂(ライトライン)に届く程の射程を持ち合わせたそれは、見た目通り重い。

 車の下敷きになった時を思い出しかねない程の重さである。

 両手で持ち上げるそれはその重さを遺憾なく発揮して支える両手を萎靡っている。

 いやはや、役割だから仕方ないだろうけれど岩の重さか重力が自重しないかなぁ、と思わなくもない。

 いや、本当は切実に思うよ!

 両手の筋肉がかなり膨張しているのが分かる。

 多分、今針を刺したら破裂音とともに俺の筋肉は縮んでいくんじゃないだろうかと意味の無い心配をしてしまいそうなほど両手が無茶をしている。

 俺の筋肉が風船なら既に萎んで梅干しみたいになってしまっているだろう。

 巨大な岩の剣を速度を落とさず瞬間的に持ち上げた所で両手が休暇願を申請してきた。

 うむうむ。

 ここまで頑張ってくれたのなら吝かでは無い。

「よっこーいせー」

 と自分で言って何だが相当気の抜けた掛け声と共にそれを黄金色の断裂(ライトライン)へ向けて振り下ろした。

「やったか!」なんて発言して倒せてませんよフラグなど立てる愚行はせずに舞い上がった砂煙のせいで姿が見えないのでそのまま静観に努めてみる。

「っ!」

 前触れも無く――一応、砂煙が動くという前触れが有ったけれど殆ど気がつかないので予兆が有ったよなんて意見は却下しつつ巨大な岩の剣は放り投げてビームサーベルを回避する。

 ビームサーベルの御蔭なのかはわからないが、砂煙が晴れたので黄金色の断裂(ライトライン)の姿を確認する事が出来た。

 砂煙が明けて、別段姿が見えなくて驚いた、という訳ではなく普通に剣を構えていた。

 着込んでいた鎧の大半は砕けていた。

 振り下ろした岩の剣に使用した大質量の岩達も報われるというものだ。

 そろそろダメージが問題のある程度まで蓄積したのかビームサーベルでは無く、普通に剣できりかかってきた。

 おおぅ。

 見た目通りだけれどかなり剣が出来るなこいつ。

 なんて思いながらバックステップを持ってして初撃は回避する。

形状実装(リード)

 その回避時間でナイフ型の岩を作成し、剣を受け流した。

 中々の剣速と剣筋だけれど俺の見てきた人達程じゃあない。

 生憎とこのレベル以上の剣を見慣れている。

 見慣れていなかったら今頃ミンチにされて絶賛ハンバーグへと転生できそうであっただろうなぁ。

 ミンチもハンバーグも身体を張って再現したくは無かったので幸いである。

 黄金色の断裂(ライトライン)は迫る剣戟を逸らす俺の動作を見て驚いた様子であったが、死合いという死合いが始まった今となってはそれは命取りである。

 黄金色の断裂(ライトライン)は戦闘の経験はあれど死合いの経験は無いらしい。

 ううむ。

 よく考えてみれば死合いを知らないのにここまでやってのけてしまう彼女を俺に紹介しようとしたエドルは何を考えていたのだろうか。

 何だ? 俺に死んでほしいのだろうか。

 まあ、死んで当然というか死んでいるのかという人間が俺だから良いのだけれど。

 さっきまで腐っていたし、文字通り腐る日もそう遠くないんじゃないかと考えてなくもないし。

 まあでも俺はブランクを解消したい訳だから死合いの経験が有ろうとなかろうと兎に角強い相手がいれば良かったのでエドルの判断は間違ってはいなかった。

 問題は俺が訓練の事故で死んでしまいかねないという事か。

 死因は蒸発死って所だろうか。

 ううーむ。

 死体が残らない=ゴミが残らない=散らばって汚れないという考えを持ってすればエドルの判断には大いに頷くのだけれど。

 剣戟を捌きつつちょっとした反撃をくり返していると彼女のリズムというか攻撃速度というか反応速度とでも良いのだろうか、兎に角幾ら以上は反応できないなどがわかってきた。

 そうとなれば命は使う為にあると考える愚か者である俺は今までの様に岩の剣と言ったあの黄金色の盾に触れて蒸発して問題の無いものでのみ攻撃していたが、調子に乗る。

 剣を弾き、壊れて出来た鎧の隙間に足をねじ込むように彼女をけり上げる。

「っかは」

 と、彼女は肺の空気を幾らか吐き出して吹き飛ぶ。

 平然とやってのけたが、足が蒸発しないか非常に心配であった。

 今回は先程の様に縦に舞って高度を上昇させる事は無く、横に舞って距離を強制的に稼いだ。

 その距離が出来た事により体勢を立て直されれば元も子も無いので、彼女が地面に墜落するよりも早くに大凡俺程の背丈の岩の棒を作成する。

形状実装(リード)

 数発投げ、それよりも早く回り込み地面と平行に強制飛翔している黄金色の断裂(ライトライン)の鎧の隙間を殴り、反対方向へベクトル変換する前に拍車をかける為に後6撃程両拳を往復させておく。

 ベクトルの変換が済んだ辺りで先程投げた岩の棒が彼女の鎧の隙間を縫うように激突する。

 血が出ていない様だし、打撃音だけしか聞こえなかったのでどうやら運よく骨に当たって突き刺さりはしなかったようである。

 だが、骨にヒビは入っただろうからどちらにせよご愁傷さまである。なむなむ!

 彼女はその攻撃方法から攻撃をあまり喰らわないからなのかはわからないが、痛みに慣れていないらしく既に叫び声を上げる気力さえ無いらしい。

 攻撃を食らっても少し呻く程度である。

 うーん。

 何か久しぶりに動いて気がついたのだけれど、身体がブランクか何か知らないけれどうまく動かないって気分になるのは事実なのだが、その状態で何故か以前以上の動きが出来ている気がする。

 いや、本気じゃないから以前の本気を超えているってことは無いけれど、予想よりも結果を出してくれる。

 ううむ、何かきな臭い。きな臭いってこの使い方で合ってるのだろうか。

 目の前を見てみると黄金色の断裂(ライトライン)が倒れて動こうとしない。

「ああ、もしかしてやりすぎたかなぁ」

 正直、攻撃している最中でやり遂げた感を得て怒りは大分軽減されていたのでここまでやらなくても良かったのである。

 様子を見る為に近づいてみせると最後の力か黄金色の線では無く砲撃の様なものが放たれ、俺の視界は黄金色でいっぱいになった。

 イメージ的には山吹色が主軸で構成された道着を使用している亀印が映える例の流派の奥義である気功砲と同じ様な形状である。

 黄金色のそれが邪魔で見る事は叶わないが、彼女はやり遂げた気分でいるだろう。

 これはいくら何でも回避できるものではない。

 俺はボロボロの彼女が浮かべているであろう口の端をつり上げて笑みを表現している情景を思い浮かべながら黄金色のそれを諦めて受け入れ――

「わけないわ!」

 いくら何でも死んでしまう!

 誰も見ていない訳だしそろそろ本気じゃなくて全力と言うものを出すかなぁ。

 死ぬ事に問題は感じないのだけれど、エドルやユウトやフィニーアに恩を返せていない。

 このまま恩を返せないなんてカスの仲間入りである。それは御免だ。

 と、言う訳で俺は文字通り死んでも死にきれないという事を体現して見せよう。

形状実装(リード)

 岩で出来た両手剣を作成し、構える。

特性実装(ブースト)

 作成した剣に魔法による能力付加を行使する。

 以前見かけた魔法武器というヤツである。付加能力は氷結・冷却能力。

 刀身から冷気が発せられ、それに接触した黄金色のそれと接触すると凄まじい水蒸気が発生した。

「――いけるか?」

 と、あまりの均衡具合にいけませんよフラグを立てる発言を漏らしてしまう。

 ああ、フラグは忠実らしく良くない方向へ場が流れる。

 手に持つ剣が冷気と熱気の両方に襲われ罅が入ってきている。このままでは明らかに黄金色のそれを防ぎきる前に剣が砕け、俺は蒸発死してしまうだろう。

 背に腹は代えられないな。

形状実装(リード)

 自身の鉄分と大気中の炭素やストックの岩を総動員して手に持つ剣の形状を変化させる。

 手に握られる両手剣は、先程までの岩を切り抜いた無骨な剣の形をした何かの様なものではなく、ちゃんとした鉄で出来ていた。

 見る限りは耐久値が格段に上昇している。

 これならば耐えきれるだろう。ギリギリだが。

 俺は別段少年漫画に出演するつもりは無いので、うおおおおおおおお、とか、おおおおおおおおおおおといった掛け声は発する事無く、寧ろ無言でそれに耐えきった。

 よくやった自分!

 危うく命日だったよ自覚しろ自分!

 何とか俺は五体満足で死合いを終えたらしい。

 力尽きて意識を失っている黄金色の断裂(ライトライン)を視認して俺はようやく死から解放された事を実感した。

 これから彼女が目覚めたときにどう対処しようかと悩む訳だが、今は生を堪能しようとしよう。

 とりあえず、逃げても彼女なら俺を見つけ出すだろうし、取り敢えず駄目元で交渉紛いの事でもして何とか許してもらえるようにしよう。

 彼女は別段悪人でも俺みたいな罪人でも無さそうだし理解してくれるだろう。

 多分。

更新速度は遅いですけれど、もうひとつ作品を投稿させていただいていますので良ければそちらも宜しくお願いいたします。

そちらの方がチートな作品になるんじゃないかなぁ、と思っています。

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