第十二話 -触る神に祟りはあるのだろうな-
あり得ない位に話に展開が見られません。
反省しています
俺はどういう訳だか済し崩し的にとでも言おうか、兎に角避けられない運命的な何かが介入したとしか思えない程の経緯を辿って恐らく、人間だと最強に位置するのではないかと勝手にランキングさせている一人と奮闘する羽目になった訳だ。
予想外というか、相性的に当然というか、俺はほぼ無傷と言える状態であるので実感はあまりわかない。
いや、そう思うのはそれだけではないだろう。
ここへと来た当初はやはり内心混乱していたのか、気がつかなかったが、どうも俺の身体が思うように動かない。
最初はブランクなのではないだろうかと思ったが、よくよく考えてみると出身世界にいた時とは別の違和感を身体に感じる。
これは一体全体何なのだろうか。
神が何か仕込んだという線が濃厚なのではないだろうかと疑ってかかっている。
俺の中での神の信頼度は底辺と表現するのはまだ甘い。最早奈落の底まで失墜している。
元々、俺は神など信じてはいないのでそれ程信頼度は高くは無かったのだけれども。
神に貰ったナイフは即行壊れて――いや、これは身体が上手く動かない程度で力量を落とした俺の落ち度かもしれないが――貰った魔道書型のおそらく神器は、周囲の思考的に使用そのものが迂闊に出来ない。
貰った服もあまり人と接していない今は露見していないが、世界観を無視した迷彩服である。
簡単に言えばサバゲをやっている人々や陸上自衛隊が着ていそうなあれである。靴も軍用ブーツという徹底ぶりの世界観無視である。
あまり数を見ていないから断言はできないが、この世界の住民は昔のRPGゲームによくいそうな魔法使いのローブやら鎧姿――こちらは軽鎧やら騎士甲冑などバリエーションが豊富である――やら村人AとかBとか名乗れそうで、村の入り口で「ここは○○の街だよ」なんていう定型文のみしか話さない人物が装備している様なシンプル・イズ・ザ・ベストを追求した様な服装が多いのだ。
もちろん、これで服装の全てを語りつくせた訳ではないが、概ねこんなもんである。
つまり、この世界の住人からすれば俺はどう考えても変な恰好した変質者なのである。この年で不審者認定は少々応えるものがある。
そんなこんなで空振りにも程が有るという具合にミステイクなものばかりを渡してきた神に信頼感を抱く等到底無理な話なのである。
そんな訳だから、神は俺に恩恵を与えたと聞かずとも伝わってくるような面を浮かべながら俺に何かやらかしたんだろうと思う。
ううむ。
良く考えてみれば、三年ほど前には勇者が召喚されていたのに俺を送り込むというポカもしてのけている。
俺としては今以上に自堕落で無意味な生活を送る所であっただろうからそれをあまりポカと表現する気にはなれないが、兎に角俺が知る限り神の独断で行った事に対して良い結果を招いたのは正直存在しない。
強いて言えば俺が世界移動をして喜んだ事と能力付加程度だろうか。
能力の内容は俺が考えたのでカウントするかは危うい所だけれど。
どう考えても俺はイレギュラーで不必要な存在なのである。これをきっと蛇足と言うのだ。
まあ、過ぎた事をぐだぐだと考えても仕方が無い。
少々思考のループが始まっている訳だし、閑話休題しておこう。
兎に角、黄金色の断裂に勝利し、彼女は現状意識を失っているとはいえ目覚め次第戦闘再開、なんて自体に発展しない事も無い。
とりあえず、融解しなかった岩の回収と、そこいらで死屍累々を体現している山賊らしき男達の死体の身ぐるみを剥いでおこう。
ゲームとは違い、破損しない限りドロップ率100%であるのが現実だ。
手に取ってみてわかったが、男達の装備はどうも品質が良くない。
よくこの装備であの騎士の集団と相対する気になったものだ。
俺ならば間違いなく尻尾を巻いて逃げている。誇れることではないけれど。
何らかの戦闘技術があるなら話は別だろうが、残っている部分の筋肉やら骨格を見る限りはそういった技術を持ったやつは皆無であるとわかった。
うん、多分こんなワイルドな集団に入るには無謀さが必要なのだろう。
なら俺は入れないだろうなぁ、等と思いつつ死体の装備品を回収する。
先程の戦闘で作成したやたらデカイ岩の剣を筆頭に幾つかは無事であったのでそれも回収する。
残念ながら最後に作成した一番まともそうなあの剣は黄金色の断裂の攻撃を防いだ結果、耐久値が無くなり霧散してしまったので回収は叶わなかった。
とりあえず、後で死体から剥ぎ取った服で世界観をブチ壊さない服でも作っておきたい所だ。
武装に関しては剥ぎ取ったナイフやらが多数残存していたので当面は困らないだろう。
粗悪品なので耐久値が低く、俺の乱雑な扱いだとすぐにつぶれてしまうだろうが。
さて、黄金色の断裂は力を使い切ったからなのか感じる気配が小さくなっているので、おそらく眼が覚めても当分はまともに戦えないのではないだろうか。
少なくとも、先ほどよりかは力を発揮できないはずである。
ならば、偉いさんである黄金色の断裂を伸してしまった俺が指名手配になるという事態は避けたいために眼が覚めるまでここで待機しておくしかないだろう。
黄金色の断裂には交渉の余地があると俺は踏んでいる。
戦闘中でも返答はしてくれたので、少なくとも端から俺の話を聞かないなんて早計な事をする人物ではないということである。
ああ、だけれど俺の剥ぎ取りというなの追い剥ぎを見て憤怒しそうだなぁ。
彼女は戦争で戦ってばかりで混戦での汚さや冷酷さをしらなさそうだからだ。
まあ、偏見かもしれないけれども可能性は無くは無いよな。
あそこまで戦闘能力を得るまでも戦争に参加していたなら話は別だろうけれども、仲間を案じてかまあ、彼女の場合は巻き込んでしまいそうという理由で案じているのだろうが、自分一人を残して他を撤退させ戦うなんて事をやってしまうんじゃあ、汚さなんて知らないんじゃないかと思える。
少なくとも俺が追い剥ぎしたと確定的になりそうな自体は避けておいた方が良いかもしれない。
俺は意識の無い黄金色の断裂を背負って街へと向かって歩を進めた。
「ふうむ。あまり重くなくて楽でいいな」
彼女の背丈は150後半から160cm程である。そこそこの重量があるかと思ったが、見た目以上に軽い。
鎧を着込んでその下に服を着ているので厳密にはわからないが、背負った感触的にあまり筋肉は無いようで、体系はやせ気味である。
それを鑑みればこの軽さも頷けるというものである。
どうやら、彼女は主にあの極悪なビームサーベル的な魔法で戦うからなのか筋肉は予想以上に少ない。
おそらく、撤退していったどの騎士よりも非力だろう。
もしかしたら、騎士になった事どころか、剣を握ったのでさえあの魔法を覚えてからかもしれない。
そうなるなら、尚更追い剥ぎがばれないようにしなければならないかもしれないな。
ああ、それなら目覚めて直ぐに襲いかかってくるって事も可能性としては低いかもしれないなぁ。
や、安心も油断もしないし出来ないけれど。
見た感じすぐには目覚めなさそうだから振動が彼女に伝わらないように静かに、そして撤退した騎士達に見つからないように隠密に向かうとしよう。
安い宿を知っていればいいのだけれど、残念ながら街中で知っている店は殆どない。
堕落洞窟の準備として――修行の準備として買い出しに行った時にお世話になった店ぐらいである。
ああ、そういえば候補が無くは無い、か。
「……で、ここしか心当たりがなかったと」
「サーセン」
俺のレパートリーの中にはあの酒場しか無かったのである。
扉を開けた時はにこやかな顔を作っているだろうが厳ついので殴り合いをした後かと思えるような顔になっていたが、それを向けてきた。
正直、膀胱がプールされた液体を放出しようとして仕方がなかったが、マスターと顔を合わせるのは二度目であるので心構えの御蔭で耐えきれた。
初回にあの笑みを見ていると俺の膀胱は機能維持を放棄しただろう。
背中で意識不明からチェンジして寝息を立てる穏やかな状態へと移行した黄金色の断裂には見せられないのは確かである。
彼女なら悲鳴を上げてしまうのではないだろうか。
そんなイメージである。
「……悪かったな。顔は生まれつきだ」
どうやら俺の膀胱のステータスは顔を媒体として表していたらしい。
ううむ、それなら悪かった。
「お前なぁ……」
と、ため息を吐くマスター。一体どうしたというのだろうか。
俺はどうやら膀胱のステータスが顔に出ていたと勘違いされたかと思い、その誤解を正す為に行動に移しただけだ。
解決方法とは、至極簡単である。
マスターにはお世話になるかもしれないのでマスターを立てただけだ。
つまり、膀胱のステータスを顔で表してみた。
先程の思わず漏れたステータスの一端を全開にしたので、どう考えても先程よりも酷い顔になっているに違いないのである。
鏡を見ていないので何とも言えないけれど、体感的に当社比30%アップと言った所だろう。
厳密にはこれの4倍は表現したかったのだが、残念ながらそれを表現するには人間を辞めざるをえないようである。
つまり、人間の表情筋には限界があるという事だ。
あまりにも普段動かさない形状に表情筋を蠢かせて酷使したのでもしかすると明日、表情筋が筋肉痛になっているかもしれないな。
そうなったら顔を動かすたびに痛みが巻き起こって食事もままならないだろうなぁ。
閑話休題。
「まあ、奥の部屋を使うが良いさ……」
繁盛する昼時を超えているからか、客は少ないので問題は無いが、マスターは肩を落として、文字通りパージして落としたのかと勘違いするぐらいに肩のy座標を下へと下げ酒場がどれ程盛り上がろうと、唐突におやじギャグをブチかますぐらいの勢いで空気を塗り替えていた。
暗い空気に。
何か問題でも起きたのだろう。あの様子を見るからに非常に大問題でありそうだ。
何か頼まれたら協力してやることも吝かではないとしか考えられない様な様子であった。
カウンター奥の扉を開けると、酒場の概観に合わない程度に廊下が続いていた。
奥行きはかなりあり、高さは特筆して語る程おかしい部分は無く、横幅は、俺二人分ぐらいだろうか。
左右にはそこそこの数の扉が見られ、最奥にも扉が見られた。
あの部屋が目的地だろう。
妙にボロくて開けると軋んだ音が聞こえる扉を蹴り飛ばす要領で開け放ち入室した。
部屋の内部には学習机二つ分程の大きさの机が一つと、エドルでもねっ転がれそうな大きなベッドが二つあり、窓が一つあった。
ふむふむ。
つまり、黄金色の断裂に追い剥ぎがばれて激怒したり、目覚めて襲いかかってきたらあの窓が生命線という訳か。
一階であるのであの窓という名の非常口は俺でも使用可能なのである。
最悪、木造なので壁を度外視して直進するけれど。
木ぐらいなら貫通して進める気がする。
黄金色の断裂相手では距離などあまり関係ない問題なので何れにせよ攻撃を受けそうであるけれど。
と、余計な事を考えるのを止め、彼女をベッドの上に下ろした。
寝違えそうであったので鎧は外しておく。
この寝姿を見る限りはあの極悪な魔法を繰り出して襲いかかってくるなんて思いもしないなぁ。
筋肉もそれ程ついていないし、まさしく乙女の様相である。
……目覚める気配がないので相当暇である。
別段やらなくても良いが又は、今すぐやらなくても良いだろう事を済ませておく事にしよう。
魔道書を展開する。
俺がつけた傷が残っていては彼女の御機嫌は斜めになってしまうかもしれないと考えたのである。
目立つ傷は無いのだが、戦闘の際に鎧の隙間に放った蹴りやら岩の棒による襲撃やらがつもりにつもって結構痛むようになっている。
今は眠っているので騒ぎはしないが、常人なら目や鼻から液体を漏らす程度には痛いのである。
戦闘の際に泣き叫ばなかった所か、それを思わせるような事を全くしなかったのは称賛に値する。寧ろ値し過ぎて感心するよりも驚愕する程である。
魔力を練り、魔法を構築する。
その作業は魔道書の御蔭でものの数秒で終わり、それと同時に治療が終わる。
やはり、魔法とは凄まじいものだ。
俺がこの傷をいつも通り自己治癒で完治させようと思えばおそらく3日ぐらいはかかる。
まあ、俺の防御力は一般人のそれと変らないか、それ以下であるので成るべく攻撃を受けないように努めているので気にする所ではないのだけれど。
そもそも、あんな死闘で攻撃を食らおうものなら、イコール即死で結びつけられるレベルである。
なので、回復などする余裕は一切ないのである。
刃物や鈍器なら筋肉である程度防御できるだろうけれど、魔法っていうものはどうしようもないようにしか感じないのだ。
喰らう気にもなれない。
金をもらっても嫌である。
そもそも、相手が使用しているのを目撃した魔法が結構極悪なものしかなかったのが問題か、それとも俺は楽観視し過ぎていて、あの程度の魔法は普通って感じだったりするのだろうか。
前者なら回復の事考えるぐらいならさっさと反復横飛びでもして回避率上げろと言いたくなり、後者なら諦めて死ね、もしくは反復横飛びでもしていろ、と言いたくなる。
どちらにしても回避に努めるべきは確定である。
防御は最後の手段で最悪の手段なのだ。
俺が防御行動を取ってもそれ程防御力も防御率も向上しないように感じるからなぁ。
俺の防御なんてビームサーベルやらエドルの剛腕ぶるんぶるんソードを食らえば紙よりも柔らかくあっさりと爽快に、濡れに濡れた障子以上に破れ砕け死ぬのである。
ううむ。
考えれば考える程黄金色の断裂は兎も角、エドルは人外の動きをするよなぁ。
エドルって人間だったよなぁ。
聞き間違いで、実は人間以外の種族でした、的な事は無いのだろうか。
これは予想なんだけど、多分マスターも結構人外の動きをすると思うんだよね。
足運びや重心移動を見る限り常人のそれではない事はすぐにわかる。
どういう訳か人弾丸にはクリーンヒットして壁から身体を生やしていたが、何らかの達人クラスなんだと思うんだよな。
まあ、気にしても仕方ないか。
気にすべきは、エドルの知り合いはおっかない人しか居ないのかって疑問に思わざるを得ない人々の出演って所か。
マスターと黄金色の断裂だけだが、それだけで十分以上である。
黄金色の断裂の鎧も直しておこうかと思ったが、この鎧の品質に見合った素材が無かった為に断念した。
碌な品質の素材が手元にないのである。
もっと良い装備をドロップしてほしいものだ。
それはもうゲームバランスなんて気にしない、と公言できるレベルの良い物を。
多分彼女の鎧は相当良い物だ。
魔法武器の様な感じで幾つかの魔法が施されている。
まず、錆びたり壊れたりしないように硬化・保持の魔法が施されている。
これにより、錆びたり等の物理干渉による状態異常と言えば良いのだろうか。品質が下がるという様な事が発生しない。
これが保持である。
硬化は、文字通り頑丈にする為に固くしている。
それにより防御力は相当高い。
某RPGであるファイナルといいつつ幾つも出てシリーズ化しているあれで言うと、多分アダマンダイトとかオリハルコンで作成された防具以上の硬度である。
硬化自体にそれ程の効力は無いのだけれど施した人物が相当優秀だったらしい。
普通の鉄の鎧はほぼ最強防具に変貌したのである。
そこらで鉄の鎧を購入して魔法を施して増殖し、転売すれば即行で億万長者になれそうだ。
他の防具売りから殺されそうだけど。
次は、魔法遮断効果である。
これは文字通り魔法を遮断する。
多分、補助魔法も弾いちゃうから長所ばかりという訳ではないけれど。
その代わり、相手の攻撃魔法も大体は弾くから、短所よりも長所が目立つだろう。
かなり出来た代物である。
おおう。
他人の鎧の考察というか説明をしている場合では無かった。
取り敢えず、追い剥ぎした材料を使用して、この際総動員しても良い。
兎に角、この世界観をブチ壊す服装から脱却したいのである。
俺は切り裂かれた服を幾つか取りだす。
別段品質にこだわる訳ではないのでこれだけあれば事足りるだろう。
「形状実装」
服の形状は今までの買い物やらここに来る際に見かけたものを覚えたりと準備は万端である。
俺の準備万端ぶりに見合った出来の服が完成した。
その形状を評してこの服に名前をつけよう。
村人A、これがこの服の名前である。
なんだか、茶色やら緑っぽいような色を主軸とした飾り気のない上着とズボンである。
おそらく、この国に来る途中で立ち寄った村の住人の服装以上に地味である。
下手したら迷彩服よりも迷彩効果を発揮しそうだと思う。
早速着替えてポーズを取ってみる。
が、鏡が無いので確認は出来なかった。
まあ、問題ないだろ。
覗く足が異常にあるのでかなり恰好悪い丈の半ズボンになりかねない状況だが、この丈だとギリギリセーフだろう。
覗く足を見て思ったのだが、この世界は春夏秋冬なるモノはないのだろうか。
この世界に来てから暑くも無く寒くも無くである。
俺の体感温度がおかしくなった訳ではなく、証拠として少々あった日焼けが――投獄されていたのに何故日焼けしているかは俺の脱走頻度を慮ればすぐにわかるだろう――無くなって異常なまでに白い肌になっている。
俺の肌ってこんなに白かったのか。
以前の世界では肌の色なんて気にも留めなかったからなぁ。
というか、ファッション関連に全く興味を裂かなかったり。
だからこそ、この際どくヤバそうな半ズボンもどきを装着してもそのままでいられるのかもしれない。
ファッションデザイナーとかが俺を視界に入れると殴り飛ばしてしまうのかなぁ、と無駄な事を考えてみる。
ファッションに無頓着な俺でもギリギリ許容する程度にヤバいのである。
迷彩服程世界観をブチ壊しはしないが、俺の心的状況と社会的立ち位置をブチ壊しかねないという諸刃の剣ならぬ諸刃の服である。
決して刃は装着されていないが、精神を一刀両断できる威力は秘めている。
以前の世界であれば間違いなく装着しなかっただろうな。
完全に無事だった山賊っぽい奴らの服が無かったのが悔やまれる。
いや、無時でも多分赤一色に染められていただろうから微妙だけれど。
あ、それって無時って言わないか。
赤く染色されていないってのも含めて無事なら装着するけれどあれはそんなもんを生産できる程生産的な場面じゃあなかったなぁ。
胴体部分と生き別れ者続出という事態だったので服の形状の保持は奇跡が起これば何とかなるだろうけれど、赤の染色は回避できないだろう。
特に下半身の装備品であるズボン。
そんな服を装着すれば色合い的に異常に白い俺の肌が更に露見してしまう。
この色白具合と俺の顔を合わせれば漏れなく不審者に慣れる。
つまり、今は不審者に片足を突っ込んだ状態である。
突っ込んだ場所は不審者という名の底なし沼なのだ。
入れば戻れる保証は無く、戻れない保証は投げ売りのバーゲンセール状態なのだ。
兎に角、無事俺は村人Aというか、肌の白い村人Aか不審者っぽい村人Aと呼称されても然るべきという格好になる事が出来た。
元々着ていた迷彩服は保管しておこう。
捨てるなんてMOTTAINAI。
小腹がすいたので何やら調達しに行こうと考えたがもうすぐ目覚めそうな雰囲気であったので断念する。
マスターに何やら恵んでもらおうと考えなくは無かったのだが、例の緑のトーストという形状だけでも恐怖であるのに、その見た目に相反し過ぎたトースト味でも緑色の何かの味でもないミートスパゲティ味と言う味としては申し分ないが、現れる場所を間違えたが故に恐怖しか与えないという不器用の体現と言えるあの料理に追随した何か、又は同じものが出てきそうであったのでそんな提案を出した自分を殴り飛ばしたくなった。
もちろん、マスターの元へと行く事は断固拒否である。
まあ、もうすぐすやすやとお気楽に眠っているビームサーベルの悪魔はお目覚めである。
身だしなみを出来るだけ整え、彼女を不機嫌にさせないように悪あがきをしてみる。
どう考えてもファッションに興味など無い俺がどうにかこうにかしようと付け焼刃とさえ呼べない程拙いモノであるが致し方ないというものだ。
ビームサーベルの切れ味を試したくは無いので俺は非常に下で出従順なのである。
あと俺に出来る事と言えばおはようと笑顔を浮かべるばかりである。
決してマスターの様な殺さんばかりの笑顔は浮かべない様に注意しなければならない。
あれは生まれつきの問題かもしれないけれど。




