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魔王物語  作者: ragana
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第十三話 -火の無い所に煙は立たないらしい-

「う……ん……」

 ぐだぐだ無駄に何やら考える事5分程で黄金色の断裂(ライトライン)は目覚める兆候を見せた。

 俺はベッドの上に寝転がってだらけていたのだが、そんな調子を見せていると不快感を感じる人間もいるのですぐさま部屋に配置されていた机とセットじゃないかなと思うデザインの椅子を引き腰掛けた。

 当然、だらけ具合は全く漏らさず背筋こそ伸ばしてはいないが学校の授業中に先生に何故か注目されている様な感じに姿勢を正した。

 とは言っても、俺は小学やら中学といった義務教育さえ放棄していたので想像で語るしかない例なのだけれど。

 彼女が瞼を重そうに持ち上げると空のように透き通った眼を確認することが出来た。

 金髪の三つ編みに碧眼。

 俺の元いた世界での環境というか、少々国際的であるようで鎖国的であった交友関係を考えるとどれ程輪廻転生を繰り返しても紛れ込みそうも無い組み合わせの特徴的な色素配分であった。

 そんな、世間的にはどうかは知らないが、少なくとも個人的には珍しく思うその組み合わせを呆けた様に見つめていたおかげで声をかけるタイミングを逃してしまった。

 先が思いやられるというものである。

 しっかりしろよ、と自分に言いたくなる感じである。

「……」

 てっきり俺が黙り込んでいることなど関係なく場面が変わり殺し合いをしていた相手が同室していたら何か突込みがあるのかと思っていたがどうもそうではないらしく、黄金色の断裂(ライトライン)は口を動かさなかった。

 ひょっとしたら沈黙が言葉代わりになるとか、俺が他者の心を読めるとかそんなことを考えているんじゃあないだろうな。

 前者は事実であったとしても俺は生憎と沈黙を読むことも聞く事も出来ないのである。

 後者だというのであれば、いらぬ期待は焼却炉に放り込んでお払いのごとく消し去ってしまえと俺は言うだろう。

「……」

 緊張しているから故の沈黙かと思ったが別段それらしい動作をしているわけではない。

 いや、呼吸などの生命活動を除いて何も行っていないのでそれらしい動作所か、それらしくない動作さえ見て取れないのでそれに信憑性があるとは思えないのが問題である。

 そんな精神的に圧迫されそうな攻撃的な沈黙に押し潰されそうになりはしないが余裕がなくなっていることに気がついた。

 あのまま放置していたら思考が堂々巡りを起こして何の進展も見せずに時だけを浪費するという愚考をしでかしてしまう所であった。

 こういう時は深呼吸をすればいいと何処かで聞いたことがある。

 正直、あまり効果は期待できないだろうと前々から思っていたが、人間とは藁をも縋る時がある。

 例えば今のようにそれとなくピンチの時であったりなどである。

 俺も例に漏れず深呼吸を行ってみる。

 ただし、現実にいきなり深呼吸をしてみせると不審者扱いを受ける自信があったので心の中で深呼吸を行う。

 エア深呼吸をも凌駕したエアっぷりである。

 この世界ではいきなり深呼吸を始めるのは不審者扱いにはならず、寧ろ優遇されるなんて設定があるかもしれないが、少なくとも元いた世界では間違いなく不審者入りであり、下手をするとそのまま御用になりかねなかったと思うので謝礼を出すといわれても拒絶していただろう。

 少なくとも心の中だけの動作であれば外観的には判る筈もないのでこれ幸いと思う存分に深呼吸してみることにした。

 大凡、0.5回程で飽きてしまったのですぐさま俺のエアっぷりはお蔵入りである。

 そんなエアっぷりを本領発揮とばかりに誰知れずにやってのけていた俺である。

 それまでは本当に余裕がなかったらしく、エア深呼吸を超えた存在の深呼吸をやってのけた後には周りを見る余裕を取り戻していた。

 黄金色の断裂(ライトライン)の目は俺の服――いや、丈のせいで非常にやばいズボンに目が言っている。

 その注視具合を見ると、ギリギリセーフな丈かと思ったけれどギリギリアウトであったのかもしれない。

「ああ、このズボンね。ちょうど良い丈に作ったつもりだったんだけど上手くいかなかったんすよ」

 上下共に良い具合のサイズに作成したつもりであったが、能力に不慣れなせいかよくわからない丈になったらしいのである。

 正直、上下共に小さい。

 いや、短いのか。

 サイズ自体はちょうど良い具合なのだが――少し大きめになってしまっているが許容範囲だろう――袖や裾の長さが許容範囲を超えた短さなのである。

 服単体をぱっと見た時はそうでもなかったのだけれど。

「作る? あまり時間は経過していないようですが、その時間に? 貴方は創具者(ライテスト)なのですか?」

 創具者(ライテスト)なるものがどういうものかはさっぱり分からないので曖昧に微笑んで誤魔化すことにした。

「短時間で出来ても精度がこれですからね」

 はは、と苦笑を洩らさずを得ない俺である。

 流石にこんな良く分からない袖と裾の服を作って何が嬉しいのか。

 俺は嬉しくは無い。かなり微妙であるからだ。

「そんな事ないですよ。実際は見ていないのでどれ程の速度かはわかりませんけれど、速度次第では精度を度外視して国の保護を受けられる様になります。現に、この国にも三人ほどいますし」

 ふむふむ。そうなのか。

 それはそれで良いのだけれど、あまりにも話題に出無さ過ぎて失念していたのだが、彼女とは先程まで死闘を繰り広げていたのである。

 俺はそれとなく打たれ弱いけれど図太さは相当であるので何も感じていなかったが、彼女はそうには見えない。

 記憶が飛んで俺関連の全てを忘れているとか、記憶の改竄が発生しているのではあるまいな。

「いえ、貴方からは殺気を感じませんのでそれで警戒を解いているのですよ」

 と、彼女は俺の思考を先読みではなくリアルタイムで閲覧しているのかと疑わざるを得ない事をしでかして返答を発した。

「そっすかー」

 死闘になった事によって何らかのしこりが出来るかと思ったがそんな気配など皆無である。

 いや、彼女はかなり無表情であるので断定はできないが、かすかに読みとれるそれによるとしこりはなさそうである。

 ひとまずは安心しておこうと思う。

「申し訳ありません」

「……何?」

 何故か前触れ無く彼女が頭を下げていた。

 彼女の旋毛が見えて彼女の様な美人でも旋毛は旋毛だなぁ、と訳の分からない事を考えていた所に襲いかかってきたので、俺の頭の中を循環していた訳のわからない事以上に異常に訳のわからない事が発生したので、更に俺の頭の中は思考さえ読みとれない具合に訳がわからなくなった。

 辛うじて絞り出した台詞は気も何も利いたものではなく文字で表記すると一文字、厳密には二文字程度の発音であった。

 俺はそれに対して自己嫌悪していたのだが、彼女はそんな事等気にしたそぶりも見せずに話を続けた。

「貴方は何かに対して怒り、私はその理由も聞きもせずに攻撃を行いました。それとも理由は無かったのでしょうか?」

 律義な女性である。

 怒りと言えばあれか。家が潰れたやつか。

「ああ、あれね。 黄金色の断裂(ライトライン)さんが切り崩した崖に俺の拠点がありましてね。 それが忽然と消える怪奇現象がおきまして、それの原因が貴女である疑いが有りまして」

 彼女の律義さなどを知った今となっては、断定できる状況で無かったのに攻撃を行ったという行動は恥ずかしく思える。黒歴史というやつに登録しても良いのではないだろうか。不覚である。

「……それは、――申し訳ありません」

 絞り出すように言う彼女は泣く寸前という様な顔である。

 辛うじて堪えているのだが瓦解するのは時間の問題である事は明白であると言えそうな顔である。

「いや、堕落しそうな所を助けていただいたのでこちらがお礼を言う所ですよ」

 と、説明不足につき相手からすれば意味のわからない、気が狂ったのかと思われる様な言葉を取り合えず思いつくままに口に出してみるが焼け石に水にもならないと後にて気付く。

「そうですか。――えっと、敬語を使って貰わなくて結構ですよ? 私のこれは癖の様なものなので気にしないで頂けるとありがたいです」

「あ、そうです――そうか? ならそうさせてもらうよ黄金色の断裂(ライトライン)さん」

 何気にフレンドリーであるなぁ。

 非常に好感が持てる。心の中は五月蠅くて心の口を捥ぎってしまえと叫びたい所であったが口が捥がれるとその叫びも発せなくなる事に気が付き前言撤回する俺がいるが、他者から見た俺は無口の部類に入る。

 そんな俺と同等程度に無口である黄金色の断裂(ライトライン)とは何か共鳴できそうな感じがしそうだ。

 エドルとはまた違う雰囲気である。

 いや、エドルは五月蠅いのだけれど。

「私の事は黄金色の断裂(ライトライン)なんて称号で呼んでいただかなくて結構ですよ? 黄金色の断裂(ライトライン)なんて大層な名前で呼ばれていますけれどそれに見合った内面とは思えませんし。それに黄金色の断裂(ライトライン)という称号は、私が戦闘の際に使用していた魔法が扱えれば得られる称号の様ですし、私専用と言う訳ではなさそうですから」

 まあ、黄金色の断裂(ライトライン)って大層な名前には不釣り合いの様な雰囲気は感じる。

 彼女は至って普通の女性であると感じるのである。

 いや、平均よりも好感を持てる女性である。無口で無表情であるが、気を遣っているのはヒシヒシと伝わる。

「んじゃー、黄金色の断裂(ライトライン)って呼ばないわ。 何て呼べばいい?」

「好きに呼んでもらって構いませんよ。 ああ、私の名前は、アリアリナ・ベヒスと言います」

 なら何だろうなぁ。アリアとかだと馴れ馴れしいだろうし、馴れ馴れしいのは好ましくない。

 取り合えず普通に名字かなぁ。

「んじゃ、ベヒスって呼ぶわ」

「はい。 ……私は貴方を何と呼べばいいですか?」

 そういえば、お互いに名乗っていなかった。現状だと俺だけ名乗っていない。

 不敬に当たるぞ!

「ああ、俺はナーク。宜しくな」

 偽名であるのは謝罪したい所であったが、事情により憚られた。

 死ぬまでには自首したいものである。

「それでは、ナークさんと呼ばせてもらっても?」

「ん? ああ、ナークって呼び捨てでも良いぐらいだ」

 嘘つきの屑野郎って呼ばれても反論できない気持である。

「そうですか? では、ナークと呼ばせてもらいますね」

 と一笑してみせる。

 ベヒス嬢の笑みと言うか表情は初めて見たかもしれない。あ、いや、悲しそうな顔は俺の記憶から消してしまいたいのでカウントしないのである。兎に角、相当レアであるかもしれないので記憶に焼き付けておくとしよう。

「それで、ナーク。壊してしまった拠点はどうしたらいいでしょうか。私一人だと崖の修復までかなりの時間がかかってしまいます……」

 先の笑みなど無かったと言えるぐらいに申し訳ないという雰囲気に変わる。

 先も言ったが、堕落から脱出する要因であったので寧ろ感謝しているのだけれど。

「気にしなくて良い。 どうせ不要どころか俺に害を与える快適を与えていたからなぁ。それにベヒスの鎧を壊しちまったからなぁ」

 とは言ってみるが気が済まない、という気配がびんびんと伝わる。

 無言でありながら感情を伝える技術は驚嘆に値するというモノである。

「鎧は国の支給品なので壊れようと私には関係ないのです」

 そうであったか。鎧は回を許してもらう代わりに拠点を許そうかと思ったが彼女からしたら納得いかないのか。

 ああ、そうだ。この際だ。正式に和解してしまおう。

「ならさ、友達になってくれよ。俺、あんまり友達いないからさ」

 この世界ならエドルぐらいで、前の世界だと皆無じゃないだろうか。

 葬式をしても、雇わない限り仕切る人間さえいない。

 そんな俺の台詞を聞いて目を見開いているベヒス嬢。

 友達になりたくないって雰囲気は出していないけれど心配は心配である。

 俺の思いあがりという可能性は捨てきれないのである。

「それで、良いのですか? 私の事怖くないのですか?」

 怖い、とは。

 もしかして、テンプレよろしく、ベヒス嬢の戦闘力に畏怖を抱いて化け物とか言った阿呆が居たんじゃないだろうな。

 何はともあれ、何はともあれである。

「怖いって感想が出てくる理由さえ掴めないなぁ。つまり、怖いって思う要因が皆無だな」

「私と戦って怖いと感じなかったのですか? 殆どの方は私のあれを見て化け物と――」

 やはり、か。

 俺はそんな事気にするタマじゃあないし、その程度で喚いていたら俺は以前の世界で生き抜けていなかっただろうな。

「――それじゃあ、ビヘスに何の間違いか拮抗した俺も化け物って訳だな。化け物は化け物を化け物と呼ばないさ。 犯罪者が犯罪者を犯罪者と呼ばない様にな。だから俺がベヒスを化け物と怖がるってのはあり得ないって事だ」

 例外として頭の悪い奴が頭の悪い奴に頭が悪いな、という事はある。

 まあ、関係の無い話だ。

「っつー訳だ。ベヒスが嫌だって思ってないなら強制的に友達になってもらうかな。同類は図らずして引き合うものだからな。どうせ同じなら早い方が良いだろう」

 正直、知り合いが皆無と言える状態であれば寂しくて死んでしまう様な気がする。

 そんな理由と銘打った下心が満載であるが。

 寧ろ俺が俺と友達に――知り合いになっても良いのかい?と聞いてしまいたくなる。

「はい、私でよければお願いします」

 うん。

 やっぱりベヒス嬢は笑った方が良い。

 笑ってるというか表情が変っているか微妙な感じであるがそう思う。

 仲良くなれたのなら幸いである。

 とりあえず、この機会に聞きたいことを聞いてしまっておこう。

「あの、さ。気分悪くしたら申し訳ないが、聞きたいことがある」

「気兼ねなく聞いてください」

 即答である。俺は若干の躊躇をしつつ聞いたのだが、そんな俺が阿呆みたいである。

「じゃあ遠慮なく。――単刀直入に聞くけれど、噂は本当か?」

 正直、心配である。

 事実であったなら肩と接触事故を起こさないように細心の注意を払わなければならないのである。

「噂っとは?」

 本人はご存知でないらしい。

 いや、確かにそんな噂がもし事実であるなら、それを当人の前で言うと爆砕させられる物理的に。

「肩が当たっただけで相手が吹き飛んだとか酔った勢いで砦を消したとか、さ」

 若干躊躇しつつ又聞きの噂。

 マスターが言う事なので事実だと思うのだけれど、裏づけは取っていない。

 そんな程度のことを聞くのは失礼かと懸念したわけだが、残念ながら、肩と接触して吹き飛ぶといった洒落にならない話で、事実なら洒落にならない結果しか招かないそれの真偽を確かめる気になるのも仕方のないものなのである。

「そ、そんな事はないです! 肩と接触してもせいぜい相手が尻餅をついたり、酔ってもどれだけ酷く見積もっても小屋ぐらいしか吹き飛ばしません!」

 事実ではなかったようだが、どっこいどっこいであったらしい。

 接触の方は実害はそれほどない。

 接触した場所が地雷原とかいう意味のわからないエリアでなければ問題ない。

 後者は、酒を飲ますのは止めようと心に決めることで問題ないだろう。

 いや、精神的に問題がある、か。

 まあ、気にしても仕方ないな。

「……そっか」

 質問は以上である。

 しょうもない事を聞いて、なんて呆れるかもしれないが、俺からすれば重大問題で、死活問題なのである。

「あ、すみません。ここは宿ですよね?」

 ああ、もしかしてその辺気にしてるのか?

「ここは町の酒場のマスターに借りた一室だから厳密には宿じゃあないな。当然、無料だから気にしなくて良い」

 そういえば、宿屋じゃないのにこの酒場は何故かなりの部屋数があったのだろう。

 ここまで何気に急いでいたのでスルーであったが、よくよく考えてみると異様である。

 見る限りは、マスターは独身であるし、金持ちという様相でもない。

 だが、この酒場には約13の部屋がある。

 ぱっと見なのでもしかするともっとあるかもしれない。

 が、少なくともこれ位はあるという事だ。

「私は、軍上層部への報告と部隊へ帰還したと報を入れなければならないのですけれど、行ってきてもいいですか?」

 ああ、騎士団か何かかと思ってはいたけれど軍の人でしたか。

 ベヒス嬢なのならばかなり上の階級なんじゃあないだろうかね。

 部隊長やっていたしな。それも、小隊ではなく、中隊クラスの人数で構成され、更に何人かはそこそこの使い手であった。

「なら、俺もついていくよ。 可能ならちょいと調べたいこと、というか聞きたい事があるヤツがいるから聞きたいしな」

「えっと、誰ですか? 仲介しますよ?」

 それは渡りに船である。

 遠慮なく仲介してもらうとしようか。

「国王か、この国の勇者のどちらかだよ」

「……頑張ってみます」

 と、一瞬悲しそうな顔をして、それを無かった事にするかのように控えめなガッツポーズに似た格好をしてみせてからそう意気込んだ。

 心強いが、無理なことは無理であると理解する頭ぐらいは持ち合わせているので期待しないことにした。

 一応言ってみただけというやつだ。

 ベヒス嬢が扉の方へ近づきこちらを見たので俺は後を追った。

「ん? もう良いのか?」

 と、部屋を出て廊下を通り、酒場へと出た所でマスターに声をかけられた。

「良いです」

 マスターの顔に委縮する事によってそっけないというか言葉足らずというかそういう返答になってしまった。

 いい加減にその程度で怒る人物ではないと理解はしているのだが、びくびくせざるを得ない威圧感を持ち、絶望感を与える顔である。

「そうか。まあ、また何かあったら良いに来い。出来ることならやってやる」

 エドルの人徳様々である。

 俺単体であれば今頃路頭に迷うどころか、途中で魔族によって俺はタンパク質の塊に変貌させられていただろう。

 地獄への片道切符の押し売りとは傍迷惑どころの話ではないというものだ。

「ありがとう、マスター」

 マスターもそうだが、俺の会う人会う人良い人ばかりである。

 流石にこの世界の住人皆がそうであるとは思えないわけだが。

 ああ、そういえばヌーダイセ王国の大通りから外れたところで追剥みたいなのに遭遇したな。

 あの例外を除いて良い人ばかりだ。

 おっと、余計なことを考えていたらベヒス嬢が酒場から出ようとしているじゃないか。

 置いていかれたら確実に迷子である。

 そんな事態には陥りたくはない。

 そういえば報告しに行くという話だが、どこに行くのか聞いていなかった。

「ベヒス――」

 声をかけ質問しようとしたが、なにやら歩きながら作業をしているようだ。

 ベヒス嬢の服に隠れるように装着されていたらしき腕輪から近未来的なホログラム的に空中に別段液晶など用いずに映像というか、データを展開していた。

 おおおおおお。

 すげえ!

 俺も欲しいなぁ。

 見てみると報告書類を作成しているようである。

 何らかの書類作成のためのアプリケーションの様なものを使用しているようである。

 ExcelとかWordみたいなものなのだろうか。

 ベヒス嬢は手馴れているのかあっという間に作業を終えた。

 常人なら目で追うことさえ困難じゃないかと思える速度で文字が入力されていく様は圧巻であった。

 一瞬、近未来的なものを再現できるほどに科学が発展しているのかと思ったが、そうではなかった。

 そうではなかったといっても、俺のテンションは別段低下することはない。

 科学ではなく魔法によるものであるが、近未来的なものを再現できるのは事実であったからである。

 何故わかったか。

 能力の恩恵もあるのだが、それがなくとも、腕輪から感じられる魔力でそれが魔法であったと理解できたのだ。

 理解したというより、感づいたといった方が適切かもしれない。

 詳しくはあまり見ていないので判らないが、どうも何らかの光属性の魔法を応用して出来たものみたいである。

 この腕輪って、魔法武器みたいなもんじゃないだろうか。

 見る限り、使用されている素材は特別せいのようだし。

 どう考えてもそこかしこで歩いている住民が見につけている装飾品のように自然から採取できるモノで作成されていない。

 俺のリミッターみたいなものかもしれない。

 俺のこれは魔法で作成している。

 つまり、一見変な形状の腕輪なのだが、実際は魔力のみで構成されている。

 この腕輪は一応、何らかの物質も含まれているようだが、4割程は魔力で構成されている。

 ただ、4割とはいっても相当な魔力で作成されている。

 これほどの錬度で作成するとなるとエース級数人は欲しい感じだな。

 間違っても平均的な魔力の持ち主や知識の持ち主では作成できない。

 俺の能力や神に貰った神器のおかげで物質干渉やら魔法に関しては使用できなくてもある程度理解できる。

「それほど珍しいですか? 確かに、民間には出回りにくいですけれど一度も見ない、なんてことはないと思いますけれど」

「ん? ああ、そうか」

 このまま辻褄が合いそうな言い訳となると記憶喪失とか軟禁されていたとか山にこもっていたとかそんなことしか思いつかない。

 記憶喪失以外体験したことがあるのが何気に問題である。

「――あー……っと、そうだ。ベヒス、目的地にはいつ頃着くんだ?」

「えっと、もう着きました」

 と、前を見てみると城かと疑いそうになる巨大な建造物があった。

 その建造物は四角とか長方形といった形状でのみ構成されており、相当カクカクしている。

 色はまっさらの画用紙のように白い。雨とかで汚れるものだと思うのだが、どうも結界が張られていて、それの機能の一部の恩恵で綺麗なのだろう。

 もしくは、つい最近塗装したところとか。

 まあ、空気中の埃が一定範囲以上入り込んでいない為、結界によるものだろう。

「でけえな……」

 その漏れた声に返答が返ってくるのが一人ではないという事のメリットだと俺は思う。

「ええ、ここは全国で3番目に大きい建造物なのです。ここでは主に新魔法開発や兵士の訓練場といった国に関わる探究できるものがまとめられたような場所です。関係者以外立ち入り禁止なのでここだけの話ですよ?」

 話した後で軍事機密であると教えないでいただきたい。

 余計なことに巻き込まれてしまったらどうしてくれる。

「と、言う事は俺はこの辺で待機か?」

「いえいえ、私は入れますからその友人であるナークも入れますよ」

 軍事機密の塊のような場所にそんな理由で入れる筈もないと思うのだが。

 まあ、あまり知らずに言っているのだろうから一応、無理だという考えで進めようか。

 期待のしすぎは精神の毒である。

「でも、その服装だと少し詰問されるかもしれませんね」

 ああ、袖と裾が半端な服だものな。

 俺なら詰問するでなく通報しているわ。それぐらいの服である。

 ああ、そう考えたらこの服完全にアウトだな。

 誰だよ、ギリギリ大丈夫って言ったの。

「んー、あの門番らしき兵士と同じような服装だと問題ないか?」

 ベヒス嬢は少し考えたそぶりをしてみせ、頷いた。

「んじゃーなんとかしてみますかな」

 とりあえず、あの軍服っぽいデザインに変更となると布が不足しそうであるので幾つか乱雑に取り出す。

形状実装(リード)

 俺がそう呟くと実はギリギリ大丈夫ではなかった服はギリギリ大丈夫でない軍服へと変化した。

「……袖と裾がまた短けぇ」

 袖と裾は絶賛反抗期なのだろうか。

 それとも成長期が来ていないだけだろうか。

 何にしても、これじゃあ変化させた意味がない。

 俺が袖と裾の端を掴んで引っ張ると丁度いい長さになったのでそれで誤魔化せたと言う事にして事実を抹消することにしようと実行してみた。

 だが、ベヒス嬢が驚いたようにこちらを見つめていた。

 あ、もしかして実はあの袖と裾の長さが俺の趣味とか勘違いして驚いているのか?

 それなら考えを改めて欲しい。

 ファッションと縁がなかった俺でも流石にあれはヤバイと気がつく。

「いつもそんな感じで錬金を?」

 錬金とはこの形状変化の事だろうか。

 いつもこうなのかと聞かれると断言しかねるのだが、この世界に来てからはそうなので頷いておく事にする。

 これが出来るようになって間もないからいつもって呼べるか不安なんだがなぁ。

 俺が風呂に滅多に入らなかったのは、これの応用で汚れを分解できるからである。

「……そうですか」

 ベヒスはまたまた驚いた様な素振りで歩を進めた。

 袖と裾が完璧であるので俺に出来ることはもう残されていない。

 門番に俺は停止させられると思ったが――というか、事実止められかけたのだが、どういう訳かベヒス嬢の知り合いと知れるとすぐに道を開けてくれた。

 ああ、まあ噂ほどではないが常人からすれば両方即死につながるので大差のない事実を巻き起こす人物に頼み毎をされたら断れるはずがないだろうな。

 門番の驚いた顔はそう見えただけで恐らく恐怖に慄いた顔であるのだろう。

 その後に俺をやたら見続けてきたのは、俺がベヒス嬢に絡まれた原因だからであろう。

 正直反省している。

 俺が彼らの立ち位置ならまず、弱そうな俺をフルボッコにしている。

 いや、流石にその場でフルボッコにしようとすればベヒス嬢に自身を文字通り昇華され期待へと変貌させられるかもしれないので裏でこっそりフルボッコしただろう。

 ううむ。

 ベヒス嬢と分かれたら背後に注意したほうがいいかもしれないなぁ。

今後、主人公をチート的にしていくか、今まで通りちょいと微妙にしていくか悩んでいます。

気が向いた方はご意見宜しくお願いします。

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